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従業員代表の選出に関する業務ver1

<こんにちは>


IPO支援・労使トラブル防止やハラスメント防止などのコンサルティング・就業規則や人事評価制度などの作成や改定・HRテクノロジー導入支援・各種セミナー講師などを行っている社会保険労務士法人シグナル代表の特定社会保険労務士有馬美帆(@sharoushisignal)です。


このnoteは、2024年1月にver2を公開しています。ぜひこちらをご覧ください。



労働基準法上で労使協定の締結の際に求められる、従業員(労働者)代表の選出に関する業務は、人事労務担当者にとって訪れる、ある意味で頭の痛い業務ではないでしょうか。
過半数労働組合(従業員の過半数が所属する労働組合)が存在する企業なら話は別ですが、労働組合の組織率自体が低いですので、ほとんどの企業は従業員にその代表を選出してもらう必要あります。
その場合に事業所が多い企業では事業所ごとに代表選出が必要となりますので、人事労務担当者の気苦労もそれだけ多くなることでしょう。


残念ながら、従業員代表の選出を適正に行っていない企業が散見されます。弊所が企業のDDに参加した際にも残念ながらその点を指摘事項に上げざるを得ない場合がありました。
担当者の方に、なぜそのような方法で実施されていたかヒアリングをすると、「このやり方でOKだと思っていました」と答える方が少なからずいらっしゃいます。
手間暇がかかる上に、ルールに関する誤解も多いなので、今まで様々な企業からご質問いただいた内容とともにnoteにてお伝えします。


<ポイントは3つ>

細かい内容をお伝えする前に、厚生労働省のこちらのパンフレットにもまとめられているポイントについてご説明します(厚労省はポイントを2つとしていますが、このnoteではわかりやすさのために3つに分けてあります)。

note.本文用 従業員代表選出1

1つ目のポイントは、労働基準法で定められている管理監督者は従業員代表になれないということです。


そもそも管理監督者は、この「管理監督者のポイント・要件表」記事でもお伝えしたとおり、経営者と一体的な立場にある方です。経営側にある方が従業員代表になることはできません。

2つ目のポイントは、どのような内容をその従業員代表と締結するのかを明らかにした上で選出することです。


3つ目のポイントは、民主的な手続きで選出をすることです。民主的な手続きとは、投票・挙手・話し合い・持ち回り決議等の、各従業員が自分の意思を自由にはっきり表明できて、決定にも参加できる方法を指します。

それでは今までにいただいたご質問とともにお伝えしていきます。


<よくある質問>

Q1「会社から従業員代表にふさわしそうな人に声をかけてもいいですか」

弊所からの簡単な回答
「そ、それはダメです!会社側が従業員代表選出に関わると、自主性が、民主的な手続にならなくなってしまいます!」


Q2「会社から従業員代表にふさわしそうな人に声をかけますが、その人でいいかどうか信任の是非を取って過半数以上がOKすれば大丈夫ですか」

弊所からの簡単な回答
「そ、それはダメです。そもそもの出発点が民主的ではありません」


Q3「立候補者を募ったのですが、会社として従業員代表になってほしくない人が立候補してしまいました。代わりに会社から従業員代表にふさわしそうな人に声をかけて、その人を対立候補として立候補してもらってもいいですか」

弊所からの簡単な回答
「そ、それはダメです。会社から従業員代表にふさわしそうな人に声をかける行為自体が民主的ではありません」


Q4「立候補者が揃ったので、投票をお願いしているのですが、投票数が少なく新たに締結する書面の期日までに間に合いそうにありません。現段階で投票してくれている人の過半数以上が信任していれば大丈夫ですか」

弊所からの簡単な回答
「次の表のとおり、それぞれの事業所の全従業員の過半数以上の信任が必要です。全従業員数が100人であれば、51人以上の信任が必要です。「過半数以上」とは全従業員数の過半数以上であって投票者数の過半数以上ではないことにご注意ください」

note.トップ用 従業員代表選出2


Q5「以前、従業員代表を選出したときに明示していた締結書面以外の書面を締結する必要が出てきました。現在の従業員代表と締結をしてもいいでしょうか」

弊所からの簡単な回答
「そ、それはダメです。その新たな書面を締結する従業員代表を選出してもらうか、新たな書面を含めた全部の書面についての従業員代表を選出し直してもらってください」


<まとめ>

従業員代表者の選出は法律の定めによるものですから、正しく選出されるのが当然です。ですが、そのような形式論だけにとどまらない意義が従業員代表者の選出にはあります。


企業は「働き方改革」への対応だけでなく、ウィズコロナの社会、アフターコロナの社会へも対応しなければならなくなりました。「働き方改革」への対応だけならば、法律の定めに従っていれば済む面があります。

しかし、コロナ禍への対応は既存の法律をどのように当てはめたら良いのか悩むことも多かったり(休業手当の問題がそうでした)、そもそも従うべき法律がなかったりと、まさに暗中模索の連続です。

このような時代を乗り切るために必要な労務管理には、従業員の信頼と納得を得るという視点が欠かせません。

先ほど、「働き方改革」ならば法律に従えば良いと書きましたが、実際には同一労働同一賃金への対応などは、法律やガイドラインだけを見てもなかなか答えの出ない難問がたくさんあります。コロナ禍にしても同一労働同一賃金にしても、正解がそう簡単に見つからないからこそ、企業と従業員が「うちの会社はこの方針で行くんだ」という一致点を「とりあえずの正解」として進むしかない面があります。

たとえ、「とりあえず」であっても、企業と従業員が信頼と納得で一致できる範囲ならば、その内容が違法や不当とされることはないはずです。


正しく選出された従業員代表という存在は、「VUCA」(あらゆる状況が不透明で予測もつかない世界)の時代を企業が乗り切るための大事なツールという認識を、ぜひお持ちいただきたいと思います。



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