管理監督者note

管理監督者のポイント・要件表 ver1

こんにちは。社会保険労務士法人シグナル 代表 有馬美帆です。



※このnoteは、2023年7月13日にver2の公開をしています。ぜひ新バージョンもご覧ください。




最近は、人事労務周りの話題や論点について、分かりやすく「図」や「表」で表現するのが楽しくなってきました。


社労士・弁護士の先生方で、図表付きの分かりやすい解説を売りにしている方はまだいらっしゃらないでしょうから、yentaに続いて自分をアピールするための未開拓のフィールドを見つけたのではないか?!と思って、興奮する日々を過ごしていますw

今後は、図表付き解説で本格的に活動したいので、「特定社会保険労務士」と「HRテクノロジーコンサルタント」に続く肩書として、「人事労務図表クリエイター」とか「HR図表クリエイター」、「HRビジュアルクリエイター」などと名乗りたいなって思っていますが、皆さんどう思われますか。

もし、読者の中にコピーライターさんがいたら、かっこいい肩書を考案して欲しいです!!!

そして、いつか、この領域で本を出版したいなと野望を抱いています!(声に出して言うと叶うらしいので、言っておきますw)


それでは、今回のテーマですが、「働き方改革」の関係で最近ご相談も多い上に、その中身を誤解されている方が非常に多くいらっしゃる、「管理監督者」(労働基準法第41条第2号に定める「監督若しくは管理の地位にある者」)について、自作の表とともにわかりやすく解説していきたいと思います。
次の表をご覧ください。


まずは、Aの部分です。

「管理監督者=役職者全員」という間違った認識をする人も稀にいますが、管理監督者は管理職の中でもごく限られた存在です。

HRに携わっている人ならばご存知でしょうが、管理監督者であるか否かをめぐって争われた代表的な裁判例が大手ハンバーガーチェーン事件です。

事件の概要としては、大手ハンバーガーチェーン店で管理監督者の扱いを受けていた店長が、自分は割増賃金の適用除外となる管理監督者には該当しないとして、過去2年分の割増賃金の支払いを求めたものでした。

2008(平成20)年に東京地裁が、この店長を「管理監督者に該当しない」という判決を下し、大きな話題となった事件です。

店長といえば各店舗のトップですから、管理監督者として扱って問題なさそうな気もしますが、なぜこの店長は大企業を相手に裁判を起こす気になったのでしょうか。


その動機となるのがBの部分です。

このBの部分は、分かりやすく表になったものが検索しても出てこなかったので、史上初公開かもしれません。

表にある通り、管理監督者には、時間外・休日労働の割増賃金支給が労働基準法第41条で適用除外されています。

そのため、どんなに働いても、時間外・休日労働の割増賃金は支給する必要性がありません。


「おおおおお、それなら管理監督者にはタイムカード打刻してもらわなくてもいいな」と思ったあなた!
じゃあ、管理監督者が健康を害するほど長時間労働をしてもいいというお考えですか?!「深夜労働もガンガンやらせよう」ともお考えですか?!


管理監督者であっても、深夜労働の割増賃金は支給しないといけません。


そして、2019年4月で労働安全衛生法が改正され、管理監督者であっても会社は労働時間の把握義務が課され労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)、健康管理をしなくてはいけないことになりました。


そりゃそうですよね、管理監督者は長時間働いても健康について気にしなくて良いなんて考え方は、人間を壊れないロボットとみなしているようなものです。管理監督者であれ、人間ですから長時間働けば健康を害します。

健康管理のためには、労働時間を把握することがステップ0ですので、管理監督者であってもタイムカードには打刻してもらわないといけません。

健康管理と労働時間の関係についてはこのnoteに書いたので、まだ読んでいない方は大至急読みましょう。厚労省も公開していない生々しい表を載せています。
【働き方改革】産業医・産業保健機能の強化とは?


「え、じゃあどんな人が管理監督者にできるわけ?」と思った方、いい視点ですねー。

それがCの部分です。

Cの部分の3つの要件を全て満たすことが必要です。いいですか、「全て満たす」ことが必要です。


管理監督者について、行政解釈では「部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とされていますが、裁判例ではCの部分の3つの要件を考慮に入れた裁判がなされています。

3つの要件それぞれをくわしく見てみましょう。
1.の労務管理上の使用者との一体性というのは、経営上の重要事項に関する権限や、部下の人事権(採用や配置転換の権限)を有していることです。

2.の労働時間管理の対象外というのは、管理監督者自身が出退勤時刻に関して広い裁量権を持って仕事を進められるということです。

3.の地位にふさわしい待遇というのは、たとえば、時間外賃労働賃金に相当する管理職手当が支給されているかなどの点から判断されるということです。

管理監督者で、1.と2.の要件を満たしているが、給与20万円と設定するのは管理監督者の要件を満たしたとはいえません。


前述の大手ハンバーガーチェーン事件の場合、1については権限が店舗内(アルバイトの人事管理程度)に限られていること、2については月100時間超の残業や63日連続出勤など、出退勤に裁量があるとは全然いえない状態にあったこと、3については年収が店長になる前より下がっていたことなどから、管理監督者性が否定されています(その後、控訴審で店長に1000万円以上の金額が支払われることを条件に和解が成立しました)。

この事件をきっかけに、「名ばかり管理職」という言葉が広く普及しましたが、10年以上経っても、管理監督者に関する理解度はまだまだ低いと言わざるを得ないのが残念です。


管理監督者が注目される理由は、「残業代(時間外労働の割増賃金)を支払わなくても良い存在」だからというのが正直なところでしょう。 ですが、管理監督者という地位は残業代削減のための「魔法の杖」ではありません。

「割増賃金に相当する」部分を含む地位にふさわしい報酬を支払っていることが大前提となります。残業代削減のために管理監督者にするという考え方は成り立たないのです。

ぜひ、時間外労働の割増賃金の適用除外となる管理監督者を置く企業はCの部分の3要件に関する事実の再確認を、これから設けようとしている企業はこのnoteを参考に要件を満たす人を管理監督者としてください。



今回の表で、管理監督者をテーマにしたきっかけは、顧問先から鋭いご質問を頂戴したことでした。

弊所の顧問先からは、いつも多彩な角度のご質問をいただくので、弊所の方がハッとさせられることも多く、社労士としてもHRコンサルタントとしてもやりがいを感じられて本当に幸せです。


それでは、今後もHRビジュアルクリエイター(仮)として、読者の皆さんに貢献できる 人事労務表を作成していきます!

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