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加入する年金によりiDeCo(イデコ)の掛金上限が違う理由:イデコは複雑な年金制度の公平性を取る調整弁

こんちは!副業社労士まさゆきです。
前回新NISAを書いたところ、イデコについて質問がありました。「イデコの掛金、私はいくら利用できますか?」前回「掛金上限が『14.4~81.6万円/年』(人によって違います)」と書きました。加入している年金の種類(国民年金の第1号被保険者か、2号か3号か、過去共済年金だったか、企業年金の有無)によって掛金上限が変わる仕組みになっています。

新NISAを始めようと説明を聞きに行きました|副業社労士まさゆき (note.com)

何故このような仕組みにしているのか?子細に見ていくと、国がイデコを「複雑な年金制度の公平性を取る調整弁」として使っている事が判ります。

《イデコの掛金上限の違い》
掛金上限は具体的にどう違うのか?2024年12月以降、企業型年金に加入している会社員の区分が統一されるので、12月以降の制度で一覧表にしました。

企業年金加入会社員の掛金上限は、企業年金が判らないと計算できません。企業年金取扱い金融機関に連絡するか、会社の総務等人事窓口に聞き確認しましょう。

《掛金上限に差を付ける意味を検証》

1)「企業年金加入会社員:上限2万円」と「企業年金未加入会社員・専業主婦(夫):上限2.3万円」の差は何故?
  企業年金加入会社員の掛金上限を3,000円少なくしているのは、「企業年金分有利だから差を調整しないと公平性を欠く」ためです。

2)「自営業者:上限6.8万円」と「企業年金未加入会社員:上限2.3万円」の差は何故?
  自営業者と会社員の違いは「厚生年金の有無」です。厚生年金が無い自営業者に配慮し、上限6.8万円分掛金を認めているのでしょう。では、両者の差4.5万円は適正なのか?会社員が払う厚生年金保険料額を見てみます。

R2年の会社員平均年収は433万円です。厚生年金保険料率が18.3%なので、月6.6万円となります。結果、掛金上限を比較すると会社員が1.1万円多くなります。自営業者には定年がない点を考慮した様です。

3)「公務員:上限1.2万円」と「企業年金加入会社員:上限2万円」の差は何故?
  公務員の掛金上限が8,000円少なく設定されているのは、公務員に3階立て部分があるからです。公務員は国民年金と厚生年金の受給に加え「年金払い退職給付」があります。イデコとほぼ同じ制度です。

  令和2年の公務員給料は、人事院調査で約40万円/月、令和5年の夏のボーナスは公務員平均63万円、併せて公務員年収は約600万円です。「年金払い退職金」の掛金は給与の3%、月換算すると約8,000円になり差は無くなります。

ただ、下記の要素を考慮する必要があります
①    公務員は平均年収が高い分厚生年金保険料額を多く払える
公務員平均年収600万円×厚生年金保険料率18.3%(使用者負担分込)=厚生年金保険料額9.2万円/月で、会社員6.6万円/月より2.6万円多い
②    企業年金の掛金上限が月2.75万円(企業年金上限は過去の2.75万円/月のままの企業が多いようなので、本稿では2.75万円を採用しています)

①②に差はなく、公務員と企業年金加入会社員の差はありません。

この結果をまとめると下記となります(厚生年金、年金払い退職金は使用者負担分込みです)。

日本の年金制度は複雑です。国民年金・厚生年金・企業年金・公務員の共済年金や年金払い退職金、バラバラだった制度を統合しましたが、今でも加入する年金により受給額はバラバラです。
「自営業者の年金は少なすぎる」「公務員の年金は多くて有利」“格差”が話題になります。老後の備えに充分な年金額なら不満は少ないですが、年金だけでは老後資金が不足する状況で不公平を欠けば社会不安に繋がります。

国は、イデコを年金制度のバランスを取る調整弁と考え、複雑な年金制度の公平性を保とうとしています。表の比較を見ると、調整弁として機能している様です。自営業者の掛金上限が少ない様見えますが、自営業者には別に「付加年金」という年金があります。付加年金は厚生年金・企業年金・イデコと性質が異なり比較が困難なため、別の稿で触れたいと思います。

ではまた次回


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