胞状奇胎

胞状奇胎というお言葉はあまり聞かれないと思います。計画的な治療・フォローが必要な疾患です。

*このnoteは医師として勤務する中で様々な書籍、情報を元にまとめたものです。情報が溢れている中、医療をより良くしたいという思いがあり公開してます。

*病院や医師によって考え方は異なりますので、あくまで参考程度と考えていただけると幸いです。また、患者様、医療従事者の方々にも読んでいただくこともあると思いますが、確実性、完全性、エビデンスを保証するものではありません。治療内容に関しましては、主治医、かかりつけ医とご相談の上、治療を受けてください。利用者がnoteの情報に従い行った医療行為の結果については、一切責任を負いかねます。 予めご承諾いただいてから、noteをご活用いただけると幸いです。

まとめ
・胎盤の組織になる絨毛の異常であり、異常妊娠の一つ。
・胞状奇胎の発見が遅れてしまったり症状が進んでしまうと侵入奇胎、絨毛癌になる。
・30-40歳代に好発。
・500人に1人程度の確率で発症。
・筋層浸潤はない。

概要
・定義:絨毛における栄養膜細胞の異常増殖と間質の浮腫を特徴とする病変と定義され、確定診断は病理組織学的所見で行う。
・細胞遺伝学的に雄核発生(父方の遺伝子のみを有する)である全奇胎と2精子受精による3倍体(父方、母方両者の遺伝子を有する)である部分奇胎に分類される。
・全奇胎の10~20%、部分奇胎の0.5~4%に侵入奇胎の続発が認められ、全奇胎の1~2%に絨毛癌の続発が認められるので、胞状奇胎後の管理は重要。

原因
・受精時にたまたまトラブルが起こり異常になってしまった状態。

症状
・無月経、つわりの症状が強い、不正性器出血、腹痛
・子宮過大、妊娠高血圧症様症状

診断
・hCG値とエコー
・エコー:子宮内にモコモコと増えた胎盤組織が見える
 経腟エコーで子宮内に嚢胞化絨毛を示すvesicular patternを認める
 高輝度の絨毛組織の内部に多数の嚢胞像が描出される
 全奇胎では胎嚢(GS)や胎児像を認めない。
 部分奇胎では胎児像を伴うこともある。

・hCG値は通常の妊娠に比較して高値になることが多く、異常高値(10万〜100万)を示すことが多い

鑑別
・胞状奇胎の組織像は、絨毛間質の浮腫性変化とトロホブラストの異常増殖である。
・全奇胎と水腫様流産との鑑別は、細胞性栄養膜細胞のp57kip2免疫組織染色により可能。

・全胞状奇胎:p57 kip2は陰性。絨毛がびまん性にブドウの房状の浮腫性変化、通常胎児成分や胎嚢は認められない。
・部分胞状奇胎:p57 kip2が陽性。胎児と共存する。
・水腫様流産:p57 kip2が陽性。

治療
・できるだけ早く治療を行うことが重要。
=可及的速やかに子宮内の妊娠組織を排出しないといけない
・原則入院し、子宮内容除去術を速やかに行う
 →病理組織学的検査で診断を確定する

・1週間後に再掻爬を行うことがある

外来管理
・hCG測定(1-2週間ごと)、基礎体温の記載、避妊指導(約6ヶ月程度、またはhCGが測定感度以下になったあと月経周期を3回確認したあと)を行う
・奇胎除去後、約6ヶ月で妊娠の許可が可能

・胞状奇胎娩出後、hCG値が正常値になるまでの一次管理と二次管理に分けて考える。

・一次管理
 最初の3ヶ月→1-2週間ごとに血中hCGを測定

・一次管理に関して
 胞状奇胎娩出後のhCG値が5週で1,000、8週で100mIU、24週でカットオフ値の3点を結ぶ判別線を用いて、いずれかのポイントでこれを上回る場合は経過非順調型と判断する。
 →経過非順調型の場合は侵入奇胎や絨毛癌を疑い、絨毛癌診断スコアを用いて、合計4点以下であれば臨床的侵入奇胎、5点以上であれば臨床的絨毛癌と診断する。経腟エコー、MRI、胸部レントゲン、胸部CTなどの画像検査を行い病巣を検索する。→胞状奇胎後血中hCG値がカットオフ値以下に下降した後も、1カ月に1回程度血中hCG値のフォローアップを行い、6カ月を超えて正常値が持続していれば、次回妊娠を許可できる。
・基準値を超える場合は、エコー、MRI、CTなどの画像診断で病変の有無の検査を行う。

・二次管理に関して
 24週間の奇胎除去後の一次管理を終了した後、3-5年間にわたり、血中hCGとエコーでフォローを行う。
 hCGカットオフ値以下→1ヶ月に1回の血中hCG測定。6ヶ月間カットオフ値以下が続けば、次回妊娠が許可される
 2-4年目:3-4ヶ月ごとに血中hCGを測定。

侵入奇胎
・絨毛癌診断スコアで4点以下であれば、侵入奇胎と臨床的に診断する。
・侵入奇胎の病巣は、多くは子宮と肺。

・検査:画像検索(子宮、肺)→骨盤MRI、胸部レントゲン、胸部単純CT
・治療:基本は化学療法
 メトトレキセート: 2週間ごと
 or アクチノマイシンD:2週間ごと
 →治療効果が不良:エトポシド単剤、EA療法など
 hCGがカットオフ値以下に下降した後、1-3サイクル程度の化学療法を行うことが一般的
・外来フォロー:化学療法後6ヶ月は、4週間に1回のhCG測定。
・治療終了後1年間は避妊する。

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