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アドバイザーから見る、 長期的にコミュニティ運営を上手にこなしていく方法

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コミュニティ × フリーランスの生き方を実践されている、長田涼さん。
前回からの続きでは、フリーランスのお仕事から経た、具体的なコミュニティ運営ノウハウについて伺います。

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長田涼さん
Slow Innovationコミュニティマネージャー&コミュニティや関係性の価値を提案・提供する“コミュニティフリーランス”/Wasei Salonコミュニティマネージャー/コミュニティの教室コーディネーター/ZENKIGENコミュニティアドバイザー/小杉湯となり会員/銭湯とビールと写真と高円寺が好き。新米パパ。

■コミュニティそのものにKPIを紐付けるのはNG

仕事の成果 & 報酬額は、どんな基準で決めていますか?

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ずばり、測るのが難しいですね。コミュニティの結果を生むためには、何年間ものスパンで考えないといけませんから。事例が少ないと、なおさら悩まれるポイントだと思います。私も最初の頃は、「いくらほしいか」と聞かれても答えられませんでした。ひとまず、コミットした分に与えようという形で、時給換算になりました。手順としては、時給額を決める▶︎一ヶ月あたりどれくらいコミットできるかを確定▶︎報酬額の決定、という流れが大まかにあります。

また、最低限気をつけていることとして…コミュニティそのものにKPIを紐づけるのはNG!だと考えています。コミュニティの人数はこれくらい行きましょう、売り上げ目指しましょう、となるとコミュニティの本質を見失います。経験的に、ほぼ100%失いますね。今月までに100人いきましょうとか、やりがちなのですが。

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コミュニティはある意味土壌みたいなもの。土壌から何が生まれたかを見るのが大事です。コミュニティを生み出したからこそ、芽生えた価値は絶対あると思っていて。

それまで出会わなかった人が出会って、コラボイベントが生まれたり。ただのマーケティングだけだと実現できなかったようなこと。その人にとってはすごい価値が生まれた、ということがいろいろあると思います。「言葉が変わる瞬間」ですね。この人変わったな、と。ある言葉の裏にはこういう気持ちがあって、心的変化や成長が起きたなと。それを上司に見せやすい。企業に与えるバリューとして大きな価値がありませんか、と提案できます。

コミュニティのメンバーで生まれたものに、どんなものがあるか。そこを追っていき、見逃さないことが何より「成果」の面では重要となってきます。

■コミュニティは長期的なスパンで。

コミュニティを成果として達成するために、どのくらいの期間が必要でしょうか?

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短くても半年ですね。だいたいは、一年か二年を見込んでいます。よく「三ヶ月やって効果が出ないから辞めよう」と短期的に判断しがちです。でも、一年や二年をかけてできる景色はあると信じていて、それくらいの覚悟を持ってやりましょうと思っています。案件ですり合わせもありますが、無理なことは無理とはっきり言います。相手の求めている像がズレていたり、そもそもそれはコミュニティと言えるのかなど、期待値とのギャップを調整していくのも僕らの役割です。

どこまで一緒にやるか、丁寧に見定めていくこと。そうでないとお互い不幸になり得るため、仕事している上で気をつけているポイントとなっています。

■なるべくボールは持たない - 5分以内に返信できれば返す

フリーランスとして、コミュニティのお仕事を複数こなす中。キャパシティを増やすためにどんな工夫をされていますか。

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なるべくボールを持たないことが大事ですね。基本、人との連絡で返せる内容はすぐに返す。どうしても数時間はコミットしないと返せないボリュームに関しては抱えますが、5分とか10分以内に返せるものは、すぐに終わらせています。コミュニティを仕事にする上では、そこが大事です。圧倒的なのは作業量というよりも、細かいコミュニケーションの数です。そのあたりを適宜に対処する習慣が身に付くと、自然とキャパシティがあがるな、と。意外と余裕があることに気がつきます。

■コミュニティの時間軸に合わせた、ツール選び

仕事や時間の話に触れまして。コミュニティ運営の上、どんなコミュニケーションの手段を選定していますか。

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一言で言うと、コミュニティごとの目的に依ります。コミュニティの数や種類に応じて、それぞれ異なる時間軸みたいなものが存在していて。ゆったりがいいのか、早いのがいいのか。例えばFacebookのグループが前者で、slackが後者ですね。企業ごとによってもプラットフォームへのリテラシーに度合いがあって、例えばslackだと大企業でまだ使ったことがなかったり。であれば日頃から使われているFacebookにしようか、と柔軟に対応しています。ともあれ、どういうコミュニケーションを満たしたいのか、か前提となりますね。

また、情報を見逃す方への対策として。毎週、振り返りの記事を書いています。自分たちのサロンでこんなことがありました、と。追いつけていない人は、そのまとまった情報を見れば先週の流れを追える形となります。フローをストックにしていく感じです。

■ひとりでは絶対にやらない

お仕事をこなす中で、今までに失敗したことはありますか。

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すべて僕に投げられて、全然うまく行かなかったケースがとある企業でありました。まず、ひとりで運営するのは厳しいと言えます。そもそも活性化しておらず、前提の条件が分からなさすぎた上で、情報も十分に共有されませんでした。その企業の方とコミュニケーションを取ろうとしつつも、忙しすぎて返信もなかったりとか。

それ以降、自分ひとりでは絶対に受け持たないようにしよう、と思いました。最低限、他に一人は併走してくれる方がいることが条件ですね。二人で併走することが多く、コミュニティに力を入れて投資する企業では三人という場合も (とても稀でですが...)。そんな企業とは、丁寧に仕事をします。

■入口設計とコミュニティ運営は比例する。

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そんな失敗例と関連して。そもそもコミュニティが成り立っていないような状態での、テコ入れ案件は非常に難易度が高いですね。骨を埋めるくらいのコミットをしないと、難しいだろうと。マイナスをプラスに持っていくのは、いまだ乗り越えられていない壁のひとつです。

一度全体を解体したい、とすら思い...笑 そこで感じたのは、入口設計を怠れば、コミュニティ活性化の難易度が高まるということです。どう入口にして、どんな行動を奨励していくかという、フローを設計する必要がありますね。メンバーの紹介性で入ってもらうこともありますが、何よりもそのコミュニティに共感した人にメンバーになってもらうことが一番の前提となります。全然共感もしていない人がきて、すぐにやめていく行為はお互いにもったいなく。コミュニティとしてプラスになりませんね。

コミュニティ内のイベントに参加するって、けっこうめんどうくさくて...笑 だからこそ、温度感の高い人はちゃんと来てくれたり。そこから初めて、規模の拡大をしていったり、スピード感を上げていくことへとつながってきます。共感能力から安心感が芽生え、一緒にいられる空間。それが最初の段階で、スピードは二の次ですね。

それも関連して、自分の携わるコミュニティでは、あえて情報量を多くしています。ある種の意思表明であり、入口設計ですね。コミュニティとして大事にしている価値観を改めて打ち出し、期待感の不一致が生じないための施策です。入会審査も置いていますが、こうした設計上、基本的に申し込まれる方は落ちないですね。あくまで、「この人は絶対うちではない!」という人を判断するための基準です。

■「ファンをつくろう」は違和感

それでは、うまくいくコミュニティに共通するものは何でしょうか。

コミュニティを運営される方の、ピュアな思いがあることですね。ブランドとかマーケティングでこうやるとうまくいくだろう、という話ではなくて。純粋に「何をしたいのか」「どんな価値観を大事にしていきたいか」という思いを織り交ぜた上でコミュニティを設計しないと、どこかでたぶん挫けるでしょう。

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打算的に必要というよりも、一人間のあなたとしてどう思いますか、を大切にすることをマストとしています。その上で、共感したファンとコミュニケーションを交わし、ブラッシュアップしていく。初めのファンをどう生み出すか、という点でも「ファンを作ろう」という表現には違和感がありますね。作るものではないことにファンの本質がある。自然と生み出たファンと交流するのが大事で、それをやらずにファンマーケティングっぽいことをやろうとなっても、違うんじゃないかなと思います。

組織・グループのあり方そのものに共鳴するファンもいて。そういう人らとの関係性を築いていくことが、うまくいくコミュニティには何よりも大事です。

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【コミュニティラボとは】

リアルとオンラインの仮想のまち「シェア街」における、コミュニティ研究の会。
Zoom上で毎週月曜日の21時-22時に開催中。コミュニティの主催者・マネージャーを招いて、実践で得たノウハウを学んでいます。参加者はQ&Aで自由に質問したり、自身の抱えるコミュニティづくりの悩みをぶつけてみることも。

シェア街の住民さんは現在募集中です。ご興味のある方はお待ちしています!
(そもそもシェア街とは何か?は以下のリンクからどうぞ!)



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