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Dr.本田徹のひとりごと(48)2013.10.16

手をきれいにして病気を予防しよう - 東ティモールの手洗いキャンペーン

その昔、私が小学生のころ、爪や手がきれいか、ハンカチを持ってきているかなど、「衛生検査」を担任の先生からされることが、ときどきありました。回虫を養っていたこともある、「途上国ニッポン」時代の子どもとしては、甘んじて受け入れるしかない、「処遇」でした。そのことを鮮やかに思い出させ、シャイな気持ちにもさせてくれる見聞を、一昨日東ティモールでいたしました。

日本ではほとんど知られていませんが、途上国を中心に世界中で、「手洗いキャンペーン」というのが、10月15日に行われているそうです。正確には、’Hand washing with soap campaign’(石鹸を使って手を洗うキャンペーン)というのだそうですが、衛生的な水の確保がむずかしい東ティモールのような国や地域だからこそ、子どものときから、そうしたことの意識づけや習慣化の大切さを、ナショナル・キャンペーンを通して少しでも図っていきたいという、教育現場の先生たち、保健省・教育省関係の政策担当者、UNICEFなど国連機関の関係者の思いもよくわかります。当たり前のことですが、このキャンペーンがほんとうに実を結ぶためには、スラム化したり、僻遠であったりする地域を含めての、衛生的な水の供給といったインフラの整備が急がれるわけです。

シェアが、この国の首都ディリで、昨年から始めた小中学校での保健教育活動の一環として、取り組まれている手洗いキャンペーンは、今年は15日が祝日に当たったため、1日前倒しして、10月14日に行事が全国的に催されました。シェアが保健教育のパイロット校として協力している、ディリ市内のはずれManleuanaにある、Ensino Basico Centralという名の小中一貫校に、この行事の参観に行ってきました。

保健省やディリ市保健局、日本大使館の方も見えて、すこし格式ばった感じにはなりましたが、とても和やかでよい集いでした。ここは、日本的に言うと、小学1年生から中学2年生(8年生)まで、計1500余名の生徒たちが在籍する、大きな学校です。来年には中学3年生(9年生)まで受け入れることもあり、生徒数は2000名にまで膨らむといいます。

写真にもありますように、プラスチックの大きな蓋つき容器に蛇口が取り付けてあって、石鹸で両手をよく洗った後、水で汚れを流し、タオルで拭うという一連の動作を、みなが、行列でしていくのです。写真で赤い帽子をかぶり、容器の前で生徒たちを監督しているのが、GSE(学校保健グループ)という、中学生のリーダー格の女子生徒で、いかにも小学生の弟、妹の面倒をよく見る、こわもてのお姉さんという感じでした。上手に手洗いをすると、石鹸を1個ずつもらって家に帰るのです。

来週からは、先生たちのポルトガル語研修のため、学校は3カ月とかいう長い休みに入ります。その間、子どもたちは家で学校の再開を待つことになります。ポルトガル語の国語化という国の方針に沿うことではあると言え、そんなにも長い間、休みになることが、学業のみならず、まだまだ学童の栄養失調症も多いとと言われるこの国での、昼の学校給食の重要さを考えると、心配もないではありません。

とは言え、みなが一所懸命という感じがひしひしとするこの国で、子どもたちのことがないがしろにされることはないと信じます。私たちも微力ながら、お手伝いの輪に、長く加わっていきたいという気持ちを新たにしました。

2013年10月16日

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