マハーバーラタ/6-19.バガヴァッドギーター⑰~三つの信頼~

6-19.バガヴァッドギーター⑰~三つの信頼~

アルジュナは言った。
「クリシュナよ、シャーストラで教えられていることを手放して儀式を行う人が、シュラッダー(信頼)の資質を持っているというのは、どの資質に根付いているということなのですか? サットヴァ、それともラジャス、タマスですか?」

シュリーバガヴァーン(クリシュナ)は言った。
「肉体を持つ者のシュラッダーはスヴァバーヴァ(その人の性質)から生まれる。サーットヴィキー(サットヴァ優勢)、ラージャシー(ラジャス優勢)、ターマシー(タマス優勢)の3つの側面である。それについて聞きなさい。

バーラタ(アルジュナ)よ、全ての人のシュラッダーはそれぞれの人の心と一致している。その人にはシュラッダーが浸透している。その人は自分のシュラッダーに従って生きている。

サーットヴィカ(サットヴァ優勢な人)はデーヴァ達を崇拝し、ラージャサ(ラジャス優勢な人)はヤクシャ(富を守る者)とラクシャサ(富を奪う者)を崇拝し、ターマサ(タマス優勢な人)はブータガナ(幽霊;有害な魂)を崇拝する。

ダムバ(偽善)とアハンカーラ(エゴイズム)にまみれ、力強いカーマ(欲望)とラーガ(憧れ)に満たされ、識別を持たず、シャーストラで禁じられてはいない恐ろしいタパス(鍛錬)を行い、肉体の中にある感覚器官を衰えさせ、『私』さえも衰えさせる人達、そのような人はアースラを信念としているのだと知りなさい。

そして、全ての人にとって好まれるアーハーラ(食べ物)にもまた、ヤジニャ(儀式)、タパス(鍛錬)、ダーナ(与えること)という3つの側面がある。これらの違いを聞きなさい。

ラッスヤ(瑞々しい)、スニッグダ(クリーミー)、スティラ(長持ち)、フルッデャ(心を喜ばせる)のアーハーラ(食べ物)は、アーユ(長寿)、サットヴァ(頭脳明晰)、バラ(強さ)、アーローギャ(健康)、スカ(美味)、プリーティ(美的満足)を高めるもので、サーットヴィカ(サットヴァ優勢)の人に好まれる。

カトゥ(苦い)、アムラ(酸っぱい)、ラヴァナ(塩辛い)、アットゥシュナ(辛すぎ)、ティークシュナ(刺激が強い)、ルークシャ(渋い)、ヴィダーヒナ(炎症を引き起こす)のアーハーラ(食べ物)は、ドゥッカ(痛み)、ショーカ(悲しみ)、アーマヤ(病気)を与えるもので、ラージャサ(ラジャス優勢)の人の好物である。

ヤターヤーマ(古い)、ガタラサ(味がない)、プーティ(臭い)、パルユシタ(腐敗)、ウッチシュタ(残り物)、アメーデャ(お供えに適さない)のボージャナ(食べ物)はターマサ(タマス優勢)の人に好まれる。

結果を期待しない人は、聖典に従った儀式を『この儀式は行われるべきなので、そうするだけだ』と心に決めて行う。その人がサートヴィカ(サットヴァ優勢)である。

バラタシュレーシュタ(”バラタ一族の最高の人”アルジュナ)よ、一方で、結果の為に行われる儀式やダムバ(偽善)だけを目的として行われるヤジニャ(儀式)はラージャサ(ラジャス優勢)であると知りなさい。

聖典の指示に反し、アンナ(食べ物)の分配もなく、マントラを適切に唱えず、富の分配もなく、シュラッダーもないヤジニャはターマサ(タマス優勢)と呼ばれる。

デーヴァ(神々)、ドヴィジャ(聖典を学ぶブラーフマナ)、グル(先生)、プラージニャ(賢者)を崇拝すること、シャウチャ(清潔さ)、アールジャヴァ(真っすぐであること)、ブラフマチャルヤ(自らを律すること)、アヒムサー(傷つけないこと)、これらをシャリーラタパス(体の鍛錬)と呼ぶ。

アヌドヴェーガカラ(動揺を起こさない)、サッテャ(真実)、プリヤ(喜ばしい)、ヒタ(有益)な言葉を話し、スヴァーデャーヤアッビャーサ(聖典の言葉を繰り返す)をすること、これらをヴァーマヤタパス(言葉の鍛錬)と呼ぶ。

マナスプラサーダ(考えの朗らかさ)、サウミャットヴァ(表情の朗らかさ)、マウナ(話すプレッシャーがないこと)、アートマヴィニッグラハ(考えの統括)、バーヴァサムシュッディ(清らかな意志)、これらをマーナサタパス(考えの鍛錬)と呼ぶ。

アパラーカーンクシン(結果を期待しない人)であり、ユクタ(落ち着いた人)である人々が、完全なシュラッダーをもってこれら3つのタパスを行っているのが見られ、それをサーットヴィカ(サットヴァ優勢)と呼ぶ。

サットカーラ(言葉での崇拝)、マーナ(考えでの崇拝)、プージャー(儀式での崇拝)を目的としたタパスはダムバ(偽善)のみによって行われ、チャラ(不安定)でアドゥルヴァ(長続きしない)ものであり、ラージャサ(ラジャス優勢)と呼ばれる。

ムーダクラーハ(妄想)によって、自らに痛みを与えたり、他の人を滅ぼしたりするために行われるタパスはターマサ(タマス優勢)と呼ばれる。

アヌパカーリン(見返りを期待しない)で、適切な場所で、適切な時に、ふさわしい相手に対して、『これが与えられるべきだ』と考えて行われるダーナ(与えること、チャリティー)は、サーットヴィカ(サットヴァ優勢)とみなされる。

一方で、プラテュパカーラ(見返り)の為に、あるいは後で得られる結果を視野に入れて行われるもの、そしてパリックリシュタ(与える時に発生する損失による痛み)を伴うダーナはラージャサ(ラジャス優勢)とみなされる。

アヴァジニャータ(軽蔑)を持ち、不適切な場所で、不適切な時に、ふさわしくない相手に対して行われるダーナはターマサ(タマス優勢)と呼ばれる。

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