マハーバーラタ/6-1.クルクシェートラ平原にて

6.ビーシュマの章

6-1.クルクシェートラ平原にて

第一章(始まりの章)あらすじはこちら
第二章(サバーの章)あらすじはこちら
第三章(森の章)あらすじはこちら
第四章(ヴィラータの章)あらすじはこちら
第五章(準備の章)あらすじはこちら

開戦前日の夜、ヴャーサがドゥリタラーシュトラを訪問した。
「息子よ。これから恐ろしい日々が始まる。
あなたの息子や、彼に味方する王達が死んでいくことになる。
残念ながらこれは運命の法則通りだ。
もしこの戦争をその目で見たいと願うなら、目を与えよう」

ドゥリタラーシュトラは言った。
「父よ。私は生まれてからずっと盲目でした。何を見てよいか分かりません。息子達の死を見たくはありません。目は要りません。
誰かから聞くことができればそれで満足です」

ヴャーサは答えた。
「分かった。ならばここにいるサンジャヤが報告する。
彼に内なる目を与えよう。全てのことが見えるリシのようになるのだ。
昼でも夜でも全く疲れることなく、彼の目には戦場の出来事の全てが映り、全員の考えでさえも知ることができよう」

ヴャーサは自分の不幸な息子を慰めて去っていった。

そして戦争の日はやってきた。

パーンダヴァ軍はクルクシェートラ平原の西側に配置された。
戦士達からはカウラヴァ軍の中心に王家のシンボルである白い傘を見えた。いよいよ戦争が始まるということを実感し、身震いした。
アルジュナとクリシュナがほら貝を吹くと、パーンダヴァ軍には興奮が広がった。

両軍が従うべき戦いのルールが取り決められた。
戦う際には必ず同格の者を相手にすること。
例えば戦闘馬車に対しては戦闘馬車の者、弓使いに対しては弓使い、槌矛使いに対しては槌矛使いが戦うこと。
撤退した者を攻撃してはならない。
言葉での攻撃に対しては言葉で返すこと。弓矢で返してはならない。
戦闘の準備をしていない者、怯えている者、御者、動物、演奏者を攻撃対象としてはならない。
これらが合意され、両軍は陣形を整え始めた。

ドゥルヨーダナは弟ドゥッシャーサナに話した。
「ビーシュマをシカンディーから守るんだ。祖父は彼と戦いたくないと言っていた。彼は前世ではアンバーという名の女性で、祖父を殺すために性別すら変えて戦いに参加したと聞く。パーンダヴァ達もそれを知っているだろう。
ユダーマンニュとウッタマウジャスによって両輪を守られたアルジュナがシカンディーを守っている。常に注意しておくんだ」

カウラヴァ軍は10アクシャウヒニもの膨大な勢力で密集方陣の陣形を敷いた。さらに1アクシャウヒニが前方に陣取ったビーシュマの指揮下に置かれた。

ビーシュマの銀色の戦闘馬車は白馬に引かれ、旗には5つの星と金色のヤシの木が描かれていた。彼自身は白い服を着ていた。まるで夜空に昇る月のようであった。
パーンダヴァ軍から見てちょうど東の方向に、彼は夜明けの太陽の光を連れて現れた。

ドゥルヨーダナは大軍の中央に配置された。
彼の旗は金色の生地に蛇が描かれていた。

その大軍を見たユディシュティラはアルジュナに話しかけた。
「なんと膨大な軍だ。あちらには11アクシャウヒニが集まっていると聞いた。こちらは7アクシャウヒニだ。さあ、どんな陣形にしようか?」
「兄よ、こちらはヴァジュラヴューハの陣形が良いでしょう。インドラが好んで採用した陣形で、何者の侵入も許さない陣形です」

ドゥリシュタデュムナが軍の先頭であった。
彼を守る為にビーマが傍に配置された。
ユディシュティラは軍の中央に配置され、
軍の右側はサーテャキによって守られた。

シカンディーを連れたアルジュナが中央にいた。
アルジュナの美しい戦闘馬車は白馬に引かれ、旗には偉大なハヌマーンがいた。白馬達が朝の太陽に照らされ、笑顔のクリシュナの左手には手綱が、右手には鞭が握られていた。
アルジュナとクリシュナの偉大な姿はまさにナラとナーラーヤナの姿であった。
敵陣からこの二人の姿を見たビーシュマ、ドローナ、クリパは心の中で敬礼した。

クリシュナがアルジュナに声をかけた。
「アルジュナよ、見るんだ、あのビーシュマの姿を。彼こそがカウラヴァ軍の英雄の中のライオンだ。そしてあなたの手にかかる最初の犠牲者だ。気をしっかり持って戦うんだ」

(次へ)

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マハーバーラタの第6章 戦争を前に思いやりの気持ちに圧倒されてしまったアルジュナ。 クリシュナによる教えバガヴァッドギーターによって 知識…

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