マハーバーラタ/3-2.マイトレーヤの呪い

3-2.マイトレーヤの呪い

ヴィドゥラがハスティナープラに帰ると、ドゥルヨーダナは不信感を募らせた。仲間達とその件について話していた。
「ヴィドゥラはカーミャカの森でパーンダヴァ達と会って、すぐに帰ってきたらしい。やはり父は私よりも彼の影響を受けやすいようだ。彼の方が信頼を得ているのかもしれない。まさに今、パーンダヴァ達を呼んで国を返すように父を説得しているのだろう。さて、どうしたものか」

シャクニは笑って言った。
「大丈夫だ。そんなの無理に決まっているだろう。パーンダヴァ達は約束を破ったりしないなんてしないさ。戻ってくるよう説得するなんてできるはずがない。
それに、どんな贈り物だって彼らの怒りをなだめるなんてできやしない。もう彼らの中には私達に対する愛情なんて残っていないさ。そんなものはすでに私達が破壊してしまったんだよ。子供じみた恐れはやめておきなさい。放っておけばいいのです」

ラーデーヤが話した。
「いや、私は放っておくなんて賛成できない。軍隊を集めて森にいる彼らを倒しに行きましょう。今なら簡単に倒せるはずだ。それでこそ私達は平和に暮らせるでしょう?」

ドゥルヨーダナはラーデーヤの意見に賛成した。
さっそく兵を集め、進軍の準備を始めた。

ヴャーサがその進軍を止める為にドゥリタラーシュトラの所へやってきた。
「あなたのわがまま息子の狂気の沙汰をやめさせなさい。遅かれ早かれあなたの息子達は死ぬ運命にある。
追放された王子達が13年後に帰ってきた時に王国を返さなければ、全世界が滅びるのだ。
あなたこそがこのアダルマの原因だ。パーンダヴァと仲直りするよう息子を説得しなさい。少なくとも13年間彼をおとなしくさせておきなさい。
今、戦いを始めることは最も避けなければならないことだ」

ヴャーサが去ると、今度はマイトレーヤという名の偉大な聖者がドゥリタラーシュトラの元へやってきた。
「おお、マイトレーヤ。あなたは森から来たそうですね。パーンダヴァ達は元気に過ごしていますか?」
「はい、彼らに会いました。実はここに来たのはその為です。森へ追放される原因となったサイコロゲームの話を聞きました。なぜこの場でそんなことが起きたのでしょう? ビーシュマもあなたもその場にいたのでしょう? なぜ止められなかったのですか? まるであなた達が強盗のようであったと。もはやあなたの評判は地に落ちています」

マイトレーヤはドゥルヨーダナを呼び寄せた。
「ドゥルヨーダナよ。落ち着いて聞きなさい。君には深い愛情の性質がある。パーンダヴァ達は既に深く傷ついている。君の愛情を彼らに向けるべきだ。もっと大人になるんだ。
なぜこんなことを言うのか分かるかい? パーンダヴァ達の為ではないよ。君の為だ。
彼らがどれほど強いか考えてごらん。ビーマとアルジュナの強さが君なら分かるはずだ。ラークシャサのヒディンバやバカ、そしてジャラーサンダの死を知っているだろう?
そして今、ビーマはキルミーラも倒したところだ。
今戦いを挑んでも勝てやしない。躊躇することなく仲直りするべきなんだ」

ドゥルヨーダナは床の模様をつま先で辿ることに興味を持っているふりをした。聖者の言葉が気に入らず無視しようとしていた。そしてその言葉が気に入らないことをわざと示すかのように傲慢な笑みを浮かべて座りながら自らの太腿を叩いた。

マイトレーヤはその侮辱の態度に怒り狂った。
「ビーマの誓いは実現される。私も呪いをかけてやろう。ビーマによってその自慢の太腿を折られた時、お前の人生が終わる」
ドゥリタラーシュトラが慌ててなだめようとした。
「もう手遅れだ。呪いをかけた。しかし、もし彼がパーンダヴァ達と仲直りするというなら、呪いを消える」

マイトレーヤは一刻も早くその場から立ち去りたかった。
ドゥリタラーシュトラは彼を引き留め、キルミーラの死について話してもらおうとした。
「断る! お前達は不幸なパーンダヴァ達に対する嫉妬で燃えている。ビーマを称える話など聞いていられないだろう。ヴィドゥラがいるじゃないか。彼に聞けばいい。私は帰る」
怒り狂ったマイトレーヤはそれ以上何も話さず、立ち去ってしまった。

ドゥリタラーシュトラはヴィドゥラにキルミーラの件について尋ねた。
「分かりました。私がハスティナープラを離れて過ごした3日間についてお話しましょう。
パーンダヴァ兄弟がカーミャカの森に向かっていたある日、夜中にラークシャサに声を掛けられたそうです。それは恐ろしい姿をしていたそうです。
ユディシュティラは何者かと尋ねると『森に入ろうとする動物や愚かな人間どもを殺して暮らしているキルミーラだ。我が兄バカは人間のビーマと名乗る者に殺された。お前こそ何者だ?』と答えたそうです。
ユディシュティラがビーマを指さして紹介した時、キルミーラが言いました。
『お前がビーマか。ついに我が望みを叶える時がやってきた。ずっと兄バカと親友ヒディンバの復讐をしてやろうとお前を探していたのだ! こっちへ来い!』
アルジュナがガーンディーヴァを手に取ったが、ビーマは笑いながら止めました。
『アルジュナ、ガーンディーヴァは必要ない。この虫けらをつぶすのは私だけで十分だ』
ビーマはそう言って、いつも通り近くにあった木を根こそぎ引き抜きました。
そして恐ろしい戦いが始まりました。
最後にはビーマがキルミーラを膝の上に乗せて背骨を折って殺しました」

ヴィドゥラの報告を聞くと、確かにそれはマイトレーヤが言った通り、ビーマの強さを思い知らされるエピソードであった。
ドゥリタラーシュトラはその話を聞き、ビーマの恐ろしさを感じていた。

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