合理的配慮(ADHD)を受けて東大を受験した話

タイトルの通り、合理的配慮を受けて東大を今年(2024)受験した。
引きがあるだろうと思って東大とだけ書いたが、実際は共通テスト、早稲田大学の一般入試でも合理的配慮を受けている。
合理的配慮を受けた事例を受験生時代あまり見つけられず苦労したので、それらの所感を書いておこうと思う。

(正直、身バレの危険性が高くて恥ずかしい。駄文、長文が続くので、興味を惹くところがあれば、目次からそれぞれ読んでもらえると楽かも。)




基本情報

合理的配慮を受けたきっかけ

第一、合理的配慮を受けようとしたのはなぜかについて記さなくてはならないと思う。

きっかけは、数学の時間だった。試験形式で問題を解いている時、斜め前の席に座っていた同級生がずっと貧乏ゆすりをしていた。古い机だったからなのか、それに加えてその人が消しゴムをかけるたびにキーキーという音が不規則に鳴った。(貧乏ゆすりによる布の擦れた音も無理だった)

それが、どうしても耐えられなかった。耳をふさぎ、片眼を閉じて視界を狭めても、どうにもならなかった。問題が手につかなくなり、号泣してしまった。(思い出しても恥ずかしい)

数学の先生が「大学受験のときも貧乏ゆすりをする人はいるし、音は鳴るよ。我慢しなきゃ(意訳)」と言ってきたが、無理なものは無理だった。でも、この先生が理解のある人だったことと、担任でもあったことが幸いした。

翌週、合理的配慮を受けたらどうかとこの先生から提案を受けた。そんな制度があるのであれば、受けるほかないと思って申請を決めた。高3の夏前のことだったと思う。

配慮を受けた内容

結論から言えば、
・座席を最善の端に指定
・耳栓の許可
・少人数部屋の設定
・試験官との一定の距離の確保
・前後左右、他の受験生と1m以上離す
以上の項目で配慮を受けた。

私の症状をもとに検索すると、ミソフォニア(音嫌悪症)、ミソキネシア(動作嫌悪症)が当てはまるものとして出てくる。しかし、マイナーな症状であるため申請が通らないリスクがある。理解を得にくいのだ。

そこで、精神科に行ってADHDかどうか診察を受けた(家系的にもこの可能性が高かったのもあるが笑)。幼少期以来の知能検査である。幸い、いずれの項目も日本人の平均を割るものはなかったが、項目によって40以上のIQの差が出た。生きづらいわけである。

その他、心理検査?のような公的な検査をいくつか受診し、説得力マシマシにすることを目指した。結果として、ADHDの診断とASD傾向の診断を根拠に、上記の内容を申請することになった。

まだ、精神科にかかったことがなく、配慮親政を希望している人は書道を早くした方がいい。初診までも時間がかかるし、その後の検査も1,2か月要する。

受験校と受験結果

で、実際に配慮を受けてどうだったのかと言えば、第一志望は不合格だった。(最低点と点差は10点未満だったこともあり、まだ悔しさはぬぐえない。五月祭に行った後、家で泣くほどには笑)

以下、簡単に結果を書く。
東京大学文科N類 不合格
早稲田大学C学部 合格
慶應大学B学部  合格
明治大学P学部  合格(共テ利用)

合理的配慮を受けても、実力が足らなければ当然落ちる。東大は落ちた。
共テ、東大、早稲田は同じ配慮内容で申請している。

普通の受験も体験しておくかと思って、慶應を配慮申請せずに受けて痛い目を見たのはまた別の話。

各大学の合理的配慮の所感

共通テスト

繰り返しになるが、受けた配慮内容は以下の通りだ。
・座席を最善の端に指定
・耳栓の許可
・少人数部屋の設定
・試験官との一定の距離の確保
・前後左右、他の受験生と1m以上離す

申請が何せめちゃめちゃ大変。学校にもめっちゃ迷惑をかけた。(主語がでかくなるが)ADHDが最も苦手とする作業をたくさんさせられる感じ。誰かサポートしてくれる人を見つけて綿密に計画する必要がある。

申請が通ったかどうかの書類は学校に届く。先生から封筒を受け取ろう。

試験会場は、最寄りのでかめのところになる。学校単位での申し込みだと、クラスの人とは違う会場になることもあり得る。少々気まずいが、みんな自分のことで精いっぱいだから、一人や二人いなくても何も言わないだろう。

当日について。入り口がほかの人と若干異なるので要確認。受験票を見せると、番号から配慮申請をした人だと察される。(自分の会場だけかもしれないが、)係の人が一人ついてくれて、試験教室まで一緒に来てくれる。VIP対偶である。

私は、3人教室だった。非常に快適であった。共テリハーサルとして学校でやった時に感じたストレスからほぼ解放される。耳栓の使用許可はとっていたが、必要としないくらい静かだった。

このために、人員を一定割いていただいてることには感謝しかない。

早稲田大学

改めて配慮内容を記す。以下の通りだ。
・座席を最善の端に指定
・耳栓の許可
・少人数部屋の設定
・試験官との一定の距離の確保
・前後左右、他の受験生と1m以上離す

私大で配慮申請を通したければ、共テで通しておくのが手っ取り早いこともある。大学入試センターはある種の権威なのだろう。

共テのように3人部屋とはいかないが、そこまで多くない人数だったと記憶している(最善の端かつ、前後左右1m以上離れていたためあまり教室全体に意識が行かなかった)。

ペン回しをしながら指をバキバキ鳴らす受験生がいてイライラしたが、まあギリ耐えられた。静かに座っている人が多い印象で、同じような症状の人が集められたのかなと勝手に思うなどした(試験会場で静かにするのは当然といえば当然だが、耳栓・イヤーマフを机上に置いている人を見かけたので)

言わずもがなだが、人の動きや音が苦手だからといって、おとなしくいられるとも限らない。私も手遊びとか足ぶらぶらを気を付けないとしてしまう。無論、自分がされて嫌なことはしないようにという意識はあるので、できる限りしないようにはしている。

共テと同じ締めにはなるが、自分らのために人員を割いてもらったことに感謝している。

東京大学

改めて配慮内容を記す。以下の通りだ。(順に読んでいる人には繰り返しになるので読み飛ばしてください)
・座席を最善の端に指定
・耳栓の許可
・少人数部屋の設定
・試験官との一定の距離の確保
・前後左右、他の受験生と1m以上離す

※事前に断っておくが、落とされた腹いせに文句をつけてやろうとか、配慮が不十分で落ちたとか言う気は毛頭ない。実力不足で落ちただけである。そのうえで、いかがなものかと思う点があったので記したい。

大学入試センターの権威は素晴らしい。共テで同様の配慮を受けたと申請すると、東大の申請も比較的スムーズである。共テ前に配慮を受けたい旨を伝えておくことになっているので、受験校が変わる可能性のある人は注意がいる。(共テ後の申請も受け付けているようだが、直前期に面倒ごとは避けたい)

出願後、試験に係る案内が送られる。受験番号ごとに教室が割り振られた一覧が添付されている。この時、配慮申請を受けた人が露骨にわかるということはない。別途資料が送られるのでこれを待たれたい。

試験当日について。配慮申請者のために余計な人員を割いてもらっているのはわかっているし、感謝はしているが思うところが少しあった。

発達障害にはいろんなタイプがいる。多動な人もいれば、私のように多動な人との相性が最悪の人もいる。一緒くたにされては困るのだ。

10人前後の教室だったように思う。明らかに多動の人がいた。ずっと歩き回っていた。そう申請していたのか、立ったまま筆記できるような高さの机も用意されていた。この人に文句を言いたいということは決してない。自分も配慮を受けている側の人間であるわけだし。

でも、やはり気が散る。ストレスがガーってかかってしまう。互いの配慮申請内容を突き合わせることがあれば、確実に混ぜるな危険のそれである。

人員が無限なわけではない。当然限りあるものだ。だから、全員個室にしろとか言いたいわけじゃない。ただ、相性最悪の特性をもつ受験者は別の教室にしてほしかった。
それとも、「多動の方と別の教室にしてくれ」とでも申請すればよかったのだろうか。

少人数で受けられたことによる快適さもあったわけだし、人が前にいないので貧乏ゆすりも観測せず、貧乏ゆすりを観測する恐れにおびえることもなかったので、その点感謝は当然している。

おまけ(慶応大学)

普通の受験も体験しておきたかった。というより、行く気があまりなかったので、申請を横着した。

単刀直入に言えば、後悔しかない。泣いた。指が出血した。

前の席の人が無限に貧乏ゆすりをするのだ。そいつの揺れが私の机に伝わり、机上の消しゴムが延々と振動していた。斜め前の人も足ぶらぶら勢だった。
ストレスで、指の皮を強くひっかいてしまい手が血まみれになって、数学の解答用紙が危うく血まみれになるところだった。
英語は気が散りすぎて、長文が読めなくなり、普段の1.5倍の時間を要した。

おとなしく、配慮申請を受けよう!!
てか、ほかのところはちゃんと受けてて本当に良かった。

総じて思うところ

合理的配慮申請は、申請の手続きが煩雑で挫折してしまいそうになる。私は母にほとんどやってもらって乗り切らせてもらった。

しかし、このコストに見合うだけのリターンはある。日常的に障害などで困っていることがあり、試験に影響するのであれば早めに申請について調べておくといい。

学校の先生にも相談しておくと、いろいろスムーズだろう。

虚偽の申請を防ぐためなのだろうが、もう少し申請の手続きを分かりやすくしてもらえると、必要な人にいきわたりやすくなるのではないだろうか。

また、今回東大をやり玉に挙げるような形になってしまったが、一般にも発達障害は一括りにされやすい。それぞれ困りごとは違うし、場合によっては相いれない症状であることもある。個々の症状にもう少しだけ気を配ってもらえたら非常に助かる。

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