見出し画像

【Focus】インシュアテックの申し子 アリババ傘下の衆安保険が好調の要因②

(前回の続き)

■トップラインを牽引する「健康エコシステム」 ースマート保険販売プラットフォーム
 また、リスク管理と効率向上の観点においては「暖哇科技(NuanWa テック)」という企業と提携して構築したスマート保険販売プラットフォームが、中国国内の 1,000 以上の病院と 16 の省・市区の保健機関(プラットフォーム)に接続されており、これによって引受診査や保険金請求処理業務を最適化し、契約者の保険金請求体験を向上させるに留まらず、支払率等のクオリティ面でも好影響を及ぼしているという。
 具体的には、この仕組みの導入により引受時には約 2,500 万元、支払時には約 6,000 万円のコスト抑制に繋がり、これは支払関連コスト全体における 3%の改善という成果に結びついている。

暖哇科技(NuanWaテック)

■健康エコシステムの鍵「クローズドループ」
 衆安保険がこうした健康エコシステムを「クローズドループ」(自前或いは自前に近い形の枠組みでの囲い)で構築しているのは上記でも触れたように顧客とのタッチポイント(接点)を増やすことで「エンゲージメントを深める」ことができ、それが重ね売りや継続率の向上に繋がることが理由の一つとして挙げられる。
 医療サービスの拡充や保険への組み入れを、他社との折衝無しにスムーズ且つ主動的に実施することができ、且つグリップした顧客と直接接触可能なタッチポイントが創れることで、健康エコシステムにおける重ね売り率は11%になったとしており、衆安保険の顧客のLife Time Value(生涯において衆安保険のサービスをいくら利用して貰えるか)向上に大きく寄与したと見られている。

 クローズドループのもう一つポイントは「コスト抑制」である。
衆安保険を一躍有名にしたのは、アリババのECサイト「タオバオ」においてユーザーが誤って購入してしまった物品を返送する際に生じる費用を負担する「返品返送料保険」を提供していたことだが、こうした各業界の著名なプラットフォーマーをチャネルとすると、プラットフォーマーに支払うチャネル手数料が高額になることが問題として出てくる。
 実際、この「返品返送料保険」が主軸となっていた「生活消費エコシステム」は手数料交渉の結果によって取扱量が大きく変わり、結果期ごとに収入保険料が乱高下する状況が続いていた。

 他にも旅行予約サイト大手の「Ctrip」をメインチャネルとする「旅行・航空エコシステム」もチャネル手数料コストが全体の80-90%にまで達している。

 健康エコシステムは中国国民による健康保険ニーズの高まりを捉え、いち早く百万医療保険の提供を開始し、それを自社のプラットフォーム(衆安保険アプリ)上で主に販売し、その保険を皮切りに上記のように自前の医療機関から提供可能な様々なサービスで顧客を囲い込むことを実現したことでチャネル手数料+支払給付金によって構成される「限界コスト比率」を各エコシステムの中で最小に抑えることに成功できている。

衆安保険限界コスト比率

 現在衆安保険のアプリ経由で何かしらの保険を購入した顧客の数は116万人を超えており、アプリからの収入保険料は10.5億元を計上している。 これは対前年8.1倍の数値となっており、収入保険料に占める割合も前年度の2%から16%に大幅アップしている。

■衆安保険の「資産」と今後
 衆安保険が健康エコシステムの構築を実現した裏には、かねてより同社が提唱する「『保険+テクノロジー』のダブルエンジンによるドライブ」というスタンスが大いに作用していることは疑いようがない。
 彼らはビッグデータを通じた顧客の深い分析や、豊富なオンライン上のビジネス経験を経て、これらを「資産」とし、今日の爆発的な成長を実現している。 

 当面衆安保険はこの歩みを止めそうにない。
 「保険+テクノロジー」の先駆者というポジションを堅持し十分に生かすべく、彼らは培ったインシュアテックやデジタライゼーションのノウハウを外販するビジネスにも一層注力している。
 2020年上半期の衆安保険のテックの外販による収入は1億1,190万元であり、衆安保険提供のスマートマーケティングソリューションは市場で好評を博し、多くの伝統的な保険会社とその代理店がオンラインでマーケティングを変革し、顧客獲得コストの最適化を実現させている。
 更に、衆安保険のテックサポートを次年度も再契約する顧客の割合は80%に達し、顧客が衆安保険の技術力を評価していることが示されている。
 一見流行を捉えて急成長している「だけ」に見えた衆安保険が、実は初心のスタンスをぶらさず今に至るまで持続させてきたという事実に、皆気付き再評価し始めている。

(以上、衆安保険公式ホームページにおけるプレスリリース及びニュースサイト「圏中人保険網」等の記事より筆者が引用&翻訳・要約)
(記載の内容は転載不可でお願いします)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?