見出し画像

note版「北京の様子」

今回は、「知財系 もっとAdvent Calendar 2021」で情報発信させていただく機会をいただき(というか早いもの勝ちで枠をゲットさせていただき)知財系の方に読んでいただくことを意識して作成しました。日本から少し離れた中国北京を拠点として働く日本弁理士として、少し実務から離れた視点で現地の様子をご紹介します。なお普段は、FBやnoteで北京の様子を書いたり、中国知財のニュースをあげたりしています。

日本弁理士による中国現地の生活環境等を綴った記事としては、パテント2017 Vol. 70 No,8 西内盛二先生が執筆された「中国からみた日中の知財業界に対する所感」https://system.jpaa.or.jp/patent/viewPdf/2876 がありますが、こちらの記事の「3.現地の生活環境,業務環境について」を参考にしつつ、以下ご紹介します。

現地の生活環境

2017年当時はPM2.5が最大の関心事項でしたが、現在は大幅に改善されて、大気汚染を気にすることはほとんどなくなりました(ただ、完全にゼロではありません)。参考までに執筆現在(2021年12月16日)の、オフィスから撮影した北京の空の写真を載せておきます。Huawei携帯端末による自動色補正がかなり入っているような気がしますが、まあ、大体、このような感じです。建物のコントラストから、実際の色合いをご想像ください。

2020年以降は、コロナの影響で現地での生活は一変してしまいました。私は2020年1月の春節時、帰省最終日に大陸からのSOS(マスクがない!)で事の重大さに気付き、他の中国人観光客と同様に東京でマスクを買う羽目になりました。東京から北京への戻りの飛行機では、ウイルスが広がって国境が封鎖されたら、暫く日本に帰れないだろうなあと心配していましたが、その心配通り、現在2年近く日本には戻っていません。

2021年12月現在、北京の日常生活では、建物に入る際や公共交通機関を利用する際に必ずマスク着用を促されます。また、建物に入る際には、毎回携帯アプリで二次元バーコードをスキャンして、本人が二週間以内に危険地域に指定されたエリアに行っていないことを証明しなければいけません。最初は非常に不便に感じましたが、慣れてしまえば建物に入る前に事前にアプリを起動しておけばスキャン自体に時間はかからないので、ストレスを感じることはなくなりました。

北京現地での「衣食住」については、上記西内先生の記事の印象とそれほど変わりません。現地では知財関係者として(知財関係者じゃなくても?)見逃したくない様々な状況に出くわします。


ここ最近の円安の影響もあり、物価は日本より高いと感じるようになりました(10年前は物価も安く、円高もあって安いと感じていました)。現地で生活すると二大出費は「家賃」と「教育」ですが、かなりの額になります(口に出すのが憚られる額です(泣))。

現地の業務環境

コロナ以降、便利になった知財系オンライン研修を拝見していると、日本の知財業界がより多様で深い領域に広がっていることを強く実感します。一方中国では国内の出願件数の伸びも堅調であることから、「専利代理師」に期待される仕事は所謂従来タイプの権利化、紛争解決といったものが多いと思います。
現地の先進企業にとっては、海外展開が重要な課題であるため、紛争が多い米国の知財プラクティスに詳しい人が好まれるようです。残念ながら多くの中国企業にとって、日本は市場が小さく、技術的に優れるライバルも多いため、日本に対して知財の観点から興味を持つ方は多くないように思います(たまに、中国市場での競争が厳しすぎるので、日本へ進出したいと仰るお客様もいらっしゃいます)。

中国の知財業界で働くこと

海外で働くメリット、デメリットは色々あり、一概にお勧め又は反対することはできませんが、やはり「外国人」が劣るのは現地のネットワーク力ですので、困ったときに一緒に問題解決してくれる「心から信頼できる方と一緒にビジネスをする」ことが何より大事ではないかなと思います。私自身、多くの方から何度も助けていただき、現地で楽しくお仕事をさせてもらっています。人とのご縁に、感謝です。

知財というものが、最新の技術や独創的な成果を扱うものである以上、研究開発等新しい何かに積極的に投資される場所に知財人材も引き寄せられていく、、、という大きな流れはあると思います。中国が色々ありながらも経済発展を続けていくとしたら、、、もしかしたら、この文章をお読みになっている方で、数年後、あるいは数十年後に、中国を拠点に活動される方がいらっしゃるかもしれません。

そのような未来の可能性に向けて、私が今お伝えできることがあるとしたら、、、「中国語」はやっておく価値がある言語だと思いますよ、というところでしょうか。
専門分野の知識は勿論必要ですが、こちらは国境を越えても通用するスキルなのでここでは特に触れないとして、日本人の方で「中国語」を使う方がもっと増えてくると色々と世界が広がっていくのではないかなあ、と思っています(例えばサーチャーの方が英語と中国語の両方でサーチをしてしまうとか、、、そんなイメージです)。

中国語は発音が難しいと良く言われますが、そもそも日本人は漢字が表す概念を中国人とかなり共有しており、「金融」のような日本が近代化する中で作った造語は、そのまま中国に逆輸入されています。私達が学校で習う漢字の音読みも、中国語の一方言を学んでいるともいえますし、また、不思議な現象ですが、概念が難しくなれば難しくなるほど同じ漢字を使っているので(例えば「涅槃」とか)その概念を理解するのが簡単です。

日本は地理的に21世紀の大国であるアメリカと中国のちょうど間に位置し、その両方から経済的な影響を強く受けています。日本は、生活の中で英語を中心とした外来語が溢れ、また、漢字という文化を共有しており、英語と中国語という二つの言語を学ぶのに世界一有利な場所だと思います。
 その日本で生活をする人々が、両方の大国の言葉を使いこなし、強かに生き抜いていく、、、そんな知財人材が増えていったら楽しいだろうなあ、と思っています。

最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?