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5歳義務教育開始の課題

5歳から義務教育を始めることについて、課題を考えてみました。幼稚園の5歳を義務教育にすることで生じる課題です。

幼稚園から義務教育を始めるとして、確保しなければならないのは

・財源

・教諭

・施設

になるでしょう。まず、無償化するのであれば財源の確保は必須です。文部科学省の「子どもの学習状況調査(平成24年)」によれば、

・公立幼稚園:約23万円~約25万円

・私立幼稚園:約49万円~約54万円

となっています。


Excelのライセンスがなくて文科省のデータをみれないので、Education Career「【2020年最新版】小学校の児童数の推移に関する統計まとめ!」を使って、小学校の在籍者数をみます。それによると、小学校1年生の数は大体150万人以上で、毎年の入学者数が150万人・そのうち、半分ずつが公立・私立幼稚園に在籍しているとします。

そうすると、

・公立費用=24万円(1年分)×75万人=1800億円

・私立費用=51.5万円×75万人=3862億5千万円

幼稚園の5歳児を義務教育・無償にした場合は、大体5000億円以上の費用がかかると予想されます。

財務省の予算案を見てみます。令和2年度予算案では、幼児教育・保育の無償化として1878億円が計上されており、5000億円は過大に見積もりすぎたことが分かります。

幼児教育・保育の無償化について、

・幼稚園無料(月額25,700円まで)

・保育所(認定こども園・障害児の発達支援)無料

・認可外保育施設(月額37,000円まで)

・幼稚園の預かり保育(月額11,300円まで)

とされます(ソースはこちら)。とりあえず、無償化されていることを初めて知ったので、「無償化なんてできないんでしょ!」と言おうとしたのに、言えなくなってしまいました。

私立幼稚園・保育施設は無料化することはないですかね。私立学校も助成金があって実質無償化されているだけです。無償化とはいかなくても、補助金を用意してなるべく多く就学させることはできると思います。

ただ、無償化されたとしても、待機児童はいるわけです。保育のお仕事レポート「【2019年最新版】知っておきたい待機児童問題の現状~原因と対策~」によると、待機児童にカウントしなくてよいものとして、

・特定の保育所を希望している

・保護者が求職活動を休止している

・自治体が補助する保育サービスを利用している(保育ママ、東京都の認証保育所など)

などがあるようで、こうした「隠れ待機児童」問題も解決しないといけません。だいたい待機児童は2万人ほどいるとされ、幼稚園・保育所など幼児が通う場所はおよそ4万校、厚生労働省の資料によると、幼稚園児・保育園児・推計未就園児の0~5歳児の合計はおよそ600万人くらいで、1校あたり150人の園児が在籍していることになります。

計算は合っているでしょうか。すごく心配ですが進みます。

そうすると、待機児童問題を解消するには2万人÷150人=約133もの、新たな保育所・幼稚園の設置が必要です。必要な保育士の数は、0歳・1,2歳・3歳・4,5歳児で異なる(4分類とする)のですが、150人の内訳を、150÷4=37人(1分類あたりの数)とします。

保育士の数の最低基準(太字)をもとにすると(スゴいい保育「子ども30人に保育士何人必要?あなたの保育園、保育士の数は足りていますか?」より)、

・0歳児—3人に1人=12人

・1,2歳児—6人に1人=6人

・3歳児—20人に1人=2人

・4,5歳児—30人に1人=1人

で、1園あたり20人程度の保育士が必要になり、20×133=2660人の保育士を確保しなければなりません。厚生労働省によると、保育士の有効求人倍率は、2018年時点で3.20倍、東京都では6.44倍とされます。ちなみに、運輸業界では人手不足が深刻化していることが指摘されていますが、国土交通省「トラック事業の概要」によると、平成30年1月時点でパートを含む貨物自動車運転手の有効求人倍率は2.76倍でした。保育士の方が、深刻な現状にあることが分かります。確保するのは容易ではなさそうです。

しかし、保育所バンク!「保育士の人数について解説!現役保育士・潜在保育士の人数は?」によれば、保育士の資格を持っていながらその職に就いていない「潜在保育士」は70万人ほどいるとされます。そうした人たちを活用できれば、人手不足は解消できるでしょう。


財源は確保できている、人手の確保は難しそう、ということが分かったので、次は施設の確保について考えます。1校あたり150人くらいで、130施設が必要になりそうだと述べました。

厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(平成 30 年4月1日)」によると、保育所の数は2万3千前後で推移している一方で、認定こども園などの数は年々増加傾向にあります。

施設は増加しても、保育士の人手不足は深刻という状況はどう捉えればいいのでしょうか。


グーグルトレンドで「待機児童」と調べてみると、遡れる2004年から待機児童という言葉は存在していました。ずっと昔から、待機児童はいたわけですが、それがどの政権でも解決されませんでした。

無償化はしても、義務化は難しいんだろうなと思うばかりです。


おわり。

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