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創作物を生み出す人たちの権利を全力で守りたい

今日とてもショッキングなニュースが飛び込んできた。

最近ドラマ化した『セクシー田中さん』の作者・芦原妃名子さんが自死されたとのこと。

私はドラマも漫画も一切見ていないので、作品についてのことは何一つ知らない。

ここ数日、ドラマ化にあたって作者の意向をかなり無視していたということで、ものづくりをする身としても、弁理士を目指している身としても注目していた騒動だった。

だから私が騒動を知ってたった数日でこのような展開になってしまったことがものすごいショックだ。


事件についての詳細はここでは省くが、この一連の騒動は私が創作の現場でつよく懸念している事項が詰まっていた。

一生懸命作った大事な作品を他人に勝手に改変されてしまう苦しさ。
原作者と現場をつなぐプロデューサーの仕事がうまくできていない。
良い作品を作りたくても急なスケジュールが最優先で、納得いかないものを世に出さなくてはいけないもどかしさ。
原案者ではなく別の人間が美味しい思いをしようとしている。
作品を創り出す人間への圧倒的なリスペクトの欠如。

など…あげればキリがないほど、私が今まで感じていた不満が如実に現れていた。

脚本家もクセが強そうな方なので、Xでは彼女に批判的な意見がたくさんあった。

私は10年近く映像を作る仕事に関わっていたので、なんとなくこういった騒動の内情はイメージできる。

Xで皆がいうように本当に脚本家が暴走したのかもしれない。
でもそんな脚本家をコントロールしきれず、原作者の「あくまでも原作に沿って映像化してほしい」という強い願いを現場に伝えきれずに、著作者人格権を大きくふみにじったプロデューサーの罪は大きいと思っている。


今でこそ弁理士という知的財産権法(著作権や特許法などを含む分野)のプロフェッショナルを目指して勉強しているが、私はこれまでずっとデザインなどクリエイティブ業界で仕事をしてきた。

華やかな仕事だと思われることも多いし、デザインというと絵が描ければ出来るとか在宅で主婦でも始められるかのように広告しているスクールも多い。
でも実際はそんな甘っちょろくはない。

大好きな仕事だったから、寝ても覚めても仕事のことを考えていたし、
常により良いものを創るために日々インプットとアウトプットを欠かしたことはなかった。
PhotoshopやIllustrator等のデザインソフトもひとつ覚えて満足するのではなく、時間をみつけては動画のスキルを身につけたり、アップデートに伴って新しい機能を勉強するなどして時代の変化に負けずに勉強してきた。

そういった日々の努力(とも思っていなかったけど)を積み重ね、仕事の依頼があった際にどんな急なスケジュールであってもスピーディーにクオリティの高いものを作れるように工夫してきた。

かといってそんなに毎回いいものが作れるわけでもない。
スランプはあるし、どれだけ最高にいいものが出来たとしてもやり直しになることなんていくらでもある。

クライアントと実際に手を動かしている制作の間には、広告代理店や、ディレクター、プロデューサー等が入る。
依頼者と制作者の間を伝言ゲームのように何人もの人間がやり取りする。
クライアントの要望をしっかりカウンセリングした上でこちらに適切な指示をしてくれるならいい。
でも伝言ゲームの間に入っている人間の中には、お門違いな自分の意見を入れてくるので明後日の方向に進んでしまうなんてことも日常茶飯事だった。
直接クライアントと話をさせてもらった方が圧倒的に早いのに…と思うことはしょっちゅうだ。

修正指示がくるときも「わざわざそんな言い方しなくてもよくない?」「じゃあ、あんたが作ってみろや」と言いたくなるようなことも多々ある。

クライアントと制作の間で「あーでもない、こーでもない」といってる人物たちは本来は必要ない存在だと思う。
しかし中抜きをするために仕事をしている風を装わなくてはならない。
だから重箱の隅を突きながら偉そうに現場を乱す。

自分達は何も生み出していないのに、実際手を動かす人間たちを奴隷のように扱う。
だから金曜や連休前日の夜にいきなり連絡をよこして、大量の修正指示や追加の依頼をしてくる。
週明けまでに作れと…

そのような状態で振り回され続けるのが現場の人間だ。
どれだけ頑張っても大きな収入にもならない。
なんせ中抜きをされているから。

「著作権が」とか「著作者人格権が」なんて権利を主張すると、たちまち顔が曇る。
そして何も文句を言わない他のクリエイターを探す。
それが分かっているから、クリエイターはなにも文句が言えない。

どんな理不尽な行為にも耐えなくてはならない。


わたしも業務委託でデザインを受注していたときに、改変可能データをよこせといわれ、「勝手にいじられるのは困ります。こちらには著作権があるので…」と主張したことがある。
すると「そういうこという人とは仕事したくないんですよ。第一、お客さんから頼まれて作っているものに著作権なんてないんですよ。」と言われた。

相手の言っていることは著作権法の観点からみて完全に間違っている。
当時の私は法律に疎かったのでうまく反論ができなかったし、自分の仕事を侮辱されたように感じてとても悔しい思いをした。


その出来事をきっかけに私は著作権を勉強し始めた。
そしてどっぷりハマった。


自分のような悔しい思いをするクリエイターを一人でも減らさなければならないという信念が湧いた。
それが私の使命だと思った。

そして現在、弁理士試験に向けて日々勉強をしている。


そんな中で今回の悲しい事件が起こり、私はよりいっそう1日も早く私が弁理士にならなければならないという気持ちになった。

素晴らしい作品を生み出す創作者たちの権利を守りたい。
現場の人たちがちゃんと報われる世界にしたい。


だから頑張る。

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