食活




僕はハマったものを何度も繰り返し食べる癖がある。




これには強い自覚があり、かつ僕のご学友にも多々ご指摘いただく点である。




つい先日も、改めてご指摘いただいた。






これは昔からの癖で未だに直っていない。







一度ハマってしまえば、狂ったように僕の舌がその味を欲する。






僕の通っていた大学の近くに定食屋があった。





僕は弱冠20歳でそこの”二色ジャンボチキンカツ定食”に激ハマりした。



お腹を空かせたお金のない学生にとっては非常にありがたい安価かつ超ボリューミーな定食だった。




よくスーパーに売っているお惣菜のとんかつの1.5倍ほどの大きさのチキンカツ2枚にご飯大盛りは約2~2.5合くらいあった。






「いや、うちこう見えて結構食べるから!」と男子に負けない大食漢アピールをする世間の広さを知らない大学進学のため地方から上洛してきた女子大学生が調子に乗って頼もうものなら、配膳されたその刹那に失神不可避案件である。





ちなみに、”二色”というのは、チーズと大根おろし feat.ぽん酢というトッピング界の二大巨頭がタッグを組んだ、言わば若人のエゴイスティック・ロマンスである。





僕はこの色彩のビッグプラネットこと”二色ジャンボチキンカツ定食”に心酔し、大学生活の4年間全てを捧げた。






さすがに冗談である。







ただ、ひどい時は週4~5で通っていた。






述べ100回以上そのお店に行ったと思うが、恐ろしいことに僕はそのお店でただの一度も”二色ジャンボチキンカツ定食”以外を頼んだことはない。






さらに恐ろしいことに、その定食屋はかなりメニューが豊富にあったのだ。





定食屋さんならではの、ミックス定食や焼肉定食などの定番メニューの他にも親子丼などの丼物・海鮮鍋など様々なメニューが約50種近くあった。



一応、”二色ジャンボチキンカツ定食”はおすすめメニュー的な役割に遭ったと思うが、実際に友人たちは色々なメニューを食べていた。





だが、僕は種類豊富なメニューや友人達の呆れた視線には目もくれず、”二色ジャンボチキンカツ定食”をただひたすらに喰らい続けた。






しまいには、”二色ジャンボジャンボチキンカツ定食”(ご飯大盛り)という推定カロリー5,000kcal超であろう爆量裏メニューまで頼んでいた。





かく言う、この文章を今書いている僕でさえ、少し度が過ぎた愛だったと感じている。






他にも回転寿司に行って、16皿食べて後になってよく考えたら全部サーモンしか食べていなかったということもあった。

※)サーモン・とろサーモン・炙りチーズサーモンなど多彩なサーモンを食べていたため、気づかなかったことは仕方がない。






グルメというわけでは無いのだが、食に対しては昔から変なこだわりがあった。







こないだコンビニでレジに並んでいた時に、ふとお菓子コーナーを見ると、高校生の頃にずっと食べていたコーラ味のグミを見つけた。






「懐かしい!」思った次の瞬間にはもうそのグミを握りしめ、レジに進んでいた。




そのグミは大学受験勉強をしていた高校3年生の時にずっと食べていた。

※)同時期に雪印のコーヒー牛乳を1年の内360日ほぼ毎日飲んでいたが、略。




大事な模試や入試試験には必ず持っていき、試験前に参考書を読みながら噛み続けていた。



どこかの賢そうな大学の研究で”噛む”という行為は集中力を高める作用があるという研究結果もありそうだし、実際に集中力が上がるような気がしながら噛んでいた。




そのグミと中学の剣道部の試合や遠征の時に必ず食べていたセブンイレブンのチャーハンおにぎりのセットが僕にとってはテスト前のゲン担ぎの食べ物のような存在になっていた。







と、ここで”ゲン担ぎ”の食べ物(以下、「ゲン担ぎ飯」)について気になることがある。






ゲン担ぎとは、「験担ぎ」と書き、以前によい結果が出た行為を、再びよい結果が出るように繰り返して行なうことを指す。



語源としては、江戸時代に流行した逆さ言葉(今で言う「寿司」のことを「シ―スー」と呼ぶ古いテレビ業界人が使う言葉のようなもの)の影響で、「縁起」という言葉が
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「縁起」→「ギエン」→「ギェン」→「ゲン」
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となったらしい。




経験したことがある人も多いと思うが、受験シーズンにおいては応援の意も込めて、ご両親が試験前日に”ゲン担ぎ飯”を振る舞うというのが、冬至に次ぐ冬の恒例の行事である。







この”ゲン担ぎ飯”の代名詞と言えるのが、皆が知るあの「かつ丼」である。







これがどうも納得いかない。






「かつ」=「勝つ」から縁起のよい食べ物とされているわけだが、そうであるならば「丼」はどうするのか?







「丼」=「どん」?







いや、『太鼓の達人』世界大会決勝戦の前日ならば、何ら文句はない。






『太鼓の達人』の主人公キャラクターである和田ドン氏が会話をする際に、語尾が「~だドン!」となるために、それになぞらえて「勝つドン!」=「かつ丼」というのは正しいロジックだろう。




ましてや、『太鼓の達人』の和田どん氏の相棒として、共に和太鼓界を盛り上げるメインキャラクターの和田かつ氏の「かつ」にも掛かっているために、申し分ない”ゲン担ぎ飯”と言えるだろう。







ただ、こと受験戦争においてはそんなバチ当たりな冗談は言ってられないだろう。







本当に”ゲン担ぎ飯”として相応しい食べ物は何か。







僕は考えた。






30分ほど考えた。







「かつ」=「勝つ」という表現に何ら異論はない。








ゲン担ぎなのだから、担ぐのであれば思い切り担ぐべきである。







「勝つ」にしても、ただの勝利では物足りない。







思い切り勝つ、すなわち「大勝利」であるべきなのだ。







そう、「大勝利」。








「ビッグカツ」である。









これである。







これこそが、正真正銘の”ゲン担ぎ飯”だと僕は思う。









【あとがき】
Dear 全国の受験生のお子さんを持つお母様方へ






これから入試試験が近づき、より受験シーズンが本格化していきます。






不安で仕方がない日々が続くかと思います。






お子さんが第一志望に入学できるか、将来は大丈夫なのかで頭が一杯かと思います。







大丈夫です。






第一志望校にダダ滑りした筆者の僕でも、入学した大学で素晴らしい出会いや学び・経験をすることができました。





”二色ジャンボチキンカツ定食”にも出会えました。





将来は大丈夫じゃないですが。(自責のため考慮せず)







お子さんの今・これからを信じてあげてください。







お子さんのカバンの隅に、そっと「ビッグカツ」という小ボケを忍ばせ、笑顔で送りあげてください。










【追伸】

こんなことを考えていた時にふと近くにあった壁を見ると、下記画像と同じポスターが貼ってありました。

















「ビッグボス」である。








水瀬















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