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短編小説を書いてみる

山田ズーニー先生の講義を受けました。
太宰治の小説を参考に
60分で短編小説を書くというものでした。
絶対書けるわけが無いと思っていたのですが、
なんとなーく形にはなったので残しておこうと思います。
学生の頃に「負けた」と思った体験を元に書いたものです。

大人な風景

私は、私自身誰にでも分け隔てなく接する事ができる
人間だと思っていた。
小学生の頃から友達だったエイ子ちゃんとは特別仲が良かった。
一緒に空手を習っていたからだ。

彼女は地頭がよく良い家柄の子で、
私がどんな遊びに誘っても断らないでいてくれた。
空手の練習もとても厳しかったが、
お互い励まし合って成長していた。
親友と呼べる存在だったように思う。

中学生になってすぐ、エイ子ちゃんが空手を辞めた。
お互いが支えあっていると思っていた私は、
相談もなく辞めていったエイ子ちゃんに対して
「裏切られた」と感じるようになっていった。

中学では違う友達もでき、
その頃からエイ子ちゃんとは全く話さなくなった。
彼女も少し気まずそうにしていたように思う。

中学を卒業する際に、
クラスにいる全員にメッセージを書いて渡す、
という企画が持ち上がった。
私はエイ子ちゃんに対してどうしても
良いメッセージを書くことが出来なかった。

どうするか悩んだ私はありきたりな事を一言書いて渡したのだ。

だが、エイ子ちゃんからのメッセージ内容を見て驚いた。
私の事を褒め称える内容がびっしり書かれていたのだ。
負けた、負けた。
そう思わずにはいられなかった。

これが本当に思っている内容なのか、
ただの嫌味なのかはわからないが
だとしても、彼女は私よりも何段階も上にいて大人だった。

負けた。これは、きっと全て勘違いだ。
彼女は私と戦ってもくれていなかったのだ。

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