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五つの棺~読書記録210~

ミステリー作家・折原一の作品。


この題名を観て、ミステリー好きの人は、あれ?と思うだろう。
そう、密室トリックの名人、ジョン・ディクスン・カーの「三つの棺」を想い浮かべるのだ。
そして、最初のページには
「不可能犯罪の巨匠ジョン・ディクスン・カーに捧げる」
と記されてある。

つまり、明らかにジョン・ディクスン・カーを意識して書き下ろしたものなのだ。
で、折原一の作品に度々出て来る黒星警部が捜査を行う。
この黒星警部シリーズ。私としては、パロディっぽいというか、面白いものと思えてしまう。つまり、ジョン・ディクスン・カーの作品のような緊張感はあまりない。

作者は、あとがきで
「読んでいただければ、お分かりの通り、この短編集はパロディーの色彩がかなり強い。私自身、密室の時代は既に終わっているし、たとえ密室が書かれても、それはパロディーしかありえないと考えているからである」
と書いている。

納得であった。

科学捜査も進んだ今、密室の謎など昔とは違ってくるだろう。今後、ミステリーはどうなるのか?そう考えてくるのだった。

私個人としては、折原一の作品は、警察も探偵も出ない、不思議な作品、結局は何だったんだろう?過去と未来とごっちゃまぜだな、と思わせるようなものが好きだ。


特に、死仮面。
国鉄と秩父鉄道と私鉄と3つの線があるY駅。優秀な子が行く予備校のK市。
これは、私自身がこの辺をよく知っているからか。すぐにピンときて面白かった。


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