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シンデレラの罠~読書記録294~

セバスチアン・ジャプリゾ 平岡敦訳
語り手である私は20歳。その私は、探偵であり、証人であり、被害者であり、しかも犯人である?! 空前のトリックで伝説的傑作の新訳。

わたし、ミは、火事で大火傷を負い、顔を焼かれ皮膚移植をし一命をとりとめたが、一緒にいたドは焼死。火事の真相を知るのはわたしだけだというのに記憶を失ってしまった。わたしは本当に皆の言うように大金持ちの伯母から遺産を相続するというミなのか?死んだ娘がミで、わたしはドなのではないのか?わたしは探偵で犯人で被害者で証人なのだ。ミステリ史上燦然と輝く傑作。フランス推理小説大賞受賞作。
作者は『シンデレラの罠』で、フランス推理小説大賞を受賞した。

平岡敦は1955年、千葉県生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業、中央大学大学院フランス文学専攻修了。 2008年、チェン・ジャンホン『この世でいちばんすばらしい馬』で第56回産経児童出版文化賞翻訳作品賞受賞。 2016年、ガストン・ルルー『オペラ座の怪人』(光文社古典新訳文庫)で第21回日仏翻訳文学賞を受賞。
モーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパンシリーズの翻訳者として有名である。

タイトルの「シンデレラの罠」であるが、一番最後に読者への謎ときの形で出るのだ。
香水の名前である。

読んでいるうちに、二転三転として、え?え?主人公は結局、ドなの?ミなの?となっていくのだが、ここは訳者が上手なのだと思う。
私は、旧訳を知らないのだが、それを読んだ方の評判はあまりよくない。

個人のブログを引用するのは避けたいので、実に多くのブログで、旧訳の評判が良くない、新訳を読んだらスッキリした、面白かった。という感想があるのだ。
1964年に出版された訳者は、中央大学名誉教授のフランス文学界隈では偉い先生なので、その方が亡くなってからでないと、新訳は出せなかったのではないかと勝手に思っている。

実は、翻訳者の平岡敦氏は、あとがきの解説で、こんな事を書かれている。「たしかに旧訳版の『シンデレラの罠』には、首をかしげたくなる部分も少なくなかったが、それらはすべて翻訳上の問題だった」

深町眞理子先生のエッセイ、作品を読んで納得したのだが、翻訳者は、ただ語学が出来ればよいというものではないのだ。普段から日本語の物語を読んで、面白い日本語訳が出来ないならない。
本当にそう思う1冊であった。

で、結局、生き残ったのはどちらなのだろう?ミしかないのだろうが、不思議な話であるが、先に読み進めたくなる本であった。

翻訳者の平岡敦さんにお礼を言いたい。


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