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ヤマト正伝 小倉昌男が遺したもの~読書記録288~

2017年 日経ビジネスが編集したもので、現在、ヤマトホールディングスの幹部5人がそれぞれを執筆している。

≪登場するヤマトホールディングスの歴代経営者≫
ヤマトホールディングス特別顧問  有富慶二氏
ヤマトホールディングス相談役   瀬戸 薫氏
ヤマトホールディングス会長    木川 眞氏
ヤマトホールディングス社長    山内 雅喜氏
ヤマト運輸社長          長尾 裕氏


正念場のヤマト、試される小倉イズム
小倉昌男の後を継いだ歴代経営者が語った
守るべきもの、変えてゆくもの――

インターネット通販の拡大による荷物の急増によって、宅配便業界が大きく揺れています。
特に宅配便最大手のヤマト運輸は、労働環境の悪化や人件費の高騰、
人手不足などが社会的な問題となって、2017年春、注目を集めました。
セールスドライバーなど現場の悲鳴を受け、
ヤマト運輸は本格的な「働き方改革」に乗り出しています。

宅急便の生みの親にして、戦後の名経営者・小倉昌男氏は、素晴らしい経営哲学を遺しました。
「サービスが先、利益は後」「顧客第一」「全員経営」…。
正念場を迎えた今、改めてこの「小倉イズム」が問われています。
本書は小倉氏が経営の表舞台から去った時点から物語が始まります。
小倉氏以降、ヤマトグループを支えてきた歴代経営者たちは、中興の祖の遺した言葉を、
どのように咀嚼し、自身の経営に生かし、次の世代にバトンタッチしてきたのか。
歴代経営者が小倉氏から受けた薫陶は何か。
"ポスト小倉昌男"の経営者5人の言葉をまとめた、初めての経営書となります。
小倉氏は経営者としての半生をまとめた著書『小倉昌男 経営学』(日経BP社)を遺しました。
続く経営者たちは、ここに刻まれた言葉を繰り返し反芻し、自身の経営に取り入れてきました。
彼らの迷いと決断をまとめた本書は、「小倉イズム」の実践編とも位置付けることができるはずです。
最終章では、現在、大きな社会問題となっているセールスドライバーの長時間労働や
人手不足について、ヤマト運輸社長の長尾氏が思いを打ち明けました。
小倉氏が経営から去り、20年以上の歳月が過ぎ、ヤマトグループを取り巻く経営環境は
大きく様変わりしています。守るべきものと、変えてゆくもの――。
5人の経営者は、どのような決断を下してきたのでしょうか。
(出版社紹介より)


ヤマト運輸というと、小倉昌男氏のカリスマ性が際立っていたと思う。本書では、執筆された5人の役員の方々が「小倉イズムの継承」を真剣に捉え、実践されている。
経営とは何か。現場を大事にする志向。改めて、クロネコヤマトの宅急便は素晴らしいなと思うものであった。

楽天市場やらインターネットやらはない時代にクロネコヤマトの宅急便は生まれた。当時は国鉄だった。平成生まれの若者に「国鉄」などと言うと、知らないと言われるのだが。
大学の学生寮にいた私は、自宅との荷物のやり取りに宅急便は本当に有難かったことを覚えている。本に洋服にと、当時は衣替えの時には、服は自宅に送っていた。
自宅から荷物を送る場合でも、日曜、祝日が休みの郵便局ではなく、日曜、祝日に、郵便局の真ん前にある個人商店から送れる。これは本当に有難いなあと思っていた。この本を読む限り、そのような田舎の小さな店をもヤマト運輸は大切にしていたのだろう。

実は、宅急便が誕生した当初は、個人間の荷物の配送は郵便局、国鉄が引き受けていたのだ。郵便局の場合、4日くらいはかかる。そんなのが当たり前であった。まあ、1970年代はのんびりしていたからだろうが。そんな中での翌日配達のシステムは画期的であった。

本書の中にも度々出て来るが、現場で働くドライバーを本当に大切に思う企業なのだなと思った。
みずほ銀行から請われて、途中入社した木川眞氏は、「外で見てきた印象と中に入り視たのと変わらない会社だ」と述べている。
ヤマト運輸だからこそ、家を買えた、子どもを大学にやれた、と感謝するドライバーも多くいるという。

納得しながら読んでいく本であった。

この小倉イズムを遂行する為に、経営陣と現場との一体感もあるのだ。
街角で見かける事もある、ある場所にトラックを停めて、何人かのパートさんが台車や自転車で手分けで個人宅を廻る仕組み。そのようなものも、効率化の中で生まれたのか。納得した。
それまで当たり前と思われていたものを次々と変革していった経営陣、現場を尊敬すると共に感謝もある。
私などは、旅行のたびに、ホテルから荷物を送っている。その際には、やはりクロネコヤマトの宅急便だ。
楽天市場でスイーツの購入をする場合、クール宅急便だ。

他社と比較するのは申し訳ないのだが、かなり前からヤマト運輸さんのドライバーは親しみやすいなと思っていた。愛想があるというか、接客業なのだ。
そんな感じで、昨年は金沢市のホテルから荷物を送り、到着した時に、金沢土産の美味しいほうじ茶をペットボトル1本「いつもありがとうございます」と手渡した。その時の笑顔は良かった。


2019年に亡くなった愛猫は、外に出していたのだが、人懐っこく、ヤマト運輸のセールスドライバーさんにも覚えられていて、名前を呼んでもらっていた。
そういうのが、サービス精神なのかもしれないなと本書を読みながら思うのだった。

インターネットの普及により、物流も大きく変わっている。Amazonなどは自社便を使うようになった。その時代をどう乗り越えるか。
課題は色々あるのだろうが、今後、応援したい企業である。
そして、私自身が勝手に若者たちに言いたいのは、
「今は、スマホで簡単に日時指定が出来るのだから不在通知にならないように、自分で気を使えや」
ということだ。
自分自身も心したい。



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