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父のいる光景~読書記録135~

1992年、森村桂さんのエッセイ。

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この本でもなのだが、森村桂さんの本を読むと感じる不思議な感じ。
桂さんのお兄さんの存在の希薄さだ。
本当にいたのだろうか?と思ってしまう。

こちらの本では、戦時中に桂さんが父の親せき宅に疎開した時の想い出から始まり、大学1先生の時、父の死に至るまでの、父と娘の深い愛が描かれている。

しかし、この本でも思ったのは、森村家は娘だけ?のようにイメージしてしまうのだ。
アメリカの作品とはいえ、自分を主人公にした「小さな家シリーズ」のローラインガルスワイルダー。同じく、「若草物語」もほぼ自分の家族がモデルだろう。
出て来る自分以外の姉妹たちが外見がどんな風で性格やら頭の良さなど。
ハッキリとイメージ出来るのだ。
だが、森村さんのお兄さんは、全くイメージがわかない。
身長は?顔の感じは?母や父の事は細かく書かれているので、雰囲気や顔や体型など想像できる。
だが、兄が生活の中に登場しないのが不思議だ。

例えば、他の本でも思った。
何故に、20代で桂さんが日本テレビ社員と結婚する時に母も一緒だったのか。
谷口さんから離婚を言い渡され、精神的にボロボロになり、何も出来なくなり、母は掃除もしない。そんな時に何故に兄は妹を助けなかったのか?
再婚相手の三宅一郎さんに任せっきりの状態で、桂さんが自殺未遂ばかり繰り返すのに兄と母は無関心だったのか?

何とも不思議な家族なのだ。

ところで、本書であるが、当時の学習院の様子が出てくるが、なかなか興味深い。

このエッセイに出て来るエピソードなのだが。
学習院初等科の時代、Iさんという同級生に桂さんは「父が鉛筆を削ってくれる」話をした。
Iさんは「信じられない。。。」の態度だった。
帰宅後、桂さんが父親にそれを話すと、
「池田勇人大蔵大臣は忙しいから子供の鉛筆削りなんかしないだろう」と父は言われたのだった。
自分の言葉では「Iさん」とイニシャル。父の言葉で「池田勇人の娘」と読者に謎解きを。
上手いなあ。
森村桂さんの年齢からすると、元外務大臣、池田行彦氏(婿養子)の妻、紀子さんかと思われる。

他のエッセイなどからも、学習院の華麗なる情景が浮かぶ。



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