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全身麻酔~読書記録6~

元大阪大学医学部附属病院・腫瘍外科医・霧村悠康氏の作品。
舞台は大阪にある国立O大学付属病院。

全身麻酔2

上に写真に上げたが、この登場人物。これが又ややこしいのだ。ネタバレ覚悟で言うと、同じ人物がわからないように紹介されている。
「私」は、全身麻酔の際に意識があり、その時の様子を小説とする。ちなみに職業は弁護士である。
麻酔科医は28歳の研修を終えたばかりの雲井医師であるが。少しだけ脇役として登場する奈良の個人病院に勤務する元O大学附属病院外科医の本木医師と同期である。本木医師が大学病院を辞めて2年後の設定となっている。
雲井医師の麻酔ミスもあったが、患者の取り違え、その後の術後病理に回す切り取った組織の悪意によるすり替え。(これが又ドロドロとしたもので、ネタバレをしてしまうと手術室の元看護師が患者の元妻であり、相手の不倫から離婚を言われ、元夫と不倫相手に復讐するために。である。
その看護師は最期にはわからない方法で元夫の不倫相手から殺されてしまうのだが。
本当に恐ろしい話をここまで書けるのか。。。というよりもリアリティーがあるのだ。
私自身、全身麻酔の手術時に意識があったことを先日、自分の主治医に話した。大学を出て数か月の男の子たちが麻酔の量を間違えてパニックになって色んな医師を呼びに行った、そんな事を覚えている。

更には。。。
28歳、研修を終えたばかりの外科医、関目医師の独り言も面白い。大学病院の給与だけでは20代の医師は食べてはいけない。土日にはどこかの病院でバイトをするらしいのだが、救急で夜中に来て、
「喉が痛くて何も食べられない。昨日から熱があるし。明日は休めないから点滴をして欲しい」
の要望の患者に
「なら、昨日来たら良かったのに。2日くらい食べなくても死なないし。冷たいスポーツドリンクでも飲んでおけよ」
と、内心思いながらも、医療費の点数稼ぎにと、点滴と数種類の薬を処方して感謝されるのだ。
近藤誠先生や内海聡先生の本からは「処方したがる医師の責任」と思ってきた私だが、患者にも問題があるのだと改めて思った。救急車が無料である事を幸いに利用。何かあると、たいした怪我や症状でもないのに病院に。これは自己責任であろう。
結局は教授争いが又もや絡むわけだが、准教授から教授になった女医の見事な手術風景はリアリティーがあった。亡くなった看護師の元夫の不倫相手は。。。興味があったらお読みください。

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