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貧困大国ニッポン~読書記録57~

2008年刊。経済学者であり、エコノミストである門倉貴史氏と賃金クライシス取材班による著書。

2008年は、福田康夫首相から麻生太郎首相へと移った年でもある。

この書の構成としては、主にインターネットを通じて、様々な生活苦の人たちにインタビューした内容を元に構成されている。

それらの節約術、特に若い主婦向け雑誌によく掲載されるような類のものには驚くばかりであった。

ネットカフェ住民と呼ばれる人たち。誰も好き好んで、そこを拠点にしたいわけではないのだ。定職に就いていないと部屋も借りられない現実がある。

沖縄に住む人は本土から逃避してきた人も多くいるという。それを「沖縄こもり」と言うらしいが、東京とは違い、仕事もなく賃金も安い。それでも本土とは違う空気に癒されるようだ。

「ワーキングプア」「ネットカフェ難民」が増える背景には、企業が正社員を減らし、非正規雇用者を多く採用、というものがある。他国との競争の為には仕方ないのだ、と、一番は人件費を抑えるのだ。

主婦向け雑誌を開くと、日本の大多数の母たちが、今どのような状況に置かれているかよくわかる。節約術が目白押し。なかなか上がらない夫の年収を受け止め、明るく笑顔で生きていく。そんな姿だ。
諸々の節約術は、雑誌、テレビ等で紹介される際、「エコ」「環境に優しい」というキャッチコピーがついている。だが、そういう大義名分があるから、したくもない節約に意義を見出すことが出来るのかもしれない。さもないと、四六時中、節約のことを考えた我慢に我慢を重ねた生活に耐えられるはずがないだろう。

生活の為に風俗で働く女性の中には、既婚者、シングルマザーなどいる。

正社員と言っても、年収は200万円未満、残業の多さ、などから、結婚を諦めている男性も多い。

格差社会と言われて久しいが、闇職系サイトの存在もある。生活苦の為に、手を出す人が多いが、犯罪をしている意識が薄れていくこと、抜け出せなくなること、などがある。
この章を読みながら思い出したのが、テレビ朝日で2020年5月に放映されたドラマである。
ちびノリダー伊藤淳史演じる、交番勤務の警察官と、かつては敏腕弁護士、今は貧乏暮らしの、寺尾聡演じる弁護士のドラマだ。

伊藤淳史演じる新田巡査は、振込詐欺の受け子を現行犯逮捕。だが、その青年は、病弱な母を抱え、お金に困っていた。そんな時に、「簡単なバイト」と紹介されたのが「受け子」だったのだ。
「受け子」は、いわば、捨て駒。上には悪い人間はいくらでもいる。その頂点にいたのが、不動産会社経営の仮面ライダーアギトの要潤。
最後には、要潤が逮捕され、良かったの結末。


振込詐欺の底辺は、まさに、貧困大国ニッポンの象徴かもしれない。

私が一番納得したのは、現在の日本では再チャレンジがほぼ不可能であるということだ。
夢を追い、だが、才能のなさに、20代後半から30代で定職に就いて結婚、家庭を持つ。これは昭和の時代には出来たことだ。
音楽やお笑いなどで食べていけるのは、ほんの一握り。
50歳にして栄光を掴んだ、錦鯉・長谷川などは、稀なケースだ。

今は、高校、大学を卒業後すぐに正社員にならないと、その後、正社員になれる可能性は少ない。

著者が言われていることに、「最低賃金の見直し」がある。日本は先進国の中で最低レベルらしい。
色々、考えさせる書であった。

尚、インタビュー記事自体の、諸々の話が面白いので、興味のある方は、こちらの朗読を。。。


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