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七十歳死亡法案、可決~読書記録190~

垣谷美雨の作品。


あらすじネタバレを言うと・・・

七十歳死亡法案が可決された。
これにより日本国籍を有する者は誰しも七十歳の誕生日から30日以内に死ななければならなくなった。
例外は皇族だけである。
主人公の宝田東洋子は、この法律が可決されて密かに喜びを感じていた。
というのも55歳の東洋子は、義母の介護に一人で奮闘するも、夫、その姉妹、娘と息子達の手助けは全く受けることができない。
義母は我儘三昧となり、24時間近所にも響く大声で東洋子を呼び、夜中にもブザーで呼び起こされる日々を送っており、孤独感に苛まれるのだが役割はしっかりと努めていた。
夫は58歳で余命12年となり、残りの人生を楽しもうと勝手に早期退職をし、友人と世界旅行へ旅立ってしまう。
夫の姉妹は忙しさを口実に、相続には強い関心を示しながらも、実母の介護には無関心を続けている。
東洋子の娘は自宅を出て一人で暮らし始め、息子は30歳を前にして引き篭もりの日常だ。
流石に東洋子は家族の我儘な考え生き方に不満を抱き、遂には堪忍袋の緒が切れて僅かな現金を持って家を出てしまう。
さて、東洋子とその家族はどのようにして『七十歳死亡法』を迎えるのか⋯。

垣谷さんの作品は、どれもリアリティを感じる。50代以降の人間からしたらであるが。

今は、医療の発達、栄養もよく、闘病、介護の終わりが見えない。それは大きな問題ではないか、と私は個人的に思っている。
あと何年、とわかっていたら介護も楽なのに、とも思う。

物語として読むと、主人公や脇役に腹が立つのだが、冷静に観ると、その辺に普通にある話だ。自分だってその1人だろう。実際、実母と同居しているのは甥っ子夫妻で甥の奥さんに、母の食事など任せ、たまに家に寄るくらいなのだから。

物語として面白いだけでなく、考えることの多い作品であった。

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