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令和を生きるための昭和史入門~読書記録60~

2019年発行。ノンフィクション・保阪正康氏による著。

政治家、文化人、ネットの政治アカウントの方など。。。昭和を語る時に、どうしても右か左かに極端に偏っていると私は思っている。
だから、色々な本を読むわけだが。
この保阪氏の書に関しての率直な感想は、「与党、野党。どちらにも傾いていない。冷静な歴史研究である」というものだ。

「昭和」という時代は、三つに分けることが出来る。
昭和前期:昭和元年から昭和20年9月2日まで(日本が太平洋戦争降伏文書に調印した日)
昭和中期:昭和20年9月2日から昭和27年4月27日まで(サンフランシスコ講和条約が発効される前日。日本の独立前)
昭和後期:昭和27年4月28日から昭和64年の天皇陛下崩御まで

昭和16年12月8日、ハワイ真珠湾攻撃から太平洋戦争が始まった。16年8月からアメリカが日本への石油輸出を禁じ、どうせならまだ石油があるうちに一戦という、計画性のないものだったようだ。

戦争責任を東条英機1人に押し付ける層もいるが、短絡的なものではない。戦時下、便乗本と称して、東条英機礼賛本が多く出され、次第に東条英機の周りにはイエスマンしかいなくなっていったのだ。

和平を主張するリアリストは「国賊」とも呼ばれる時代であった。

吉田茂は戦後になって著した「回想十年」の中で、
「歴史の大きな流れから見れば、日本の本燃の姿ではなくて、ただ一時の変調であったことを知るのである」
と分析している。

太平洋戦争戦時下、軍事指導者たちは、国家を兵舎、国民を兵員とみなし、「一億総特攻」といった幻想ともいうべき言語空間を作りあげ、その中でひたすら自己陶酔にふけったと言うのが現実だった。

平静19年から首相となった福田康夫は、昭和11年生まれ。父・福田赳夫の生家がある群馬県に疎開していた。
福田はこう言っている。
「とにかく戦争というものはバカバカしいものですし、はっきり言って今の日本人には戦争をする資格はないと思う。なぜなら70年前のあの戦争にしても、未だ十分に後始末が終わっていないじゃないですか。そういうことを含めて考えると、今の我々は大いに反省の要ありきということになる」

昭和中期は、アメリカを中心とするGHQの支配下にあった時代であった。
この時に大きな転換が起きたのだ。それまでの表と裏が反対になったような・・・

昭和27年4月。サンフランシスコにおいての講和条約から日本は独立し、経済的発展を遂げていく。池田勇人内閣は「所得倍増計画」をうちだした。
物資があふれ、文化的にも豊かになっていった。
池田内閣時代に、昭和15年に中止となった東京オリンピックが開催され、設備面でも大きな変化をとげた。汲み取り式便所は水洗になり、高速道路、新幹線開通など・・・

この時期、国政としては、自民党の与党政権時代が続いていたが、地方自治体の首長である知事が野党から選出される、という現象も起きていた。昭和40年代、東京都知事であった美濃部亮吉知事は福祉を充実させた。

昭和後期を考える上で、欠かせないのが田中角栄元首相だ。それまでの官僚出身ばかりだった首相と違い、「今太閤」「昭和出世物語」などと、国民の支持を大いに得た。田中角栄の書いた「日本列島改造論」がベストセラーとなった事もある。地方都市を潤わせることであるが、それが「土地本位制」となり、土地の買い占めなどとなるのだった。

高度経済成長も、最終的には自分さえよければよい、というエゴイズムになってしまったのではないか。

田中角栄は、ロッキード裁判で有罪となり、金脈政治で問題となった。総理大臣を辞任してからも、田中角栄によって政界が振り回されていた。

昭和という時代は、大正時代の時代様相や現実を超えようとして一時的に超えたとしても、その後は結局同化したとの言い方が出来るのではないだろうか。明治も大正も全て包み込んでいるかもしれない。

令和になって「右傾化」が言われている。著者は百田尚樹の事を例にあげている。
140文字誠意威厳のTwitterで「アホ」「バカ」と言うこと。
(私としては、百田氏の戦略だと思う。炎上がただただ楽しいのだろう)
安部首相(本が書かれた当時)との関係。

今や、与党も野党も信じられなくなっている時代。。どうなるのか、どうするのか。考えさせる書であった。

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