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ボイスレコーダーで夢日記

夢の記録を取るために、スマホアプリのボイスレコーダーを使って起き抜けにメモを吹き込むことにした。
起きてから時間が経つと夢の記憶が薄れていく。時間が経つほどに、夢の記憶は掌にのせた雪の結晶のように曖昧になっていく。起き抜けなら忘れずにメモが取れるだろうという目論見だ。

昨日の夢は、誰かと「旅行会」について話している夢だった。今はもうすたれてしまった行事で、毎月給料から天引きで旅行会貯金を積み立て、年に一度職場の人たちと旅行に行くというものだ。
昔はそういうのがあって牧歌的だったよね~などと話しながら、じゃぁ希望者だけで行きますかということになる。
夢というのは時間がでたらめに流れるので、次のシーンでは既に旅行先になっている。
誰かの兄という人(他人やがな)と一緒に、小さな家の庭にいて、水の澄んだ池を覗いている。水の中にはいろんな魚がいる。神戸の祖父母の家のイメージなのだが、その家には池はなかった。別のところなのだろう。
水底は砂地になっていて、その中から蛇のように顔を出す生物がいる。チンアナゴのようなものなのだが、これはなんだっけと聞くと、一緒にいる人がこれはアメンボの幼虫だという。絶対違うけど、あまりにも自信を持ってそう言われると、そういうものかと思ってしまう。
今度は大きめの魚が砂の中から現れる。岩石のような形のゴツい頭をしている。彼に聞くと、これはサバの仲間で、あんまりおいしくないという。油で揚げればなんとか食べられるけど、好んで食べるものではないという。というか、食べられるかどうかは聞いてない。
ほかにもいくつも魚が出てきた。亀もいたような気がする。とにかく水が綺麗に澄んでいたのが印象的。小さな家の庭にある池のはずなのに、清流のような煌めきに満ちている。

目が覚めたので、夢の内容をボイスレコーダーに吹き込んでみる。不思議なことに、声に出してみると夢の内容が次から次へと思い出される。しかも鮮明な映像も浮かぶので、夢の記憶が順序立てて整理できる。非常にわかりやすい。
これはいいと思いながら、10分くらい事細かにボイスメモを取った。満足。
後はこれをノートに書き出せばしっかりした夢記録ができるんじゃないか。結構いい思いつきだったと思う。

と。実は、ここまでが夢の話。
この直後に本当に目が覚めた。
もちろん、ボイスレコーダーには何も録音されてない。あんなにしゃべったつもりなのに。
忘れないうちにと思って本当にボイスレコーダーを立ち上げたが、頭の中の言語回路がまだちゃんと覚醒してないので、要領を得ない。夢の中であんなに朗々と記憶を思い出しながらメモしたのに、実際のボイスレコーダーには、「ええと……なんだっけ……。なんか魚がいっぱい……ZZzz.……」という感じ。
しかし、夢の中で記憶の整理をしたおかげで、時間が経っても細部はしっかり覚えていた。ボイスレコーダー自体は何の役にも立たなそうなうめき声しか録音されていないが、記憶の定着には役立ったようだ。

夢は記憶の再構成であるという説があるが、夢の中で夢の記憶を再構成するというのは初めての体験だった。夢を夢として客観視しながら、自分自身はまだ夢の中にいるという。まさにインセプション。
しかし、夢と現実の境界が徐々に曖昧になりそうな恐怖心がなくもない。

やっぱりこれで一本小説書けそうな気がしてきた(笑)。

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