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皮膚疾患のとらえ方(1)/合宿のテーマより 

講師 小林詔司 / 文責 積聚会通信編集部

『積聚会通信』No.5 1998年3月号 掲載

2月8日・9日 、サンライズ九十九里国民宿舎で積聚会合宿がもたれたが、そこでの講義の内容を少し補充して何回かに分けてここに報告する。
 
テーマは、皮膚疾患を積聚治療の観点からどのようにとらえるか、である。
 
従来のように皮虜疾患を病名で分類するのではなく、気と陰陽の観点からそれを把握したならばどのようになるか、という試みである。
 
病名だけで皮膚疾患を分類したのでは、そこに応用する鍼灸治療は西洋的なものになってしまい、気と陰陽観に基づく積聚治療の特徴が生かされないと考えるからである。
 
1.皮膚の観察
皮膚の疾患を知るには、先ず皮膚の観察から始める。
 
 1)  観察の時に知っていなければならない基礎的内容は、患者さんの年齢、性別、職業、民族性や患部の生理的状態である。

  ①  年齢による区別は、乳幼児の皮膚、成人の皮膚、老人の皮膚を比較すれば、その違いは明白である。
 年を取って気の充実度が低下するにしたがい、皮膚には緩み皺ができるようになる。若い人でも皮膚に緩みが出ていたり鍼が簡単に入ってしまうなどのことがあればその患者さんの気の究実度は低下しているとみたり、逆に歳を取っているのに肌に艶があったり弾力性があるようであれば、気の密度は高いと評価する。

  ②  男性と女性でも皮膚の性状は異なる。これはどちらの気の充実性が強いか弱いということではなく、肌理(きめ)の細かさが男女の特徴を表しているということである。
 ただ男性でも女性的な肌の人がいたり逆のことも経験するから、観念的に外観だけで男女を分けるのは禁物である。
 一般に女性的な肌の方、つまり陰的な肌の方が鍼を受け入れやすい傾向にある。これは体の状態の変化を読む指標の一つになる。

  ③ 職業によっても肌の状態は違い、単純にいえば肉体労を専らとする人と毎日デスクワークをしている精神的な労働を主とする人とでは肌の性状は違う。
 一般に肉体労働者の肌は体形からいって精神労働者より気の充実度は高いといえるが、現代社会人の生活は複雑で単純に両者を分けることはできない。精神労働に従事する人でもスポーツをやっていたり肉体労働をしていても読書が非常に好きであったりで、現代人は多様性に富んでいるといえる。それだけに気のあり方は一様ではない。

  ④ 最近では治療室にも外国の人がよくみえる。改めて国によって人の骨格はもちろん肌のあり方もかなり違うことを感じさせられる。
 概して西洋系の人の方が肌理が粗く、東洋系の人の方が細かい肌理をしているようである。

  ⑤ またひとりの人の皮膚を見ても、体の部位によってその状態は異なる。
 典型的なのは、手の平・足の裏と手足の甲の違いである。
 また手の前面と後面、下腿の内側と外側、腹胸部と背部など、肌理が違っている。肌理の細かいのは手掌・足底、手の前面、下腿の内側、腹胸部等であるが、これらを陰陽観でいえば陰的な要素を秘めている部位ということになる。
 このように生理的な面からみても皮膚の状態はまちまちで、病的な状態なのか生理的なのか時々分かりにくいことを経験する。