10年前の誹謗中傷対策と改正プロバイダー責任制限法

 これはエッセイというものなので、自分の経験から「そうじゃないんかね?」と思ったことを書いた文書なので、そういう風に読んでください。

 想定読者は大学生くらいなので、かなり冗長に書いています。

改正プロバイダー責任制限法

 本日、プロバイダー責任制限法の改正案が可決し、誹謗中傷投稿をした人を特定しやすくなったとのこと。

 誹謗中傷投稿をした人を特定しやすくなったこと自体はまあ良いのか悪いのか、これから訴訟合戦が多発していくのだろうと思うが、個人的にはそもそも法改正以前に、SNS事業者や掲示板運営者が現行法に基づいてもっとできるとが多いのではないかと思う。むしろ、ある分野では10年前の方が今より劣化しているのではないか。そんな気がするので今回これを書いてみようという気になった。

10年前のにちゃんねる

 にちゃんねるとは、大昔からあるインターネット掲示板であって、今は5chと呼ばれるものである。で、実は自分は10年前はにちゃんねるに結構どっぷりハマっていた。俗にいうVipperだったのだが、そのことについて書こうと思う。

 にちゃんねるは、掲示板である。匿名で誰でも書き込むことができる。面白いところではあるけれど、危険なところでもあった。信用できる情報が書き込まれている場所とは到底見なされていなかったが、どんな所であっただろうか。

 10年前にタイムスリップして、当時の2chを覗いてみよう。

 まず、掲示板はいろいろな板(いた)に分かれているので、自分の興味のある掲示板に行けばいいことになる。まあ、ネットは書き言葉なので自分はずっと板の発音を「ばん」だと思ってたがそんなことはどうでもいい。板の中にはいろいろなスレッドと呼ばれるものがあり、板の中でその表題に関する話が書き込まれる場所がある。書き込みは順番になっているのだが、一つのスレッドは1000件までしか書き込めないので1000まで行ったら次のスレッドを誰かが立てることとなる。

 実際のところ、にちゃんねるは見るだけの人がかなりいるようで、自分も結構見てるだけの場合が多かった記憶がある。とはいえ、なにか面白いことや有益な情報、質問があればスレッドに書き込むこととなるのだが・・・

 実は、にちゃんねるは「かきこめない」掲示板であった。スレッドに投稿したい内容を書きこむ。メール欄は「sage」、そして、「書き込み」ボタンを押す。

 すると、大抵、書き込めない。「規制されています」と出る。

書き込めない掲示板

 「規制されています」

 規制とは何か。2chのどこかで、どっかのアホが「殺害予告」や「個人情報晒し」「マルチコピペ」などの荒らし行為を行った場合に行われるものである。マルチコピペとは、宣伝目的で同じ内容の書き込みを様々なスレッドや板で行うこと。エロサイト業者やネトウヨが政治目的でコピペを貼り付けるケースが多かったので、ネトウヨは嫌われていた。

 当然、自分は上記のようなことは行っていない。そもそも最初に書き込もうとしてもこのような表示が出る。特に、携帯電話(昔はガラケーで2chの読み書きが一応できた)から書き込むのはほとんど不可能に近かった。

 どういうことか。

リアルとネットの距離

 インターネットにつなぐとき、誰でもプロバイダーと契約することとなる。携帯回線の場合は、大抵はauやらdocomoやらsoftbankとなる。すると、プロバイダーがipアドレスというものを貸し出してくれるのだが、ipアドレスからリモートホストというものを調べることができる。

 リモートホストというのは、下記のwikipediaをみればわかるが、プロバイダー名がわかるものとなっている。

 もし、2chに書き込むと、2chにはipアドレスが残り、そこからリモートホストというものを確認することでどこのプロバイダーから書き込んだのかがわかるのである。という事は、上記のような荒らし行為をした人間は特定することが可能なのである。が、ここに一つ大きな欠点がある。

 上記のipアドレスであるが、実はプロバイダーによって毎日変わるのである。一人が同じipアドレスをずっと使うわけではない。一日くらいで変わるプロバイダーも存在する。すると、荒らし行為をしたipだけ規制しても一日たてばipが変わるので意味がない。

 しかし、リモートホストのほうは変わらない。誰かはわからないが、ある一定のリモートホストをすべて規制すれば荒らし行為は止まることとなる。するとどうなるか。これの巻き添えになるということであるw

 ちなみに、wikipediaにある通り、ocn等は都道府県別でリモートホストを分けているので、同じ都道府県のocnの人間が全員巻き添えになる羽目になるw が、odnのように分けてない場合は全国のodn利用者が全員巻き添えになるww そして、携帯電話会社は大抵は都道府県で分けていないので後者の全員巻き添え型となってしまい、しかも理由は不明だが利用者が多いからか、大抵いつも規制が行われており、書き込もうとすると大抵失敗する羽目になる。

 たいていの人はそこで諦めるのだが、自分は納得がいかない。すると、2chの規制情報板というところの自分のプロバイダーのスレッドを見に行く。するとどこでどういう馬鹿が荒らしをしたのかがわかるので「荒らし氏ね」と言いながら規制解除を待つこととなる。必要があれば書き込み代行スレッドに代わりに書いてもらうw(ごく一部に規制中でも書き込めるところがあった)

相手がだれかわからなくてもできる荒らし対策

 では、2chの方ではいったい何が行われているのか。規制人というのがいて、荒らしがあったら同じリモートホストの人間を全員規制する。その後の話である。

 どうも、規制人はプロバイダーにipアドレスと荒らしの証拠を書いたものをプロバイダーにメールで送っていたらしい。すると、プロバイダーが荒らしをした人間に何らかの制裁を与えて、それが規制人に報告されると、規制解除となる。

 プロバイダーが荒らしに何をしたのか、そもそも荒らしが誰なのかは一切わからない(おそらく、規制人にも名前は行ってないのではないか)が、それでも荒らしが止む場合が多かったようである。とはいえ、荒らすアホは大量にいるので、結局しょっちゅう規制が入ることとなる。

 とはいえ、この無情な連帯責任から淡壺と呼ばれた日本社会の底辺であるにちゃんねらーでも、安易に他人様に「死ね」と書き込むのはまずいことくらいは学ぶこととなり、「死ね」が「氏ね」か「回線切って手首も切れ」になるくらいの教育効果を発揮することとなる。

ひるがえって現在

 ひるがえって、現在のTwitterを見てみる。今でも不思議に思うのだが、Twitterって「~死ね」と直接書き込んでも全然平気で規制も何もされないのはおかしいのではないか。10年前のにちゃんねるは殺害予告や爆破予告がかなりあったが、そのたびにテレビ番組の合間の5分ニュースに「ネットで爆破予告で逮捕」というニュースが出てて「ネットは怖いところだ」となっていたはずなのだが。

 Twitterは当時の2chよりひどいような中傷がかなり平気で流れてくる一方、全く規制されないどころかむしろトレンド欄で自分から積極的に拡散までしている。当時の2chにはそんなものはなかったし、アフリエイトブログがそのようなことをしていたが、アフィブログに寄生された板はすぐ衰退していくことになるので嫌われていた。

 Twitter社やFacebook社は外資系の企業だから日本のこのような事情は知らないのかもしれないが、本来はせめて2chの管理人レベルで、単にアカウントを凍結させるだけでなく、プロバイダー経由で直接連絡してもらうことで、ネットというのは何でも書き込んでいいところではなく、プロバイダーから間接的に「叱ってもらう」ことで今みたいな基地外だらけのネット民に多少教育をしてもらうだけで、ずいぶん状況は改善すると確信しているのだがどうであろうか?

 こんな、直接開示で民事訴訟になる前に、最近のSNS運営会社はもっとするべき方策があるのではないだろうか。

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