#35 平民宰相原敬はなぜ殺害されたのか?

シベリア出兵により起きた米騒動の混乱の中、内閣総理大臣になった原敬(はらたかし)は、1921年(大正10年)に国鉄職員だった中岡良一(こんいち)によって東京駅で刺殺された。日本で現職の総理大臣が殺害されたのはこれが初めてだった。首相経験者では、韓国統監府の初代統監だった伊藤博文が中国のハルビン駅で韓国の青年安重根により殺害されている。

日本初の本格的な政党内閣を組織し、平民宰相と呼ばれた原敬はなぜ殺害されたのか。職場の上司が「今の日本には武士道精神が失われた。(武士は)腹を切ると言うが、実際に腹を切った例はない」と話したことに対し、中岡が「腹」と「原」を勘違いして「私が原を斬ってみせる」と決意したという逸話があるが、定かではない。他にも、財閥中心の政治への批判、普通選挙を否定されたこと、相次ぐ汚職事件などが原因とされているが、どれも定かではない。現職の首相が殺害された事件にも関わらず、裁判が迅速に行われたこと、判決が無期懲役で、後に中岡は恩赦を受けて釈放されたことなどから、裏に大物政治家がいたのではないかという黒幕説もある。


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