#7 ノルマントン号が描かれていないノルマントン号事件の風刺画

フランス人画家ビゴーが描いた誰もが知るノルマントン号事件の風刺画。
実は描かれているのはノルマントン号ではない。
絵のタイトルは何と「メンザレ号の救助」。メンザレ号はフランスの船である。沖に沈みかけている船にはフランス国旗が掲げられている。ビゴーは1887年に起きたメンザレ号の沈没事件を描くことでノルマントン号事件におけるイギリスの態度を批判した。ややこしい。

また、絵の下には次の文字が書かれている。
「Combien avez vous de dollars sur vous?」(フランス語)
「何ドル持っていますか?」(訳)
「Dites vite」(フランス語)
「早く返事を」(訳)
「Time is money」(英語)
「時は金なり」(訳)
・・・船長や船員の表情もさることながら、文字の意味があると風刺画の意味が良くわかる。

この事件を機に日本では条約改正を求めるムードが高まっていくのだが、ビゴーは少し違った意味でイギリスを批判していたらしい。

さて,ビゴーという人はフランス人で,条約改正はもっとゆっくりと対応するべきだという意見を持っていました。フランスが持っている有利な権利は,簡単には日本に返さない方がよいという立場なのです。

よって,ビゴーは,ノルマント号事件でのイギリスの対応の悪さによって,日本人の条約改正の意識を高めてしまったことについて,大変にがにがしく思っていました。そこで,ノルマントン号事件の翌年,フランス郵船メンザレ号が上海で遭難(そうなん)したニュースを知ると,それを利用して前年のイギリスの対応を皮肉った,条約改正反対の風刺画をえがいたのです。

https://www.hamajima.co.jp/rekishi/qa/a20.html

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【参考】


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