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photo#00 : 植物撮影機材について

 現在、主に植物の撮影に使用している撮影機材についての覚え書き。

 撮影機材について人に説明しようとするとどうしても長く散漫になってしまうので、ここに手短にまとめておく。とはいえ歴は浅いのでそんなに大した写真は撮っていないし、機材にしてもそんなに大した話にはならない。

参考書籍

 自分自身の機材の話の前に参考書籍を挙げておく。
 花の撮影に関する本はいろいろあるが、いがりまさし『野の花写真 撮影のテクニックと実践』が参考になる。基本的な機材から具体的な状況別の撮り方、豊富な作例まであり非常に優れている。意識的に植物を撮るなら一度は目を通しておくとよい。

活動スタンス

 低山の登山を基本としている。離島も好んでたまに行く。高山はまれに行く程度。車はないので利用しない。機材を担いで登る以上、重量は軽いに越したことはない。催しなどの折には植物園も訪れるし、栽培もしているので自宅でも撮る。
 基本的には植物を撮る。どちらかといえば樹木よりは草本が主体であり、興味の中心はラン科植物だが、一時期は菌従属栄養植物を探し歩いていた。シダやコケの知識は少ない。特徴的なキノコは一応撮って図鑑で調べたりする。変形菌も興味があるがまだ2種しか見ない。低地では鳥を撮ることもあるが、注意不足なのか山で撮れる状況にあまり出会わない。低山中心なのであまり風景は撮らない。

機材構成

  1. 本体:SONY α6700

  2. 望遠マクロ:Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical

  3. 標準ズーム:SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary

  4. 望遠ズーム:SONY SEL70350G E 70-350mm F4.5-6.3 G OSS

 SONY機のため、レンズはいずれもEマウント。軽量性や価格でAPS-C機。フルサイズ機への乗り換えも一時期検討したが当面不要と結論している。近いスペックのフルサイズ機ならα7Cおよびα7C2が視野に入るが、超広角や暗所耐性、強いボケなどを求めないので動機が薄い。

 基本的には望遠マクロを常用し、状況次第で標準ズームや望遠ズームを使用する。現状では標準ズームの18mmで不足を感じることはまずないので広角は捨てている(が、持てばまた意見も変わるのかもしれない)。

1. SONY α6700

 2023年7月発売、SONYのAPS-C機ではフラグシップ的な存在。
 重さ493g、手ぶれ補正は5.0段。本体の手ぶれ補正機能は非常に重要なのだが、α6400などの初心者向け機種にはないので注意が必要。
 AIオートフォーカスで鳥や昆虫を自動認識する。植物を撮る分には特に関係はないが、それらをついでに撮る分には有用。
 一方でMFでの撮影中心だと必要な機能も変わってくるので、ボタン割り当てのカスタマイズ性が非常に高いのが便利。動画性能も高いはずだが個人的にはあまり生かせていない。などとあれこれ書いたところで、他社の同クラス機を使ったことがないので他社と比較してどうこうは言えない。
 以前は同社のNEX-5Tを使用していたが、これは2013年の古い機種でさすがに今触ると難が多い。ただ213gときわめて小型軽量なので今でも愛好家は存在するらしい。

2. Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical

 名前にはマクロがつくが実際は最大撮影倍率1:2(0.5倍)のハーフマクロレンズ。フルサイズ用65mmなのでおそらくぎりぎり標準レンズの範疇だが、センサーサイズがAPS-Cの機種で使用するとフルサイズ基準で1.5倍の焦点距離相当、つまり約97㎜の中望遠として扱える。
 マニュアルレンズなのでAFは使えない。とはいえ、植物を撮る上ではさほど問題にならない。もちろんAFがあるに越したことはないが、AFで焦点を合わせたとしてもどうせ多くの場合はマニュアル調整が必要になるので、相対的に影響は小さい。
 大変によく解像するレンズで、素人目にもこれはちょっと違うのではという映り方をする。欠点は輪線ボケ、非常に強い光によるボケの中に同心円状の模様が出ることがあるというくらいだが、植物撮影で問題となることはおそらく少ない。重量625gは望遠マクロとしてはまあ普通か。

Paphiopedilum Rydeen, 植物園にて.
SONY α6700, Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical
SONY α6700, Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical

SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary

 290gと非常に軽量コンパクトな標準ズーム。普段使いに最適だが、これ一本で植物もかなり撮れる。極端に小さいものや遠いものでなければぜんぜん撮れる。自分の撮り方では50mmは少し距離が足りない印象もあって前述の65mmを多用してはいるが、広角側の絵の自由度があるので非常に有用。
 これ一本でも、というのは最大撮影倍率1:2.8という性能によるところも大きい。APC-Sのセンサー長辺が大体24mmだから、24×2.8=67mm。最短撮影距離では横幅67㎜を画面いっぱいに撮れるということになる。ハーフマクロだと1:2で48mm、通常の1倍マクロだと24mm幅になる。
 だから例えば直径10mmの花を撮る場合、マクロだと24mm幅の画面の半分近くを占めて大写しにできる。ハーフマクロなら数輪入れれば絵になるだろう。1:2.8だともう一段小さくなる。ただ実際にはこの手のレンズで大きく撮ろうとすると被写体がレンズフードにぶつかる位置にくるので、フードを外す必要があるし、外しても近すぎて被写体がレンズの影に入ってしまう可能性もある。したがって数値通りの性能を完全に発揮できる状況は限定的ではあるが、多少落ちても有効な性能だといえる。
 レンズの映りは十分にシャープ。ズームの使い勝手、F2.8通しの明るさ、軽量性、価格、いろいろ調べたが総合的に見てこれに類する性能のものはないように思う。そのせいか、発売数年経つというのにここしばらく公式に供給不足のお知らせが出ている。欠点は白いものを撮る際などにふちの色にじみ(軸上色収差?)が気になることがあるくらいか。

コバイケイソウ. SONY NEX-5T, SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary
※ヘッダ画像のタカネツメクサも同機材
SONY NEX-5T, SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary

SONY SEL70350G E 70-350mm F4.5-6.3 G OSS

 望遠ズーム。70-350mmを1.5倍して105-525mm相当だから超望遠ということになるのかもしれない。それで625gだから軽量な望遠レンズではある。
 当然ながら樹上や鳥を撮るには非常に有用。最短撮影距離が遠いので足元を撮れず、ずっと提げて歩くにはあまり向かない。サイズや重心の関係で提げづらいというのもある。
 F4.5-6.3とやや暗いので扱いづらいところはあるが、このクラスの望遠ズームとしては普通か。映りは十分良いと思うが、まだ癖を理解するほど使い込んでいない。

ナガボノワレモコウ. SONY α6700, SONY SEL70350G E 70-350mm F4.5-6.3 G OSS
ヒマラヤトキワサンザシの実を食べるメジロ.
SONY α6700, SONY SEL70350G E 70-350mm F4.5-6.3 G OSS

以上、本体とレンズ3本の合計重量は2033g、約2kgとなっている。

代替構成

望遠マクロ

 最近になってフォクトレンダー65㎜を導入するまではSIGMA 70mm F2.8 DG MACRO | Artを使用していた。価格にして前者のおよそ半値強と手頃だが、これも非常に良く映る。また等倍マクロ、AF対応という利点がある。ただしAFは遅くて音を立てるのであまり期待はしないほうがよい。

アカガシ? 植物園にて. SONY NEX-5T, SIGMA 70mm F2.8 DG MACRO | Art
ベニシュスラン. SONY α6700, SIGMA 70mm F2.8 DG MACRO | Art

 もっと樹上を撮ることが多いとか、望遠を使って絵的に工夫をするとかであれば、110mm前後の望遠マクロ(同様にフォクトレンダーやシグマなどにある)を使用することも考えられる。
 逆に焦点距離の短いマクロは扱いづらい。30mmの等倍マクロが1本手元にある。SONY E 30mm F3.5 Macro。安価、きわめて軽量(138g)、F3.5とやや暗くて映りは並、最短撮影距離はレンズぎりぎり。一応マクロや予備の標準単焦点として役立ったことはあるし、画角的な意義もあるとは思うがあまりおすすめはしない。

コンパクトデジカメの併用

 通常の撮影はハーフマクロで間に合うし、必要なら等倍マクロを使えばよいのだが、軽量性や被写界深度の問題なども考えるとマクロ機能付きのコンデジを併用する利点はある。その際の具体的な撮影手法については参考書籍に詳しい。
 同様に望遠も高倍率のコンデジを併用したほうが手軽と言えるが、APS-Cだと望遠レンズも軽量なのでフルサイズの場合に比べると利点は小さいかもしれない。

マクロマクロと書いてしまったけど

 そもそもマクロがそこまで必須かというとそうでもない。極小の花や変形菌のようなミリ単位のものを撮るのでなければハーフマクロや最大撮影倍率1:2.8とかでだいたい用は足りる。結局は当然ながら何を撮るか次第だと思う。

何も分けない、何も足さない

 高倍率望遠レンズ一本で済ませる考え方もある。
 TAMRON 18-300mm F/3.5-6.3 Di III-A VC VXDなど(など?)。望遠なので明るさはともかく広角から超望遠まで、軽量620g、お値段お手頃、しかもハーフマクロまで可能。スペックがかなりどうかしているのだが、店頭で少し触ったことがあるくらいで実性能までは知らない。レビューを見るとシャープな映りに見えるとともに、たまに聞くタムロンのアンバー寄りの色合いを感じる。
 なお、これも含めてEマウントレンズ全般の映りについてはフォトヨドバシが非常によくまとまっていて参考になる。主要メーカーのものはほぼ揃っているが、SIGMAの70mmマクロのようにたまに抜けているものもある。

マウント変換

 未知。たぶん沼。
 おそらく無数に手があるのだろうが、そこまで考えたくない。考えている暇があったら撮っていたほうがよいと思って考えない。

その他の機材:三脚、あるいは一脚

 当然ながら三脚が欲しくなる状況はある。
 安定性のある堅牢な三脚は山に持っていくには重い。軽量な三脚はそのぶん安定性が悪い。耐荷重の関係上、軽量な機材なら比較的軽量な三脚で済むと言えなくもないが、かといってそう簡単でもない。例えばナショナルジオグラフィック名義で出回っている500g程度の軽量三脚が手元にある。このサイズでは最軽量に近いのではないかと思うが、これはぎくしゃくした雲台の操作性が非常に悪くて閉口した。
 性能がどうあれ、三脚を持って行ったところで結局使わない日も多い。かようにいろいろ面倒なので、最近は落とし所として一脚を用意している。といっても専用の一脚ではなくて、トレッキングポールの頭にクランプ雲台をかませるというだけのもの。トレッキングポールの形状にもよるが案外安定する。どうせポールは持っているので、クランプ雲台をひとつ荷物に入れておくとよい。
 ちなみに柄を外すとネジが出てきて一脚として使えるトレッキングポールをモンベルが出していたはずだが、実物は見ていない。

シンプルな機材構成

 2024年3月現在、Eマウント環境でとりあえずゼロから過不足のない植物撮影機材を安価に組むとしたら、という問題。
 中古のα6600(約10万)と前述のタムロン10-300mm(新品約7.5万)でしめて17.5万くらい、そこに強化したい領域のレンズを後から足していく、というのがシンプルではあるのかなと思う。とはいえ実際にはどちらも自分で使い込んでいないので何とも言えない。具体的にどういったものを撮るか、他にも撮るものがあるかなどの条件にもよるだろうし、詳しい人はもっと良い解を持っているかもしれない。


付記

 これを書いたのは、これまでコンデジを使っていた知人が買い替えを考えているというのであれこれ整理して検討するためだったのだが、その話の際にシンプルな機材構成案のことをちょろっと漏らしてしまっていた。書き終える段になってからまた話をしたところ、目前に迫った大きな旅のために即座にその通り一式揃えたと聞いて思わずよろめいた。きちんと使ってないものを安易に人に薦めてはいけない。
 ただ、実際に撮ってきた木々の写真を見ると大変に素晴らしかったので安心した。わたしなんかより断然に上手い。機材ももちろんあるけれど、やっぱり何より大切なのはつぶさに対象を見ていることであって、つまりは愛なのだろうと思う。

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