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本会議:2019年度税制改正・地方税等 質疑(重徳和彦2019/02/15)

地方税制改正・趣旨説明に対する質疑(衆議院本会議)
 2019年度地方財政計画
 地方税法等の一部を改正する法律案
 特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律案
 森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律案
 地方交付税法等の一部を改正する法律案

○重徳和彦議員 社会保障を立て直す国民会議の重徳和彦です。連日登壇の機会をいただき、ありがとうございます。
【森林環境税(1)立法趣旨】
 我が国は国土の7割を森林が占めており、日本人は古来より山の神々をあがめ、畏敬の念を抱きながら、山林、川、里、そして海へと連なる自然の恵みを享受し、木材を燃料や建材に使いながら農耕を営み、国土の隅々まで村落を発展させてきました。森林は日本の成り立ちそのものです。森林資源を適切に管理し利用するのは日本人の英知そのものであります。
 しかし、戦後の経済成長に伴う人口移動と都市型のライフスタイルの定着に伴い、私たちはそうした成り立ちや国土を守り継ぐ重要性を忘れつつあるのではないかと危惧しております。
 森林環境税は、森林資源管理の財源であるだけでなく、税を通じて都市住民も含む全ての国民に森林の恩恵と国土の保全への理解を広げるものであり、日本の国益に資する重要な施策だと考えますが、安倍総理の認識を伺います。
【外国資本等による土地取得対策】
 国土の保全といえば、我が国の土地所有の現状も危惧されます。
 我が国の国境離島や北海道の過疎地、山林、農地、水源地などが外国資本に買収されています。国家の基本である国土に係る権利を自由に外国人や外国資本に委ねることを容認し続けざるを得ない原因は、法律の不備と、長年積み重ねてきた各種の国際協定における土地取得に関する内国民待遇義務にあると言われています。
 このままでは、国防はもちろん、食料や水資源といった日本人の生存にもかかわる安全保障上の致命的な問題になりかねません。法的な課題を乗り越え、国際交渉においても強い意思を持って取り組む必要があります。この問題に対する安倍総理の認識をお尋ねいたします。
【森林環境税(2)導入時期】
 冒頭に申し上げたとおり、森林環境税は我が国の国益に資する重要な制度と認識していますが、その制度設計については幾つか疑問点や確認しておかなければならない点があります。
 まず、森林環境税の導入時期についてです。
 この4月から市町村による新たな森林経営管理制度が始まります。本来、森林環境税はこの制度とセットでスタートさせ国民の皆様に受益と負担の納得感ある制度とすべきなのに、何の関係もない個人住民税均等割1000円上乗せの終了時期まで5年待ち、その間は税収を前借りする形で財源調達する方式をとることには疑問を感じます。余計な金利もかかるでしょう。
 国民の理解をいただき、少しでも早く森林環境税をスタートさせるのが筋ではないでしょうか。安倍総理の見解を問います。
【森林環境税(3)徴収方法】
 次に、森林環境税の徴収方法についてお尋ねします。
 国税を市町村が徴収する仕組みをとる税目は、森林環境税と、同じく本議題に挙がっている特別法人事業税の二つだけです。税務上の効率性は上がるかもしれませんが、納税者にとって納税先が不分明となります。
 このように国税を国にかわって市町村が徴収することを、どのように合理的に説明するのですか。お答えください。
【森林環境税(4)交付基準】
 次に、森林環境税の交付基準についてお尋ねします。
 森林環境税の市区町村への交付基準は、私有林人工林面積50%、林業就業者数20%のほか、人口30%とされています。このため、例えば東京23区の森林はゼロですが、人口が927万人もありますので、試算したところ計3億6000万円ほど交付されることになります。私の地元、森林が地域の6割を占め私有林人工林が1万2000ヘクタールの愛知県岡崎市は3200万円ほどになり、人口90万人の世田谷区は3400万円となり、こちらのほうが多くなる計算になります。
 今回の森林環境税は都市住民にも森林保全へのご負担を理解いただくものであり、地元への財源の還元をもって理解を得るものではないはずです。だからこそ地方税でなく国税と位置づけているのでしょう。人口割を30%とする趣旨をご説明ください。
【森林環境税(5)使途】
 次に、森林環境税の使途についてお尋ねします。
 川下の都市部の自治体であっても、森林環境税の使途は森林整備を目的とする事業に充てられることになります。川上の木材供給地域からすれば都市部で木材利用が促進され販路が拡大することは重要なことですが、県と比べてエリアの狭い市区町村が川上・川下でうまく連携できるか心配です。
 政策目的に沿った使途をどう担保するのでしょうか。また、外国産の木材利用に充てることは明確に禁ずるべきではないですか。答弁をお願いします。
【森林環境税(6)地方交付税との関係】
 また、森林環境税は市町村譲与税として各市町村に交付されますが、譲与税は一般財源であっても、森林経営管理法による新たな財政需要に充てるものであって、譲与税が入ってきてもその分地方交付税が減らされることにはならないと考えてよろしいか、確認を求めます。
【ふるさと納税 「地場産品」の範囲】
 次に、ふるさと納税について質問します。
 今回の改正により、過度に高額な返礼品競争を避けるため、返礼品は返礼割合を3割以下とし、地場産品とすることが要件とされます。私は、今回の要件厳格化を通じ、ふるさと納税の本来の制度目的に合致した地域の創意工夫が生まれることを期待しています。
 今後はどこでも使える単なる金券は返礼品として認められなくなりますが、例えば当該地元の地場産品購入に限定した地域通貨や当該地元のおもてなしを含む体験型周遊ツアーの旅行券などは返礼割合が3割以下であれば認められるべきと考えますが、具体的なルール運用をどのように検討しているのでしょうか。
【地方法人課税による偏在是正措置】
 最後に、地方法人課税による新たな偏在是正措置について質問します。
 今回の改正により、法人事業税の3割を特別法人事業税へと国税化し、国が一旦吸い上げて、県内総生産の分布に合うように配分するルールとなります。
 企業の本社機能が都内に集中している上に、企業組織の分社化や電子商取引の進展等により地方法人税収の東京一極集中は強まる傾向にあり、地方が企業を誘致しても税収がなかなか増額しないという背景はわかりますが、地方税を国税化して国が再分配するやり方は、いかにも中央集権的です。
 現行の分割基準を変更し、例えば小売については利益でなく売上に着目した基準にするとか、IT企業へのデジタル国際課税の議論を参考に都道府県ごとのIPアドレス利用や付加価値を積算するなど、新たな課税の仕組みを検討してはどうでしょうか。
 また、法人事業税の3割を恒久的に国税とするならば、これを特別法人事業税としてではなく正規の国税の法人税とし、その分、消費税を地方税減とする、税源交換を進めるべきではないでしょうか。地方税源の強化こそ地方自治の体制強化につながります。総理の見解を伺います。
 以上で質問を終わります。

○安倍晋三内閣総理大臣 重徳和彦議員にお答えいたします。
【森林環境税(1)立法趣旨】
 森林環境税についてお尋ねがありました。
 森林は、地球温暖化防止、国土の保全や水源の涵養などの公益的機能を有しており、国民一人ひとりがその恩恵を受けています。豊かな森林を次世代へ引き継いでいくことは、我々の使命です。森林環境税は、こうした森林の有する公益的機能の重要性に鑑み、地方団体が実施する森林整備等に必要な財源を安定的に確保する観点から創設するものであります。
 地方団体が国民の皆様にご負担いただいた森林環境税を有効に活用し、喫緊の課題である森林の整備を着実に進めることを通じ、国民の森林に対する理解がより一層高まることを期待しています。
【外国資本等による土地取得対策】
 外国資本による土地取得についてお尋ねがありました。
 政府の最も重要な責務は、国民の命と平和な暮らしを守り抜くことです。このことは、我が国の土地、食料や水資源にかかわる政策を考える際にも、また国際交渉に臨む際にも、当然の前提であります。
 また、国境離島や防衛施設周辺等における外国人や外国資本による土地の取得に関しては国家安全保障にかかわる重要な問題と認識しており、安倍政権において我が国として初めて策定した国家安全保障戦略にも明記し、現在、土地所有の状況について計画的に調査を行っています。
 同時に、水源の保全等の観点から、森林所有者の異動の状況についても把握を行っています。
 国会においても、さきの臨時国会には議員立法として国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等に関する法律案が提出されたものと承知しています。
 政府としては、国会におけるご議論の状況も注視しながら、関係省庁間の連携を図りつつ、制限の必要性や、個人の財産権の保護の観点、国際約束との整合性等の諸事情を総合的に勘案した上で、必要な施策について検討を行っていく考えです。
【森林環境税(2)導入時期】
 森林環境税の課税時期についてお尋ねがありました。
 森林は地球温暖化防止や災害防止等の公益的機能を有し、広く国民一人ひとりが恩恵を受けています。このため、その整備等に必要な財源となる森林環境税は国民に広く均等にご負担いただくことにしています。
 一方、課税を開始する時期については、国民の負担感に十分配慮する必要があります。
 したがって、本法案によって森林環境税の創設に国民の理解をお願いしつつも、開始時期については全国の地方団体による防災施策の財源を確保するための個人住民税均等割の引き上げ措置が終了する時期も考慮して設定しているところです。
【地方法人課税による偏在是正措置】
 地方法人課税と消費税の税源交換と、地方税源の強化についてお尋ねがありました。
 消費税は社会保障・税一体改革において、引き上げ分の税収について全額社会保障財源化されることとともに、年金・医療・介護・子育てといった社会保障における役割分担に応じて国と地方に配分することとされました。消費税がこのように国・地方それぞれの社会保障の財源とされていることを踏まえれば、地方法人課税と消費税の税源交換というご提案については慎重な検討が必要と考えております。
 もとより地方自治の強化のためにはみずからの財源である地方税によって財政運営を行うことが理想であり、地方税の充実・確保を図りつつ、偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に取り組むことが重要だと考えています。
 残余の質問につきましては関係大臣から答弁させます。

○石田真敏総務大臣 重徳議員にお答えをいたします。
【森林環境税(3)徴収方法】
 まず、森林環境税を市町村が徴収することについてお尋ねがありました。
 森林環境譲与税の性格は、その原資となる森林環境税の全額が交付税及び譲与税配付金特別会計に直入され地方団体に譲与される仕組みであり、実質的な地方税源と評価し得るものであります。
 また、森林環境税につきましては、国民の皆さんに広く一定の負担を求める観点から、個人住民税均等割の枠組みを活用することとしております。
 したがって森林環境税につきましては地方団体に納税者に対する周知や徴収を主体的に担っていただくことが適切と考えております。
 なお、現行の地方法人特別税及び今般法案を提出させていただいた特別法人事業税についても、都道府県が法人事業税と合わせて賦課徴収を行うこととしています。
【森林環境税(4)交付基準】
 次に、森林環境税の譲与基準についてお尋ねがありました。
 森林環境税につきましては、都市部の住民を含めた国民全体の理解を得ていく必要があることから、木材利用の促進や普及啓発を使途の対象としています。
 また、都市部の地方団体が間伐材等の木材利用を進めることで、山間部における森林整備から都市部における木材利用までの間の好循環が生まれることが期待されます。
 さらに、多くの府県等で実施されている森林環境の保全等を目的とした超過課税について、平均すればおおむね3割程度を森林整備以外の事業に充てているところであります。
 こうしたことを総合的に勘案し、森林環境譲与税のうち3割を、木材利用の促進や普及啓発等に相関する指標である人口を基準として譲与することとしています。
【森林環境税(5)使途】
 次に、森林環境税の使途についてお尋ねがございました。
 森林環境譲与税の使途については、法律に使途を明記するほか、毎年度インターネットなどにより使途を公表することを各地方団体に義務づけることにより、適正な使途に用いられることが担保されるものと考えています。
 森林環境譲与税を活用して木材の利用促進に関する施策を行う場合に、WTO協定における内外無差別の原則から、外国産の木材利用を禁ずることは適切ではありませんが、我が国の森林の整備及びその促進につながるかどうかという観点から地方団体においてご検討いただくべきものと考えております。
【森林環境税(6)地方交付税との関係】
 次に、森林環境譲与税と交付税の関係についてお尋ねがございました。
 普通交付税の算定に当たっては森林環境譲与税を基準財政収入額に全額算入することとしております。それに伴って地方交付税が減少することのないよう、森林環境譲与税を財源として実施する森林整備等に要する経費につきましても基準財政需要額に全額算入することといたしております。
【ふるさと納税 「地場産品」の範囲】
 次に、ふるさと納税についてお尋ねがございました。
 今般の税制改正において、寄附金の募集を適正に行う地方団体をふるさと納税の対象とするとともに、地方団体が返礼品を送付する場合には返礼割合3割以下かつ地場産品とするよう制度の見直しを行うこととしています。
 地場産品の範囲につきましては、地域の実情に応じてさまざまな形態があることから、現在、全国の地方団体から意見を伺いながら検討を進めているところです。地域資源を活用し地域経済を活性化しようと創意工夫を行う地方団体の取り組みを尊重しつつ、丁寧に検討してまいります。
【地方法人課税による偏在是正措置】
 最後に、地方法人課税の分割基準の見直しについてお尋ねがありました。
 地方法人課税は、法人の事業所等が所在する地方団体が課税権を有することとした上で、分割基準により地方団体の間の課税権を調整する仕組みとなっております。
 近年、大都市部へ企業の本店等の集中や、地域子会社等の組織再編の進行、インターネット取引の拡大等を背景として、大都市部に企業の事業活動以上に税収が集中する状況が生じており、これら経済社会構造の変化への対応は地方法人課税の課税権のあり方そのものにかかわる課題であり、分割基準の見直しのみによって対応することは困難であります。
 こうした点も踏まえ、大都市部に税収が集中する構造的な課題に対処するため、今回新たに地方法人課税における偏在是正措置を講ずることとしたところであります。

(以上)

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