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コーラ(1.5L)

僕はコーラが好きだ。
中でも赤ラベルの味が好きだ。
口の中で広がる強い炭酸の刺激と甘さが好きだ。

だからと言って毎日飲むわけではない。
たくさんの砂糖が入っているのを知っているからだ。そのため、身体に悪いモノを好むのは人間らしい事でもあるが毎日は飲まない。

それに、炭酸の気が抜けてただの甘い刺激のない飲み物になるのが嫌だからペットボトルのフタを開けたらなるべくすぐ飲み干すようにしている。
それが僕なりのコーラを飲む上でのルールだ。

僕がコーラを飲みたくなるのは、休みの日や疲れた日、仕事を頑張ったなと思える時に飲み会に参加する時くらいだ。
特に飲み会の時は、お酒が飲めない僕にとってコーラは最高の相棒だ。たまに、烏龍茶や緑茶に浮気もするが結局コーラに戻る。

そんな僕のコーラ好きを知って、長い冬が終わりを告げようとしてたある日、君は1.5Lのペットボトルを買ってきてくれた。
買ったその日は開けずに、また会ったときに飲もうと言うことになり冷蔵庫に閉まった。

だが、その日以降君は僕の所へ会いに来ることは無かった。

君と会えなくなって1ヶ月が過ぎ季節は春になっていた。
ふと冷蔵庫を開けるとコーラに目が行った。
君が置いていったコーラの賞味期限はXX年7月7日とフタの側面にあるリングに書かれていた。

あの時の、また会ったときというのは
「七夕の日に会いましょう。」
という事だったのか…と考えてしまうほど出来すぎた賞味期限だなと思ってしまった。
まだ、会えるかもと淡い期待が膨れ上がるのを察し僕は冷蔵庫の扉をゆっくり閉めた。

季節は夏になった。
あれから、コーラを眺めることは無かった。
いや、見て見ぬふりをしていたのかもしれない。 
君を思い出してしまうから。
でも、そろそろ飲まないと7月7日になってしまう。
冷蔵庫の扉を開けてコーラを見つめる。

「…。」

少し悩んだが
飲むことにした。

休みの日でも、疲れたわけでもなく、仕事を頑張ったなと思ったわけでもないが、飲むことにした。

フタを開けると
「プシュー」と勢いよく炭酸が弾ける音が漏れて甘い香りがわずかに漂う。
用意しておいたコップにコーラを注ぎ一口飲む。
爽やかなレモンの味と程よく甘い砂糖の味が炭酸とかけ合わさり口の中で独特の刺激が広がる。

「美味っ!」自然とこの感想を言っていた。
ただ、まだ一杯目。
ペットボトルに目をやるとまだまだ道のりは険しそうだと思えるくらいたくさん入っている。

二杯目。「まだ美味しさはある。」
だが、お腹は膨れる。

三杯目。「美味しさよりもお腹への苦しさが…。」

四杯目。「ここからは耐久レースやな。」

五杯目。「…うっ苦しい。でも、後少し。」

六杯目。「まじ、お腹キツイわ…。」
「次、1.5L飲む時は一人で飲まないようにしよ…。」

七杯目。「あれ?少しだけ残ってる…。」
「これで終わりだと思ったのに…。」

八杯目。「よしっ!これで終わり!飲みきったー!!」

お腹が膨れて動けないと同時に何とも言えぬ達成感を得ていた。しかし、時間が経つにつれて寂しさが溢れてきた。でも、自然と涙は出なかった。

「当分の間は500mlのコーラにしよ。」

と思ったと瞬間
大きなゲップが出た。

おわり。


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