高層ビルと普通の住宅に囲まれた閑静な地域にひっそりと佇んでいる原美術館へ。
建物老朽化のため2020年に閉館が決まっている。曲線の建物に敷き詰められたタイルがかわいい。一部はなぜか日本の瓦と壁があって、でも建物と違和感なく調和している。
あまり広いとは言えない庭も、誰かの家にいるみたいで不思議と落ち着く。
景色が良いわけではないのにカフェがあるのも長くいてほしいからなんだろうし。

目的は建物を見るためだったが展示もチェック。フランス人の芸術家が3ヶ月の日本留学後、婚約者に振られて立ち直るまでの話。
失恋の痛みを人に話す代わりに、相手の苦しい体験を話してもらう。
「別れを告げられてから⚪️日目~」と内容をわざわざ布に刺繍し、聞き手の体験と交互に展示して行くのだが、最初のうちは同じ内容がくどくどと続くもののそのうちに飽きるのか、出すことでけりがつくのか布一枚びっしりと書かれていたものが10行、5行と減り、生成の布に紺色の糸の刺繍が糸と同じ色の布で書かれるようになり時間の経過と共に傷が癒えていく様子が窺える。

ざっくり言ってしまうと、学生時代の恋バナの一部始終を芸術に展開しているということで、相手が父親の友人(20歳も年上!本人曰く美男)で、別れを告げるのも帰国直前、トランジット先のインドのホテルからの国際電話という色々突っ込みどころの多い人ではあれど何を以て芸術というのか…
まあ、日常のあらゆることはどう捉えるかでいくらでも芸術になるのだ、と感じましたとさ。

常設の展示は少ないものの、庭や建物の中にいくらかあって中でも「スイミングプール」が一番好き。
プールサイドを上から覗く構図が面白い。
通路のタイルはまっすぐ引かれているのに水面から見えるタイルの線がぐちゃぐちゃ。
これを絵にしようなんてあまり考えないものね。

ちなみに羽生結弦をモデルに描いたものもあったらしいと、帰りの電車の中で知る。
作者がファンだったそうで、海外の人から彼はどういう風に見えているのか興味深い。
観られなくて残念。


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