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すべての自分をゆるすために


 先日、出会えて良かったと思う本に巡り会えたので、備忘録として紹介いたします。

「複雑性トラウマ・愛着・解離がわかる本」
アナベル・ゴンザレス(著)、大河原美以(監訳)、日本評論社


 私は思春期の頃から、自分のすべての要素を「自分だ!」と快く受け入れることができていない(最近は徐々にできるようになってきたが)。

 私の中には様々な “自分” がいる。今はほぼいないけれど昔よく私の行動を監視していた “司令官さん” や、好きなコンテンツについては何時間でも話せるヲタクの自分、ドライで孤独で冷たい自分、大人の自分、子どもの自分、○○が好きな自分(○○には好きなもの・ことが無限に入る)、そして人前には決して姿を現わすことができない深層の自分…などなど。それぞれが確かに自分を構成する要素なのだが、素直に自分の一部だと思えないものもある(あった)。

 どうしてここまで分化してしまったのかを考えてみると、育った環境が1つの要因だと思われるが(詳細は省略)、おそらくそれぞれの “自分” は周囲の人たちに肯定的に受け入れられないまま(または表出されないまま)、私の中に長年抑圧されてきたのだろう。

 私は対人関係を築くとき、この “自分” たちをほとんど外に出さない。何度か交流を重ね、「この人なら大丈夫そう」と思える相手には少しずつ “自分” を出していく。しかしたいていの知人レベルの人たちには “自分” を知らせないので、その人たちにとって私のイメージは「謎の人」となるかもしれない。


 前置きが長くなってしまったが、本書を読んで今後実践していこうと思ったことは以下の4つである。

①自分に感情を経験することを許し、感情を自分のものにする
②自分の過去と向き合い、受け入れる
③自分の中の “部分” をまとめていく
④自分自身を大切にする


 ①・・・私は小さい頃から怒りも悲しみも感じにくく、感情表出に乏しいタイプだ。誰かにひどいことをされてもなかなか気づかなかったり、本や映画をみても泣いたことがなかったりする。そのため自分は他の人よりも感情のチャンネルが少ないと感じている。またはたとえるなら、パイプの中に感情は溜まっている(のだと思われる)が、蛇口をひねって外に出すことが苦手なのだ。

 本書には、恐怖、怒り、愛情、悲しみ、喜び…など個々の感情には意味や機能があると書かれている。自分にとって意味があるから、感情は存在するのだなと感じた。きちんと感じることもないまま感情を「ないもの」として抑えつけてきたが、これからは感情を経験することを許していきたい。

 ②・・・思い出したくない過去はたくさんある。それらと向き合うのはとても苦痛だから、過去の自分は「自分じゃない」と切り捨ててきた。置き去りにされた過去の私は当時の年齢のままで、今でも何かのきっかけでふと思い出され、苦い思いをする。この流れを断ち切りたいので、距離を取りながら自分の過去を眺め、少しずつ受け入れていきたい。

 ③・・・自分の中にある “部分” をまとめていくのはかなり大変な作業だと思う。以前に比べればだいぶ落ち着いてきたが、私の中の “自分” たちは個性豊か、バラバラでまとまりがない。まずは1人ずつ観察するところから始めたい。

 ④・・・自分自身を省みず、自分を大切にすることを学んでこなかった人間にとって、自分を大切にすることは難しい。今までは、倒れるまで頑張ってしまったり、心身が傷ついていてもひどくなるまで気づかなかったりするのが普通だった。しかし自分の限度を知り、日々の行動や感情などを調整し、自分自身をいたわる心を持つことが大切だと思う。


 最後に・・・本書は分かりやすい比喩が随所に書かれており、専門書ではあるが親しみやすさを感じた。以下、個人的に刺さった部分を引用して終わりたい。

「怪我を治そうとしないことは、庭に地雷があるのに対処しないことと同じです。地雷があるところを避けて通れば、それで十分だと思っている状態です。もしかしたら、つまずいて地雷を踏んでしまう可能性を、常に抱えているのです。たしかにそんなことは起こらないかもしれませんが、そのために自分の庭を心から楽しめないことが続いてしまうのです。」(p. 30)