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深呼吸が必要

夜、何に誘われたのか部屋着の上にジャージを羽織って外に繰り出す。玄関で靴下が無いことに気付く。まだビーサンでも大丈夫か。

10月も半ば、肌寒い風を微かに感じる。息を吸うと秋の空気が肺を満たす。そういえば今日は一歩も外に出ていなかった。

小学校の登下校の道も気づけば田んぼや畑は無くなり、同じような家が並ぶ住宅街になった。ふと道に面する明るい家を眺める。ここで生きている人たちは今日も頑張っていたんだな。

消えかけている照明灯の前で立ち止まる。その奥の東の空には一番明るい星が見えた。「消えちゃいそうじゃん」「でもまた電灯を替えればいいんだよ」

歩き続けていたら息が上がってきた。運動不足どころじゃないくらい体を動かしていなかったツケだ。また立ち止まる。

息を整える。秋の空気が循環する。

深呼吸が必要なんだと思う。今は。

冷えた足をさすりながらそう思った。


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