【映画】へレディタリー継承がホラーであることの救い

※ネタバレがあります

ここ数ヶ月、アマゾンプライムビデオのウォッチパーティで映画を見る機会が増えました。

これまで見たのは以下の映画です。映画はどうしても集中して腰を据えなければならないので少し敷居が高いのですが、みんなでワイワイ言いながら見れば自然と映画に向き合えるので楽しいものです。

・デンデラ

・ゾンビーバー

・ロンドンゾンビ紀行

・極道大戦争

・シティハンター(フランス実写版)

そして今回選ばれたのは、へレディタリー継承とファイティングダディ 怒りの除雪車でした。

ファイティングダディは北欧の復讐映画でしたが、一般人の決意が三つ巴の戦いを発生させてしまう経緯、ダディの異様な手際の良さなどが小気味よく、サクサク人が死んでいくさまはコミカルですらありました。面白かったです。
へレディタリーの後に見たので、いい口直しにもなりました。

さて、へレディタリー継承です。

ホラーもゴアも機能不全家族の描写も苦手なのですが、大変良くできていて面白かったです。

この映画を自分なりに噛み砕いた結果、これは救いの物語だと感じました。

主人公であるピーターが救われたという意味ではありません。つまり、この映画がホラーであることそのものが救いだという意味です。

オカルトが全て是で、あの家の離れのツリーハウスに祖母を狂信するペイモン信者がずっと居座っていてすべてを手引していたのならば、この家族の機能不全はほぼ全てペイモンと、祖母を筆頭にしたその信徒たちの仕業ということになります。

遺伝性の精神疾患は免罪され、妹への無関心によって引き起こされた死を始めとした機能不全のすべての因果がペイモンに吸収されます。

アニーが錯乱してピーターに生みたくなかったと告白する夢。オカルトを是とするなら、あれはペイモンの生贄にされる運命の子供を生みたくない、という意味を帯びます。悪魔信仰に祖母が洗脳されていた場合もそうです。

しかし悪魔信仰団体もペイモンもなかったとするならば、家族の機能不全も不和もすべてが彼ら自身の過失として返ってきてしまいます。

あるいは、遺伝性の精神疾患に。
(精神疾患が遺伝するのか? という疑問はさておき、この作品では明らかに祖母の家系に深刻な症状が出ているので、この作品では遺伝するものと扱っています)

それはつまり、この家族はそもそも存在するべきではなかった、ピーターは生まれるべきではなかったということになってしまいます。自分では選択不能な生まれつきのことによって。

しかしペイモンという人知を超えた存在や、それを信奉する集団が理由であれば。

自分自身ではなく、他の誰かの意思によって不幸になったのだ、という免責が生まれます。
だから妹の激突した電柱にはペイモンのマークが刻まれ、家の離れは悪魔信仰の拠点になります。

ピーターはペイモンに捧げられることにより、彼自身の原罪と妹殺しから解放され、許され、救われたのでしょう。

この作品のオカルトや超常現象は錯乱した人間の主観でしか発生しないので、オカルトの真偽は視聴者に委ねられていると感じ、こんなことを書いてみました。

それにしても、この作品、公的機関が仕事しなさ過ぎです。
適切な医療と補助を受け、警察に解決を委ねてほしい。現代社会の敗北。


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