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『映画:フィッシュマンズ』

フィッシュマンズのアルバムでは「ORANGE」が好き。オレンジは夕暮れの色。まだ帰る前、一緒に遊んでいる誰かがいるとき。歌詞の中の「僕」は「君」を想っての僕であって、まだ「孤独」ではないのかも。言葉をのせる音もひたすら楽しいし。暗さも誰かを肌に感じての暗さに聴こえる。世界がどうとかよりも、「あの娘」や子犬に対している「僕」、「僕」の捉えられる世界がある。
「ORANGE」以降は帰り道から家までのとき。「君」は側にいなくなって、そこにいない「君」を想像することはあっても、ひたすら「孤独」になっていく。「僕」だけであるほど、世界は広すぎて逃げることしかできない。逃げて逃げて逃げ切ったときの恍惚が音になってるのだから素敵なんだけど。逃げではなくて必要な廻り道なのかなとも思うけど。

映画を通して佐藤さんを探って、いまも在るフィッシュマンズを捉えようとして。
あと15年くらい早く生まれてればな〜とかも思うし、映画の後は何かを失った気もするけど、今の表現をしないとなと。そんなことを言う茂木さんと今の彼のファッションセンスが好き。
けじめであって、宣言であって、その宣言に聴者、観客を巻き込もうとする映画。今更とも思うけど、今更でないとちゃんと向き合わなかった自分が。1999年に生まれた自分に比べて、リアルタイムでフィッシュマンズを感じていた人たちにとっては向き合わされてしまうこの映画は自分のそれよりもとても重いのだとは思う。
ひたすら孤に向き合って、それぞれがフィッシュマンズと自分について考えて、何か前向きになる映画。

「ORANGE」以降ももっと聴いて、孤になって、その分他者を感じて、素敵な人間になろうと思いました。

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