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ブルーエコノミーと廃棄物、その本質は?

はじめに

今回の記事は、今年から関わらせていただいているあるプロジェクト会議であれこれ考えていた内容です。僕はUNEPの廃棄物担当職員で、今まではそれほどブルーエコノミーを考えてきませんでした。でも、プラスチック汚染対策が喫緊の地球規模課題となってから、ここ数年、特にその経済的な側面に触れるようになってから、その問題点や深さ、そこから自分の生活に結びついてくる波及的な影響などの相互作用・影響・効果、そしてその環境的課題を考えるようになりました。ここ最近の流れとして、上流・中流・下流管理、すなわち、製品設計段階、使用管理、廃棄物管理をそれぞれ独立に考えるのではなく、全てをひっくるめて循環経済と言う枠組みで対応するべき課題と言う考え方が、僕がいた廃棄物分野の世界にも浸透して来ている、と言う事を反映しています。

よくよく考えればそれは当たり前なのですが、専門分野で仕事しているとどうしても視野が狭くなりがちです。廃棄物分野は、ブルーエコノミーを守る重要な役割を果たしています。ブルーエコノミーは、持続可能な経済成長と環境保護を結び付ける新たな経済モデルであり、海洋資源や海洋環境の持続的な活用を追求します。廃棄物専門官としては、僕は、廃棄物や汚染物質が海洋環境に与える影響を理解し、適切な廃棄物管理やリサイクルの推進に取り組む役割を担っています。僕のチームも、廃棄物の発生源から廃棄物処理やリサイクルまでの一連のプロセスを監視し、持続可能な廃棄物管理の実現を支援することが任務です。

なぜ廃棄物職員がブルーエコノミーを守らなければならないのでしょうか?それは、廃棄物や汚染物質が海洋環境に与える悪影響がブルーエコノミーの原則と相反しているからです。例えば、海洋に廃棄されたプラスチックや有害物質は、海洋生物や生態系に深刻な影響を及ぼし、海洋資源の持続的な利用を脅かします。このため、海洋環境における廃棄物の問題を認識し、ブルーエコノミーの原則に基づいた持続可能な廃棄物管理策を提案する役割を果たさなければなりません。

廃棄物専門チームがブルーエコノミーを守ることは、環境保護だけでなく、経済的な利益ももたらします。持続可能な廃棄物管理は、循環経済を促進し、資源の効率的な利用を実現するための重要な要素です。廃棄物の再利用やリサイクルにより、新たなビジネス機会や雇用創出の可能性が生まれます。結果として、廃棄物から考えたブルーエコノミーを守るための政策等を実施することで、海洋環境の保護、経済成長の促進、社会的な福祉の向上につながるのです。この活動は、持続可能な未来を築くために不可欠な要素となります。

と言う事で、僕の目線から見たブルーエコノミー対策を書いてみました。

①食のサステナビリティの確保

1)水産の資源管理の課題や養殖の課題

廃棄物担当専門官の視点として、プラスチックの不適切な管理によるプラスチック汚染は、世界規模で年間50兆円もの汚染を引き起こしていると言われていますが、そのうち水産資源管理に関連するコストはまだ不明です。しかし、報告によれば、マイクロプラスチックが鳥類や魚類の90%にも摂取されています。したがって、海洋プラスチックの不適切な管理による水産資源の減少に加え、魚介類へのプラスチック摂取による食物連鎖への影響や環境への影響、そして人体への影響は計り知れない状況です。現時点では、マイクロプラスチックによる食物連鎖による健康被害の実態はわかっていませんが、少なくともかなりの範囲でマイクロプラスチックが関与していることは間違いありません。たとえ気候変動に伴う海水上昇や水質の悪化に対する技術的な革新による養殖の課題が解決され、水産資源が確保されたとしても、すでに海に放出され、今後数百年漂い続けるマイクロプラスチック対策を行うことは非常に困難です。これらを考慮すると、安心・安全な食のサステナビリティの確保はもはや不可能ではないかと思われます。

2)海洋の科学データの取得と利活用(科学データの入手方法)

UNEPの取り組みを参考に、各種科学データに対するアプローチを共有します。UNEPは、国際的な科学政策プラットフォームやパネルに積極的に参加し、IPBESやIPCCなどと連携しながら、科学データの評価や政策策定のための情報を提供しています。以下に詳細な説明を記載します。

〇国際的な協力とデータ共有の重要性:海洋の科学データの取得と利活用には、国際的な協力が不可欠です。異なる国や機関が保有するデータを共有することで、地球規模の課題に対する包括的な理解を深め、持続可能な海洋管理政策の策定に役立てることができます。UNEPは、国際海洋データ・情報交換委員会(IOC)と連携し、国際的なデータ共有の枠組みを支援しています。また、海洋観測プログラムや研究プロジェクトによって収集されたデータを、科学者や政策立案者と共有するためのデータベースの構築を進めています。

〇技術とイノベーションの活用:技術の進歩は海洋の科学データの取得と解析に革新的な手段をもたらしています。リモートセンシング技術や無人航空機などの遠隔観測手法を活用することで、より広範な領域での海洋データ収集が可能になりました。また、UNEPは先端技術の活用に重点を置き、人工知能(AI)や機械学習(ML)を組み合わせたデータ解析手法の開発を進め、大量の海洋データから有益な洞察を得る能力を向上させています。

〇地域との連携とデータアクセシビリティ:地域との連携は、海洋データの収集と利活用において重要な要素です。地域の専門家や関係者と協力し、地域特有の課題やニーズに合わせたデータ収集プログラムを設計・実施することが求められます。UNEPは、地方レベルでの海洋データ収集活動やモニタリングを支援しています。地域の専門家や地方政府と連携し、データの収集手法や解析手法を共有し、地域ごとの持続可能な海洋管理に向けた取り組みを推進しています。

このような取り組みにより、UNEPは海洋の科学データの取得と利活用を促進し、持続可能な海洋管理と政策策定において重要な役割を果たしています。国際的な協力や技術の活用、地域との連携を通じて、より高度な科学的情報とデータを提供し、海洋の健全性と持続可能性を確保するための意思決定を支援しています。

②投資と価値創出

水産分野における投資と価値創出に関して、考慮すべき対策は以下の通りです。

〇ブルーエコノミーの推進:水産分野では、ブルーエコノミーの概念を活用して持続可能な経済成長と環境保護を両立させることが重要です。途上国における持続可能な漁業・養殖システムの構築や海洋保護区の設立などが含まれます。投資家との対話を通じて、ブルーエコノミーを支える革新的なテクノロジーの開発や持続可能なビジネスモデルの形成を促進する必要があります。また、途上国における水産業の能力強化や技術移転などの支援も重要な課題です。

〇途上国支援の強化:途上国における水産分野の持続可能な発展を支援するためには、政策立案や制度整備の支援が不可欠です。日本や先進国は、途上国の水産業の持続可能性を高めるための政策アドバイスや技術支援を提供することで、途上国の水産分野における能力強化を促進する役割を果たすべきです。さらに、投資家との対話を通じて、途上国への投資やパートナーシップの促進を図ることが重要です。

〇インパクト投資とESG投資の活用:水産分野におけるインパクト投資とESG投資は、環境的・社会的な影響を重視する投資手法として注目されています。投資家に対して水産分野におけるインパクト投資の機会やポテンシャルを示し、持続可能な事業モデルの開発や透明性のある報告に対する支援を行うことで、投資家の関心を喚起し、持続可能な水産業の発展を促進する役割を果たすべきです。さらに、ESG指標の適切な導入や報告基準の整備を支援し、投資家にとって水産分野の持続可能性を評価しやすい環境を整備することが重要です。

〇協力とパートナーシップの構築:水産分野における投資家対話と価値創出は、単独では実現困難です。関連する国際機関、政府、NGO、民間企業などとの協力関係やパートナーシップの構築を通じて、水産分野の持続可能性に向けた包括的なアプローチを推進するべきです。これには、情報共有、ベストプラクティスの普及、技術移転、資金提供などの活動が含まれます。また、国際的な枠組みや規制の整備にも積極的に関与し、投資家との協力を強化することが重要です。

以上の対策により、関係機関は投資家との対話を通じて水産分野における持続可能な投資と価値創出を促進し、水産業の環境的・社会的な影響を最小限に抑えながら経済成長と途上国の発展を実現することが期待されます。

③水産分野でのサステナビリティ・経済成長のモデルの構築・国際展開

水産分野におけるサステナビリティと経済成長のモデルを地域・日本で構築し、国際展開するためには、以下の要素を基に戦略的なアプローチが重要です。

持続可能な漁業・養殖システムの構築:地域・日本において、持続可能な漁業・養殖システムの構築が基盤となります。これには、漁獲量の管理や漁具の改善、漁業経営者の教育と訓練、資源の効率的な利用などが含まれます。持続可能な漁業・養殖システムの確立により、水産資源の持続的な供給と生態系の保護を両立させることが可能となります。

〇革新的なテクノロジーの導入:水産分野における革新的なテクノロジーの導入は、効率的な漁業・養殖の実現に向けた重要な要素です。例えば、センサーやモニタリング技術の活用により、水産資源の状態をリアルタイムに把握し、適切な管理策を実施することが可能となります。また、自動化技術やAIの活用により、効率的な生産や資源管理が可能となります。革新的なテクノロジーの導入により、生産性の向上と環境負荷の削減を両立させることができます。

〇持続可能なビジネスモデルの形成:水産分野における持続可能なビジネスモデルの形成は、経済成長と環境保護を両立させるための重要な要素です。従来の利益追求型のビジネスモデルから、生態系の健全性と社会的な価値を考慮したビジネスモデルへの転換が必要です。例えば、水産物の生産や加工において環境への負荷を最小限に抑える取り組みや、持続可能な漁業・養殖の認証制度の活用などが挙げられます。持続可能なビジネスモデルの形成により、水産業の長期的な発展と経済成長を実現することができます。

〇国際展開とパートナーシップの構築:水産分野におけるサステナビリティと経済成長のモデルを地域・日本で構築した後は、国際展開とパートナーシップの構築が重要です。国際的な市場においても持続可能な水産業の価値が認められ、需要の拡大と輸出の促進が可能となります。また、国際的なパートナーシップの構築により、技術やノウハウの共有、市場アクセスの拡大、持続可能な水産業の推進などが行われます。国際展開とパートナーシップの構築により、水産分野におけるサステナビリティと経済成長のモデルを広げることができます。

これらの要素を総合的に考慮し、水産分野におけるサステナビリティと経済成長のモデルを構築し、国際展開することで、持続可能な水産業の発展と地域・日本の経済成長を実現することが可能となります。また、国際的な協力やパートナーシップの構築を通じて、持続可能な水産業の普及と国際社会全体でのサステナビリティの実現に貢献することが重要です。

まとめ

今回は、UNEPの廃棄物担当職員である僕目線から、ブルーエコノミーと廃棄物管理の関係について考察しました。

ブルーエコノミーは、持続可能な経済成長と環境保護を結び付ける新たな経済モデルであり、海洋資源や海洋環境の持続的な活用を追求します。廃棄物職員は、廃棄物や汚染物質が海洋環境に与える悪影響がブルーエコノミーの原則と相反していることを理解し、適切な廃棄物管理やリサイクルの推進に取り組む役割を果たす必要があります。廃棄物専門チームがブルーエコノミーを守ることは、環境保護だけでなく、経済的な利益ももたらします。持続可能な廃棄物管理は、循環経済を促進し、資源の効率的な利用を実現するための重要な要素です。廃棄物から考えたブルーエコノミーを守るための政策実施は、海洋環境の保護、経済成長の促進、社会的な福祉の向上につながります。さらに、水産分野におけるサステナビリティの確保や投資家対話の重要性、革新的なテクノロジーの導入、持続可能なビジネスモデルの形成、国際展開とパートナーシップの構築についても触れました。水産分野における持続可能な経済成長と環境保護を実現するためには、これらの要素を総合的に考慮し、戦略的なアプローチを取る必要があります。

廃棄物職員としての立場から、僕は持続可能な未来の実現に向けて、ブルーエコノミーの原則を守りながら廃棄物管理に取り組むことが重要だと感じています。持続可能な経済成長と環境保護の両立を目指し、海洋環境を守るための具体的な取り組みが求められているからです。

この記事を通じて、廃棄物職員の視点からブルーエコノミーと廃棄物管理の関係について理解を深め、持続可能な未来を築くための行動につながることを望んでいます。

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