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学びの多様化学校に見た公教育のチャレンジ

皆さんは「学びの多様化学校」をご存知でしょうか。

上記の記事では、以下のように説明されています。

学びの多様化学校は、不登校児童生徒の実態に配慮した特別な教育を行う学校のこと。2004年に国内で初めて開校したときは“不登校特例校”と呼ばれていましたが、2023年8月から名称が変わりました。

“学び”の新たな選択肢「学びの多様化学校」とは?

この「学びの多様化学校」がこの4月、宮崎県延岡市に新しく設置されたということで、縁あって見学を(しかも教育長のご案内で…!)させていただきました。

私は取材者ではないので、この学校の具体的な取組や様子などは各種ニュースメディアの紹介に譲り、この見学を通じて考えたことをまとめたいと思います。私の視点で整理すると、3つの大きなチャレンジが行われており、不登校の生徒の選択肢になるという以上の役割が期待されると理解したところです。

①授業の在り方をめぐるチャレンジ

この学校は特に生徒さんたちの習熟度が様々です。小学校から何年も授業を受けていない子もいれば、学年以上のレベルを求める子もいます。
また、出席する前提ではないので、昨日いた子が今日いない、今日いた子が明日いない、ということが頻繁に起きます。昨日ここまでやったから次はここね、と段取り通りに進めるわけにはいきません。

もちろん、一般の中学校でも同様のことはありますが、40人中の数人と少数派なので多くの場合は中間層に合わせてスルーされてしまいます。それはそれで問題ですが、この学校では数人のうちの1、2人ですからスルーするわけにはいきません。

授業という時間で何をどう扱うか、授業とは何か、在り方を見直すことになります。

②プロセスを設計するチャレンジ

「学びの多様化学校」は学習指導要領にとらわれず、特別な教育課程を編成できるとされています。延岡市の学校でも、いくつか独自の科目があるのですが、特徴的なのが「プロジェクト学習」の時間です。

「プロジェクト学習」は、教科書があり、授業の進め方もある程度の型があるような一般の教科とは異なり、何を題材にするか、どう進めるか、ゼロから設計しなければなりません。すでに総合的な探究の時間として同様のものが全国の高校で実践され、中学校でも様々な形で取り組まれているので、共通する課題ではありますが、そういった数々の実践をそのまま取り入れても上手くはいかないでしょう。

一人ひとりの状況、関心、得意不得意を見て、柔軟に、しかし丸投げというわけでなく、プロセスを設計しなけばなりません。
それは「プロジェクト学習」に限らず、独自の科目全てに言えることです。

③学校づくりのチャレンジ

どんな学校にしていくのか、それを描き、形にするのもチャレンジです。少しでも魅力を失えば途端に生徒は来なくなるでしょう。保護者さんの関心も一般の学校より高く、コミュニケーションの機会も多いと言います。

普通は例年通りで流れていくような学校行事も何もないので、いつ、何を、何の目的で行うか、全て問われます。一般的な学校行事が苦手だった子も少なくないでしょう。

学校側が一方的に考えて実行するのではなく、子どもたちや保護者さんをどう学校作りに巻き込み、主体者になってもらうか、一般の学校以上のチャレンジが求められます。

加えて、体制の難しさも感じます。
多くの新しい学校づくりの動きは、こういう学校を作りたい、という想いのある人たちが立ち上げ、賛同する人たちが集う形だと思います。しかし公立の「学びの多様化学校」の先生は異動で直前に赴任が決定します。小規模学校のため先生の数も少なく、特に常勤で正職員の先生は限られます。
慢性的な人手不足で、加配の予算を組んでも人がいない、ということも起きます。そんな状況で新しい学校づくりを任されるということはかなりの負担です。

学びの多様化学校に期待される、他の学校への波及効果

色々と書いて来ましたが、本来的にはどの学校にも起きている課題でもあり、求められているチャレンジです。しかし実際には教育改革は遅々として進まず、(一部を除いては)あまり変わっているようには見えません。

正直なところ、学びの多様化学校の要件を見たとき、これが認められるならわざわざ「学びの多様化学校」として設置せずに全ての学校に適用すればいいのでは、と思いました。
しかし色々とお話し、見せていただく中で、要件だけ適用しても結局は学校は変わり切れないだろうということが分かりました。
配慮が必要な特別な子たちのための新しい学校という名目を置くことで初めて、今までの当たり前を捨てる勇気が持てるのかもしれません。(文科省はそういう意図ではないかもしれないけど)

案内くださった延岡市の澤野教育長は、この学校の取組みや、ここで教えた先生が他の学校へ影響することを期待している、とおっしゃっていました。

色々と課題や不安も多いとは思いますが、目の前の子どもたちにとことん向き合い、あまり縛られずにチャレンジができる、関わる人がわくわくする学校になれば、と思ったところでした。



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