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映画『ハケンアニメ!』が予想以上に良すぎた

上映7分前に映画館の前を通りかかり、「アニメ関係の話かぁ」くらいの気持ちで観た『ハケンアニメ!』が良すぎた。

宣伝ポスターには「胸熱お仕事ムービー!」と銘打たれているが、それ以上のものを秘めた作品だと思う。ゼロからものを作り出すクリエイターの苦悩であったり、自分と世界を隔てる壁であったり、個々の登場人物の悩みに誰しも頷くところがあるのではないだろうか。

『ハケンアニメ!』のあらすじ

吉岡里帆演じる主人公はとあるアニメと出会ってアニメ監督に転職した元公務員。
プロモーションのやり方を巡ってプロデューサーとぶつかったり、味方だと思っていたスタッフに陰口を言われていたり、私なら秒で辞めそうな職場で自分の夢を叶えるために奮闘する。

彼女は子どもの頃、アニメが嫌いだった。女の子ならみんな夢中になるような魔法少女も嫌いだった。
なぜなら、魔法少女ものに出てくる女の子は皆んな元から可愛くて恵まれていて、自分とは違うと感じだから。

同じようなことを感じている隣の部屋の少年に対して、大人になった彼女はこう言う。

「この世の中は繊細さがない場所だよ。だけど、理解してくれる人に出会えることもある。理解してくれていると感じられるものに出会うこともある」

この言葉そのものが、私にとって「私を理解してくれていると感じられるもの」になった。

「理解してくれていると感じられるもの」

「これは私の物語だ」と感じられる作品に出会えることは幸運だ。

中学生の時に聴いた椎名林檎の『虚言症』、高校生の時に読んだ村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』、大学生の時に読んだ漱石の『行人』。

誰にとっても傑作だと言えるような作品ではないけれど、当時の私には自分をわかってくれる唯一無二のものだった。

『ハケンアニメ!』の主人公は覇権アニメ、つまりそのクールで一番視聴率や話題を集めた作品を目指すと公言していたが、本当は誰かの唯一無二の存在になるアニメを目指していただけなんだろうと思う。1万人のうち9,999人にそっぽを向かれたとしても、たった一人に届くような作品。

柄本佑と中村倫也がいい!

柄本佑ってあんなにかっこよかったんだ!?という驚きが大きい。スラッとしててスーツが似合うし、なにより声がいい。ねちっこさと優しさが同居してる感じ。

中村倫也は拗らせたアニメ監督をうまく演じていた。絶妙なお腹のたるみとか、尾野真千子にキレる時の語彙の幼稚さとか…(笑)

この映画そのものは「ハケン映画!」にはならないけど、1,900円出す価値はあると思う。オススメ!

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