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ぼくがかんがえた「地方の時代」

「なんで名古屋なんだよ」

「初音ミク」とのコラボレーションを発表した時、こんなツイートをいくつか見ました。

もし他の地域で、同じ企画を立ち上げている放送局があったら、おそらくミクさんではない別の企画を考えていたと思います。
まあMEIKOさんだったかもしれませんが。

それはともかく、僕個人は「●●地方は◆◆を取り上げちゃいけない」と思ったことはありません。

別に九州で『ビバ!味噌カツ❤️』という番組が始まっても、栃木で『あんかけスパフェスティバル』が開催されても一向に構わないと思っています。

ミクさんは全国どころか、いまや世界規模の知名度です。「放送するならCNNとかNHKが妥当。あとは札幌局しか認めない」という方も多いんだろうな、とは思ってました。

とりわけ中京エリアはミクさんに関してトピックがなかったので、長年のファンであればあるほど「なんで名古屋なんだよ」と言いたくなる気持ち、同意はしませんが理解はします。

生まれは尾張、育ちは三河、勤めは名古屋というジ・愛知国民の僕ですが、「住んでる地域優先」と「面白いもの優先」を天秤にかけたら、何の迷いもなく後者を選びます。

ただ後者を選んでしまうけれど、放送の中で地域の話題が出てしまうのは構わないと思っています。
別に僕もオニじゃありません。
地方色を徹底的に排除したいわけじゃなく、いくつか選択肢があるのなら、地域を優先しないというだけです。

以前、東京支社のスタジオからDTMやゲーム音楽という、地方色のカケラもないワイド番組を制作したことがありますが、その裏コンセプトは「名古屋のタクシードライバーがシンセサイザーに詳しくなってしまう番組」でした。
番組が放送される過程でエリアに面白いことが起これば、それでいいと思ってるだけのハナシです。

それでも、あえて地方を最優先に選ぶ理由があるとしたら、それは単に「交通費が要らない」「相場が安い」という経済面を優先させているだけのことではないでしょうか。
殊更に「地域密着」を掲げているところは、つまるところ、まあそういうことなんだろうなと邪推する次第です。

でも題材が世界規模であろうと、他地域の特産物であろうと、魅力を誰よりも的確に表現できる人が名古屋にいるなら、この地から発信する意義があると思うんですね。

エリアの方には「身近にそんな人がいるのか」と思っていただければありがたいし、他のエリアの方には地域には目を瞑り表現者に注目していただきたいわけです。

最近テレビのネット同時配信でローカル局の存在意義が話題になります。

住んでいる地方に面白いものはないか、しらみ潰しに捜索しまくる同業者貴兄も多いでしょうが、地方色の発見が目的化してしまうと、全国区の話題を避けてしまい、ただでさえ少ない牌をさらに狭めてしまう懸念があります。
キー局と差別化したいという意識が、結果としてキー局に負ける構図にしか見えないんですね。

もはや「推し活」「ヲタ活」に勤しむのが7割と言われるZ世代。
今後こうした層を満足させられるのは、薄く広い情報バラエティ一辺倒のキー局ではないように思います。

ローカル局では「灯台下暗し」で、いま隣の席にとんでもない知識量のヲタが座っていて、あるジャンルについては全国有数の語り部や企画ブレーンになる可能性だってあるんです。

視野は狭く経験も浅いけど愛情は深い、そんな人材を発掘し育成していくことも、ローカル局の新しい意義になるんじゃないかと思っています。

予算がなくたって有名タレントがいなくたって、全国でここしか話していない、ファンが集まる番組はここにしかない、そんな番組なら、どこの放送局でも作ることができると思います。
問題になるのはコンテンツへの愛だと思います。

これこそ新しい地方の時代ではないか、と書いたところで疲れちゃったので昼寝します。

ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。