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これぞ、ウクレレのようなシンセだ!Roland J-6レビュー。

昨年5月、Rolandの新しいブランドとして3商品が登場したAIRA Compact。
過去の名器を新技術ACBで復活させたAIRAの新展開です。

このシリーズ、1機種あたり2万円程度で、3つ全部揃えても6万ちょっと。
しかも外部クロックの入出力がついていて、MIDIなしでもシンク演奏が可能。

KORGのvolcaシリーズとも被るんですが、後発だけあってAIRA Compactはスマホ同様にリチウム電池内蔵で、デザインも秀逸。
極薄・超軽量で、持ち運びも便利です。

そしてシンセ好事家から注目を集めたのは、過去の名機を回路単位で復刻したACB音源搭載のビートマシンT-8と、コードシンセJ-6の2機種だと思います。

T-8には、TR-808、909、606から厳選されたサウンドがあらかじめキットとして組まれています。
先発のTR-8などと違い、すべて808サウンドで、などとチョイスしてキットを作ることはできません。

しかし、すごいのはACBで再現されたTB-303のベース音も鳴らせること。
「ビートマシン」の名に恥じず、リズムとベースを1台で鳴らせるのです。

J-6とE-4も含む公式の概要動画は圧巻です。

そして今年に入り、注文していたJ-6がようやく届きました。

しかしちょうどボカコレの作曲が始まってしまい、まるで触らないまま季節がひとつ終わってしまいました。
ようやく仕事も落ち着いたので、J-6を数日鳴らしてみた感想を書いておきます。

TRにTBとACB総力戦の感もあるT-8に比べ、J-6の音源はJUNO-6一択。

ACBによるJUNO復刻といえば、Roland BoutiqueシリーズのJU-06A。
こちらは60と106の切り替えができます。

さらにJUNO-60と言えば、SYSTEM-8用PLUG-OUTシンセとしても単体で販売されています。

J-6で気になるのは、まずそのサウンドでしょう。
こちらの記事ではローランドの開発者インタビューが掲載されています。

これによれば、64音のプリセットはJU-06Aからセレクトされたとのこと。

変更できるパラメータは、カットオフ、レゾナンス、アタックタイム、リリースタイム、そしてディレイとリバーヴのみで、音色を記憶することはできません。

JUNO最大の特徴とも言えるノイズまみれのコーラスはありませんが、取扱説明書31ページに掲載されたシグナルフローを見ると、実はエフェクトとしてコーラスが含まれています。

音色によってかかっていると思われますが、オンオフなどの操作はできません。

ゆえにJ-6を音が作れる廉価版JUNO-60だと思って購入すると、肩透かしを喰らいます。

もちろんボタン型の1オクターブ分の鍵盤を弾けば、JUNOサウンドを鳴らせますし、MIDIキーボードを繋げば、J-6を音源として使うことも出来ます。

しかし本機の面白さは、そこじゃないんです。

J-6の主たる用途は「コードシンセ」の名の通り、コードを鳴らして曲作りのアシストをすることです。

シフトとコードボタンを同時押しすると、ディスプレイに「P001」と標準されますが、この数字を変えると、コードセットが変わります。
その数、なんと100。

この手の簡単コード機能は他機種にもありますが、同じ構成の和音、例えばsus4やm7がCからBまで鍵盤どおり並んでいるだけ、というものもあり、作曲であまり役に立たないケースがほとんどでした。

しかしJ-6の場合、ひとつのセットにdimやMaj7、分数コードがアサインされていて、必ずしも引いた鍵盤がルートとなっていないセットも多数あります。

つまり半音で適当に鳴らしても、ちゃんと曲の進行ができてしまう、そんな音楽的なセットになっているのです。

画像はメーカーサイトから。

あえてシーケンスを使わず、コードセットや、フレーズスタイルを変えながら適当に弾いてみるのがおすすめです。
この「フレーズスタイル」は、ギターで言えばカッティングやアルペジオにあたるものです。

さらに、鳴らしているコードに合わせて鼻歌を口ずさむと、曲らしきものができてしまうのです。
しかもサウンドを適宜変えていくと、なんとなく曲の骨格までできてしまうから不思議。

使い込むうちに「シンセサイザーの面白さって、単に音を弄るだけじゃないんだ」とわかってくる、不思議なマシンです。

MIDI端子はミニ仕様なので注意。

シーケンス機能は、こうしてできたコード進行のメモとして使います。

シーケンスデータは、他の音源へ送信して好きなサウンドに差し替えたり、MIDI情報としてDAWでレコーディングできるので、これをベースに本格的な楽曲制作に活かせます。

J-6を鳴らしながら思い出したのが、2019年のJUPITER-Xm発売直後、三木社長(当時)が答えたいくつかのインタビュー。

三木さんは「ウクレレのようなシンセを作りたかった」と話されています。

ポケットに入れて持ち運べ、適当に鳴らしても曲が作れるJ-6。

スピーカーこそありませんが、この手軽さは、まさに「ウクレレのような」シンセだと思いました。

ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。