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『ガメラ2 レギオン襲来』を再評価する。

初音ミクファンにおかれましては、札幌で開催のSNOW MIKUや『マジカルミライ10th ANNIVERSARY』で宴もたけなわかと存じますが、拙者★みくばんPは、名古屋で溜まりまくった仕事をこなしつつ、すすきの周辺が徹底的に破壊される映像を堪能しておりました。

物騒なリードはさておき、今月19日にBS12でデジタル修復版が放送される、平成ガメラシリーズ第2作『ガメラ2 レギオン襲来』(監督:金子修介/特技監督:樋口真嗣)。

放映が待ちきれなくなり、ついついAmazonプライムで観てしまいました。

1996年公開ですから、すでに四半世紀経っていますが、公開当時はもちろん、一時期公開されていたNetflixで100回以上観たほど好きな作品です。

他のシリーズ2作品(『大怪獣空中決戦』『邪神覚醒』)も傑作ですが、本作はとりわけ日本映画の傑作として挙げてもいいと思います。

あらすじはWikipediaに譲るとして、この作品の特徴は、日本では極めて珍しい、ガチの自衛隊作戦映画であること。

札幌市が舞台となる前半では、すすきの駅付近で起きた「事件」の初動対応で、現場へまず道警機動隊が派遣されます。

そこへ自衛隊が介入(永島敏行演じる渡良瀬二等陸佐の個人プレイ)する辺りから、正式な出動要請、生存者(地下鉄乗客)の救出、すすきのに突然生えた「草体」の爆破を目的とした作戦本部の設営まで、プロセスと登場人物両面で緻密な描写が重ねられます。
さらに「ガメラ出現」という事態悪化に応じた連隊長の指揮も、淡々と描写されています。

「事件」の最初の被害者となる市営地下鉄の運転士(田口トモロヲ)を含み、いわゆる公務員は職務に忠実な人物として描写されています。
慌てふためいたり、コミカルな面は吹越満やラサール石井が演じるNTT職員などの民間人が受け持ち、その間を埋めるのが水野美紀や川津祐介演じる学芸員という、見事な人物設定とキャスティングが重厚感を高めます。
特撮作品にありがちな、脈絡のないモブシーンや特別出演がないのも好感が持てます。

続く仙台市の「事件」では、市街地にいきなり生えた「草体」から住民避難を誘導する様子と、霞目駐屯地での避難活動が描かれます。

札幌より温暖なために草体の開花が早まり、種子の発射で仙台市街地がガメラもろとも壊滅する結末を迎えますが、自衛隊の避難誘導が功を奏し、死傷者はほぼ皆無だった模様です。

そして足利市でのレギオン攻撃では、自衛隊の火力を結集させた軍事行動が描かれました。

「ガメラ援護」という作戦変更もあり、民間人と連携した小型レギオンの殲滅、さらに大型レギオンの干渉波クローをミサイルで破壊するという成果を見せます。

この足利パートは市街地(ミニチュアセット)とクローズドな作戦本部のカットバックが大半で、没入感もハンパありません。

庵野秀明脚本・総監督の『シン・ゴジラ』でも「タバ作戦」「ヤシオリ作戦」という大規模な軍事作戦が展開されていますが、メインは官僚や大臣たち背広組の描写に費やされ、どちらかというとポリティカル・フィクション色が濃厚です。

一方『レギオン襲来』は、ほぼ全編に渡り自衛隊、特に渡良瀬二等陸佐が出ずっぱりの、日本でもあまり例のない自衛隊寄りの作品です。
『シン・ゴジラ』で話題となった公務員独特の言い回し、例えば「状況終了」などもすでに使用され、リアルという点で徹底されています。

また怪獣や草体の存在意義、電磁波の絡ませ方などSFとしても破綻がなく、学芸員という主人公の設定が無理なく機能しています。

そして何より、CGが併用されているものの、ほとんどのセットをミニチュアで作り上げ、地上の人間目線のローアングルで展開する樋口真嗣特技監督の映像が素晴らし過ぎてどうしようもありません。

特にすすきの市街地は、看板も含めてミニチュアで完全再現。
全身を小型レギオンの群れに覆われたガメラが暴れまくるシーンでは、ネオン看板がレギオンによる電磁波の影響で点滅を繰り返すなど、細かな点でリアルさが追究されています。

札幌には3度訪れましたが、いずれも必ずすすきのへ足を運び、当時とほとんど変わっていない風景に『レギオン襲来』を思い浮かべていました。

昨年11月に行った際は、草体の生えたロビンソンのビルが撤去されており、ちょっと寂しく感じました。

ちなみに上のカバー画像は2019年10月に初めて現地を訪れて撮影した実景に、SHモンスターアーツのガメラ(1996)を合成したクソコラです。

あー、札幌行きたかったよおおおおおお。

ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。