【M&A】ROE偏重経営・・・そもそもどうやって企業価値を測るべき?

おはようございます。今日はM&Aと直結はしないのですが、バリュエーションにも関連するという意味で日経の一面にも掲載されていたこのニュースについて、自分なりの解釈をお届けしたいと思います。

この記事を取り上げた理由

まず、そもそも僕自身この新型コロナウイルスによって資本主義経済自体がなんらかの大きな変容を遂げるのではないかと思っています。アダム・スミスのいうところの「神の見えざる手」をもってしても地球環境も人類全体の幸福にもまだまだ道半ばだというのは皆さんも日々実感されていることかと思います。むしろ一瞬の金に目がくらんで、マスクの転売をする企業があったり、強硬的に営業を継続する店が出ていたり、人間の本質を考えると資本主義で対応できる問題には限界があります。「儲かればいい」という利己的な考えがある限り、人類全体の幸福は道半ばです。そして、それを後押しするような債権者・株主が蔓延ってしまっていても同様です。

さて、今回のニュースで取り上げられているROEとは2014年に「伊藤レポート」でも取り上げられた「投資家がその企業に投資することで年間どれくらい稼げるか」を示した指標になります。

この記事の主要論点は、ROEを重視すべきか、自己資本比率をもっと上げるべきか、という話で自身の中でも結論が全く見えないテーマであったため、考えを活性化させるべく、選びました。

要旨

①米国を中心に1970年代以降に広がった株主を絶対視するROE重視経営の結果、自己資本比率が低迷しており、それが米国経済への打撃をより深刻化させている。

②米国企業は有利子負債を19年末には32%と増加させて自社株買いを加速させることで、ROEを向上させるための見せかけの金策に取り組んでしまっていた。

③長期的にみると、自己資本比率が高い企業のほうが長期の成長率を有する。

解釈

ROEが伊藤レポートでも米国経済でも重視されていたのは、資本主義の大前提である「会社は株主のもの」であるという考えに基づき、株主が得られるであろうベネフィットを投資家に適切に伝えていくべきであるためです。相応のベネフィットを得られるとわかれば、投資家はその会社に対して積極的に投資を行います。

問題は積極的な成長プランを描けない場合です。企業としては投資家にたくさん株を購入してもらい、少しでも株価を上げたい。ただし、ROEを上げるのであれば、自己資本を減らす必要があります。

ROE(自己資本利益率)=「株主から集めた資本を使って、企業がいかに利益を獲得したか」=当期純利益/自己資本=当期純利益/総資産×総資産/自己資本(財務レバレッジ)

一方、企業の業績を推し量るには、収益性・生産性・安全性・成長性といった観点が必要ですが、最もシンプルな指標はROAであり、これは収益性、生産性を指標に落とし込んだものです。

ROA(総資産利益率)=「企業が投下したすべての資産を使って、どれだけの利益を獲得したか」=営業利益/総資産

ROE重視の経営は、ここに財務レバレッジの要素を入れすぎたことにより、具体的には借入金を増加させることで、自社株買いを加速させ、見せかけのROE向上策を捻出していたにすぎない、というものです。

自社株買いはほかにも、①買い需要の創出、②シグナリング効果(自社の株は割安だと知らしめる効果)といった効果も認められます。ただ、その一方で、株の流動性が減少するといったデメリットもあります。

今回「ROE偏重経営」を行っていた企業が躓いてしまったのは、元々高利益体質でなかった企業が金策のために見せかけのファイナンスのテクニックを使っていたことが露呈してしまった結果です。

ただ、自社のもっている資産を積極的に投資してビジネスの好循環を作り上げるべき、というのはそれは当たり前の話であり、その投資するための金策をどうするのか、ということが課題であり、それこそが資本主義の限界なようにも思うのです。株主は自分だけのことを考えれば、儲かりさえすればいいわけです。でも目先の金ばかりを追った短期的視野の行動こそが企業や相場を狂わせ、誤った判断を招くのです。

投資家も長期的な視野に立ち、目先の利益だけに拘泥するのではなく、あくまで自身が長期的に応援したい、共感できるような企業に投資をするようなリスペクトの姿勢が無ければ、市場自体が荒れ野になってしまうのは必然なようにも感じました。

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