見出し画像

話し始めるのを待っている

春先以来、会っていなかった友達と久しぶりに会った。
暑い夏を越して秋に差し掛かるまでどんなだったかを熱燗の日本酒をすすりながら語る。
もう季節は肌寒くなっていた。

世界中、どこの誰もがどんな企業もがなにがしかの変化を迎えた今年。良いことも悪いことも含め淡々と伝えた。
どんなことも笑い話で終わる気心の知れた長い付き合いの友達はその日も快調なテンションで私の話にオチを付けていった。

彼も彼とて、当然ながら変化はあって、それでも忙しそうにしているのでほっとした。
いつものように忙殺され課題はありながらも新しいことに挑戦して結果を出し、得られた成果がどんなだったかをいつものように明るい口調で話してくれた。

「よかったね。相変わらず忙しそうだけど、楽しそうにしてるね。」
思ったままをてらい無くそう伝えると一瞬言葉に詰まり、やや表情が硬くなった。
心無しがトーンが落ちる。

それを見て、私もペースを合わせてゆっくり話す。
いつでも彼がもう一度話始められるように。

思っていることは別にすべて話す必要なんてない。
話したくなったら話せばいいし、聞いてもらいたい人に伝えればいい。
選択の自由はいつも私たち一人一人が持っている。

彼が、そのどれを選んでもいいように私は待つ。
相手を信じてその選択を委ねた時、待つことは聞くこと以上に意味があるように感じられる。

会話のペースよりもお猪口を口の運ぶペースがやや早くなる。
寒くなってきたしね、ゆるゆる飲みながら時間を楽しもう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?