ノマドランド

監督:クロエ・ジャロ

主演:フランシス・マクドーマンド

公開から1月半くらいたって劇場に行ってみた。以外と席が埋まっていたことにびっくり。社会派っぽい映画なのであまり商業的にヒットする感じじゃないけど、コロナの影響が大きいのかな。でもだからって普段見てない人が見たいと思う映画とはとても思わないけど、色々不安な世情を反映しているのかもしれない。

あらすじは「企業の破たんと共に、長年住み慣れたネバタ州の住居も失ったファーンは、キャンピングカーに亡き夫との思い出を詰め込んで、〈現代のノマド=遊牧民〉として、季節労働の現場を渡り歩く。その日、その日を懸命に乗り越えながら、往く先々で出会うノマドたちとの心の交流と共に、誇りを持った彼女の自由な旅は続いていく」のとおり。原作は「ノマドー漂流する高齢労働者たち」というルポ。

原作は読んでないが、あらすじなどからリーマンショック以後のアメリカの貧困層に関する内容のようである。ただこの映画はそれを原作としつつも貧困をテーマにしているようには思わなかった。理由はあまり過酷な労働という表現がなかったからである。淡々と仕事こなしている様子が何度か描かれるだけである。リーマンショック後の苦境や公的セーフティの問題を指定するコメントはちらほらあるが、全然目がいかない。むしろテーマは「他のノマドと主人公の心の交流と共に」とあるように「ファーン」の心の問題であるように感じた。ただそれは映画内ではほとんど語られていない。あるということがほのめかされるだけである。本物のファーン自身と実際関わることでわかるであろう程度のことはわかるだけである。個人的には好きな表現方法だなと思った。

もう1つがアメリカの自然の美しさである。これはファーンを表現するなかでたまたま生まれたのか、それともそれ自体が1つの表現したかったことなのかわからないが、中西部の砂漠や岩山の映像が続く。個人的にはアメリカを象徴しているように感じた。それも最終的には肯定的に。そういう意味ではおそらく原作のルポとはちょっと方向性が違うのかもしれない。

1/30追記 アカデミー賞受賞しましたね。

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