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角川ドワンゴ学園が改善を求めていた非正規雇用教員を雇い止め

昨年から、現在、N高・S高・N中などを運営する、角川ドワンゴ学園と労働・教育環境の改善に向けて私たちは団体交渉を行っています。

N中で契約社員(非正規雇用)で働いているユニオンメンバーのAさんは、昨年から雇用の継続や正社員化を求めて交渉をしていました。しかし、学校側からは明確な回答がないままに、年度末が近づいてきていました。

そして、先日、学校側からAさんに対して、一方的な雇い止め(解雇)の通告がありました。その雇い止め理由は、業務上のコミュニケーション能力が不足しているなどあまりにも適当な理由で、到底私たちの納得できないものでした。年度末ギリギリでの雇い止めによって、Aさんは4月からの仕事がない状況であり、このままでは貧困状態へ陥ってしまいます。

私たちは、立場の弱い非正規雇用の教員の使い捨てにすることを許すことはできません。Aさんは正社員と全く同じく、担任や授業など学内の中心的な業務をしていました。そのような教員を雇用の調整弁として「使い捨て」にすることは、生徒や保護者との関係を断ち切り、「教育の質」にも直結する社会問題です。

学校は、ユニオンで声をあげたAさんの雇い止めを速やかに撤回し、これまで通り、Aさんが生徒や保護者に関われる環境を作るべきです!私たちは雇い止めが撤回されるまで闘っていきます。

◆教育業界に広がる非正規雇用教員の「使い捨て」

現在、私立高校で働く教員の約4割が常勤講師・非常勤講師などの名称の非正規雇用で働いています。今や、非正規雇用教員なしでは学校現場は回っていきません。

しかし、非正規雇用教員は、低賃金かつ1年契約の細切れ雇用という非常に不安定な働き方を強いられていることが多いです。

組合メンバーのAさんも、正規雇用の教員と同じく、授業(スクーリング)、レポート採点、担任業務など学校における基幹的な業務を担ってきましたが、1年更新の不安定な雇用で働いていました。

非正規雇用の期間を「選別期間」と位置付けられ、都合よく学校側へ使われる慣行が業界全体にも蔓延しています。

非正規雇用教員の中には、「正規雇用になりたいならこれをやれ。文句言うな」などと学校側から「ニンジン」(正規雇用化)をぶら下げられ、長時間労働やパワハラ、セクハラに耐えている非正規雇用教員もたくさんいます。

「生徒のためにもっと良い教育をしたい。生徒に集中したい」という想いがあっても、今の不安定な状況ではできないことへの葛藤を多くの非正規雇用教員は抱えています。

そして、雇い止めなどで、担任や授業をしている教員が交代することは、生徒や保護者との信頼関係構築を困難にさせ、教育の質の劣化をも生じさせます。

学校が利益を上げるために「低コストかつ雇用の調整弁」として非正規雇用教員を扱うことが、教育の質を下げ、生徒・保護者をも犠牲にしている構造があります。

◆学校は、正規雇用への登用を期待させてAさんを働かせていた

※Aさん入社時の角川ドワンゴ学園求人票の抜粋

Aさんはこれまでにも私立学校の非正規雇用教員を複数経験してきました。そのような中で、角川ドワンゴ学園の「(正社員への)登用制度、実績ともに多数ございます。最短1年で常勤から専任登用になった方もいます」との記載の求人を見て、安定した正規雇用の教員になれると期待し応募を決意しました。Aさんは採用面接の過程等でも正社員への登用可能性については確認をしていました。

角川ドワンゴ学園では、契約更新の可否は1ヶ月前にならないと学校から伝えられません。契約更新の1ヶ月前である2月末に雇い止めを告げられた場合、転職活動は困難を極め、生活困窮に追い込まれてしまいます。

また、年度で物事が進んでいく教員の就職活動のサイクルでは主に夏〜秋が求人数のピークとなっており、2月末に4月以降雇わないと言われても、教員の仕事を見つけるのは非常に困難です。

つまり、2月末に雇い止め通告を受けた場合、Aさんは4月以降教員として働くことをほぼ諦めなければなりません。

◆契約期間1ヶ月前まで「選別」する学校側の自分本位な回答

1月23日(日)に、角川ドワンゴ学園と団体交渉(話し合い)がありました。学校側は人事部長や理事が参加をしていました。

私たちが、更新1ヶ月前に雇い止め通告を受けた場合、Aさんが露頭に迷ってしまうと訴えても、学校は「(契約期間)ギリギリまで検討したい」という自分本位の回答をしました。まさに雇用期間最後まで全力で労働させて選別したいという強い意図が見えました。

また、他の学校では非正規雇用の教員が露頭に迷わないために、夏や秋など余裕を持って更新の可否を伝えるところが多いということを伝えても、「それは知っている」という回答でした。学校側が意図的にこのような露骨なシステムを敷いていることがわかりました。

Aさんは複数年働いており、能力について判断する時間はあったと思います。また、余裕を持って更新の可否について回答があるならば転職活動の時間的余裕も生まれますが、更新1ヶ月前まで回答がないことの労働者への不利益を学校は全く考慮していない様子でした。

さらに、正社員の教員と同じ労働をさせておいて、なぜAさんを非正規雇用で働かせているのかと私たちは学校へ尋ねました。学校は、「非正規の方が良いという人もいる」と回答しました。

あえて非正規で働くメリットとはなんでしょうか。生活の主たる収入をあえて不安定な非正規雇用で得たいという労働者はいるのでしょうか。

学校側の回答は、到底納得できるものではなく、結局正社員化という「ニンジン」をぶら下げつつ、非正規雇用の教員を更新1ヶ月前のギリギリまで選別し使い倒したいと思っているとしか考えられません。

◆組合メンバーのAさんのコメント

今回、年度末ギリギリになって雇い止め通告を受けました。

まず、生徒からしても、担任として信頼していた教員が突然雇い止めになっていなくなるというのは、教育環境としてよくないと思います。また、保護者の方も、戸惑ってしまうと思います。

不登校など、様々な困難を抱えた生徒が相対的に多い角川ドワンゴ学園のような通信制の学校では、なおさら、生徒・保護者と教員の信頼関係の構築が重要です。非正規雇用教員を雇い止めにすることの教育への影響を学校はどのように考えているのか、私は聞きたいです。

私たち非正規雇用の教員は生徒への進路指導もします。しかし、自分の進路さえ見通せないままに、生徒の進路指導をしている矛盾を感じています。このような状況では、100%生徒へ向き合うことが困難な部分があります。自分がいつ失業するかもわからない、生活していけなくなる可能性があることを頭にチラつかせながら教員として働くのは、大きな苦痛です。私は最低限の雇用を安定させて、100%生徒へ向き合いたい、より良い教育をしたいと思っています。

雇い止めは、自分が怠けていたりしたら仕方がないと思いますが、自分なりに生徒のために頑張ってきたつもりです。

学校との団体交渉(話し合い)では、学校は私の評価について、事実と異なることをたくさん言ってきています。また、事実関係についても異議がたくさんあります。

正社員と同じ仕事をさせておいて、自分の都合で使い捨てにしようとする、「非正規いじめ」としか受け止められない学校のあり方をみんなで変えていきたいです。

◆労働相談や共に活動するボランティアの募集

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