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【保育業社C社団体交渉の記録 Vol.1~会社の裏切りが発覚~】

 こんにちは。
 今回は、私たちが勤務するC社との団体交渉について、それに至る経緯も含め、ここに記録をしていきたいと思います。
 今も何も知らずに働いている社員たちや、同じように会社の横暴により辛い目にあっている人たちに、私たちの活動が少しでも伝わることを願っています。
 
 C社は、全国の幼稚園・保育所・こども園に絵本をはじめとする保育用品全般を製造・販売している会社です。
 会社の創業は1944年で、80年の歴史があり、長年優良企業として保育業界で確固たる地位を築いてきました。
 
 私たちが所属する編集部は、会社の主力商品である「月刊絵本」や、保育者向けの書籍を作成する部署です。

 本作りは常に新しい企画を創出しなければならない厳しい仕事ではありますが、その分やりがいは大きく、懸命に仕事に向き合ってきました。

 待遇は、残業代にも上限があるなど長時間勤務に対して十分なものではありませんでしたが、先輩や上司は経済的に余裕があるように見えて、「今は給料が低いけれど、この会社で頑張っていればいつか先輩たちのような待遇が得られるんだ」という思いの元、「この会社はいい会社」だと信じて働いていました。
 
 しかし、ある時から会社の裏切りを知っていくことになるのです。
 


●総務部長との面談から明らかになった違法性


 はじまりは2023年4月のことです。
 入社年の近い社員との雑談のなかで、個人によって給与差があることがわかり、会社の労務管理に疑問を抱くようになりました。
 そこで、労務管理を行う総務部の部長に面談を申し込み、「個人によって給与差が生じている事実があるのか」と疑問をぶつけてみたところ、以下のような回答が得られました。
 
① 二級職から三級職に上がる際、残業手当がなくなる代わりに「級職手当」がつくという形で昇給するが、その昇給額は会社の経営状況に合わせてこれまでに何度か改定している。
※  級職は課長や部長といった役職とは別物の職級で、上がるたび基本給と職能手当が加算されます。新入社員は一級職から始まり、昇級の基準はあいまいなものの、約3年(?)で二級職、約15年で三級職に上がることが多いです。(中途社員は別)
 
②三級職昇給直前に残業が多かった人は、級職手当が、これまでもらっていた残業手当を下回り、収入が下がることがあるため、そうならないようにボーナス時に加算をつけて調整している。
 
 この2点については、どちらも明らかに大きな問題があります。

① 三級職に上がる際の級職手当の額がこれまで何度も改定されている
→改定後に昇級した社員は、先輩・上司よりも賃金が抑えられているということです。つまり、ある一定以上の年齢の社員の収入は保証し、若手の給与を実質的に賃下げしていることを認めているようなものです。これにより、すでに昇給している高年齢層と若手の間では、深刻な世代間格差が生じていたのです。
 
② 昇級時の級職手当が減額された結果、残業手当がつかなくなると、昇級しているのに収入が下がるという逆転現象が起こるようになった。

昇級直前に残業が多かった人は、三級職昇級後に加算をつける
→三級職になる前に残業量が多かった人が得をするシステム。三級職になるのは新卒入社の場合入社後15年目が目安で、女性の場合は出産・子育てをしている状況も多く、結果的に女性に不利な規定になっている。
本来、残業代はその時間への対価であるはずなのに、昇級後は過去に残業が多かったという事実に対して賃金が決まるという不合理性。
 
 さらに調べた結果、大きな違法行為があることもわかりました。

○昇級規定が変わっていたことを、質問して初めて聞かされた。
→給与規定を労働者に不利益な形で改定する際、労働者に無断で行うことはできない。(労働契約法第8条)
 
○そもそも三級職以上に残業代が支払われないことそのものが違法である。
→時間外労働には残業手当を支払わなくてはいけない(労働基準法37条)
「管理監督者に対しては支払われなくて良い」ことになっていますが、管理監督者と認められるための要件はたいへん厳しく、経営に参加しているような人しか認められません。(資料:厚生労働省「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」

二級職から三級職に昇級しても、仕事内容はなんら変わらず、またその人数も、部門によっては社員の半数以上もいるなど管理監督者の要件にはまったく当てはまらないため、明らかに違法状態といえます。

●弁護士に相談

 ここまで調べた時点で事の深刻さを感じた私たちは、専門家の意見を聞くべく労務に詳しい弁護士に相談をすることにしました。2023年6月のことです。
 
 そこで、先の2点が違法であることはもちろん、さらに以下のような問題を指摘されました。

○就業規則や給与規定が常時閲覧できる状態でない。
 というか、このとき、就業規則の改定について会社から提案がされており、改定予定の赤字の入ったものが社内のネットワーク内で公開されているのみ。それが2年以上も続き、完成したものを誰も見たことがないという状態でした。
→労働基準法において就業規則は従業員に周知することが義務付けられていて、常時閲覧できる状態にしておく必要がある。(労働基準法第106条)給与規定は就業規則の一部であり同様。赤字入りのものは当然正式な就業規則とはいえない。
 
○残業代の上限が45時間までで、それ以降については不払いなことについて。
→明らかに労働基準法違反。(労働基準法37条)
 
 相談をした弁護士は、会社のあまりの杜撰さに、何度か失笑していました…。
 調べれば調べるほどにはっきりとしてくる数多くの違法状態に、今まで信じてきた会社への信頼は、もろくも崩れ去りました。
 

●総合サポートユニオンへの加入

 違法状態と分かり、怒りと絶望を感じつつも、私たちの願いは「会社が違法性を認識し、改善に向けて動いてほしい」ということです。
そのためには、これからどうしていくのが最善なのか、道を探っていくことにしました。
 弁護士に依頼をすることも考えましたが、それは訴訟を起こすことを意味し、多大な費用や期間がかかります。また、裁判で過去のことは追求できても、今後の是正を促す活動につながらないため、私たちの思いとはマッチしませんでした。
 
 また、社内に労働組合を立ち上げることも検討しましたが、団体交渉などの知識が乏しく、仲間が少人数であることから、会社に対して影響力を持つ組合にすることは難しいと思い至りました。
 
 そんな時に目にしたのが「ABCマートで働くパート女性が、たった1人で外部の労働組合に入り団体交渉したところ、パートら約5000人の基本時給が平均6%上がった」という新聞記事です。

 社内では少人数でも、外部の労働組合の力を借りれば、大きな影響力を持つことができると励まされ、この記事に掲載されていた総合サポートユニオンに相談に行くことにしました。
 
 数回の面談の際にも無理な勧誘はなく、豊富な専門知識から的確な意見をいただくこともでき、常に私たちに寄り添ってくださる対応から、信頼できると感じ加入することを決めました。
 
 ここから、ついに私たちと会社の交渉が始まっていきます。
 

●第一回団体交渉の申し入れ

 2024年1月22日着で、団体交渉の申し入れを内容証明郵便で会社に送付しました。団体交渉の申し込み概要は以下のとおりです。
 
要求1 規則・規定類の開示と無断改定の事実確認
 就業規則、給与規定(賃金/退職金等)開示。
 給与規定が無断改定されていた事実があるのか、あるとすればその経緯と理由の回答を求める。
 
要求2 残業代支払いについて
 「管理監督者」の要件を満たさない三級職以上に、残業代が支払われないことについて、その根拠の説明を求める。
 
要求3 以上の要求への回答の全社員への報告
 
 私たちの目的は、会社をつぶすことでも、個人としてお金を取り戻すことではなくではなく、あくまで労働条件を改善し働きやすい職場を目指す目ざすことです。

 そのため、第一回目の団体交渉では違法性が高く、多くの社員がかかわる以上の事案2点に絞り開示と回答を要求し、会社の姿勢について様子をみる内容にしました。
 
 会社は、この要求書に対して1月25日に応答してきたものの、開催時間をこちらの希望する2時間ではなく1時間に限定する・参加者の人数を限定するといった不当労働行為といえる圧力をかけてきました。

 何度かの不毛なやりとりを経て、2024年3月14日に第一回の団体交渉が開かれることになりました。
 
 そして迎える第一回の団体交渉では、高圧的で不誠実、そして呆れるほど杜撰な会社の姿勢が浮き彫りになっていくのです。
 
Vol.2に続く…

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