【第2報】東映株式会社とのセクハラ・パワハラ・過重労働についての労働争議の進捗その後

お久しぶりの記事の投稿となります。東映の元APです。

4月14日、東映が中央労働基準監督署より、労働基準法32条、労働基準法37条、労働安全法66条の違反で是正勧告を受けたことを会見にてお話ししました。

さて、前回の記事では、多くの反響・応援をありがとうございました。

正直、記事を出す前は、番組を楽しんでくれている人の気持ちを害してしまわないか心配していました。しかし、スタッフやキャストのインタビューを読んでいる方や、東映公式HP放送後ブログをご愛読いただいている方の中には、過酷な労働体制やスケジュールを既にご存知だったという人もいたので驚きました。むしろ共に問題意識を抱き応援の声をあげていただけたことは、とても力になりました。

前回の記事では「進捗がありましたらこちらにてお伝えしていきたい」と締めくくりましたが、東映との話し合いを通して何も前進することがなかったため、第2報が遅れました。

今回のnoteでは「何も進まなかった」ことについて書き、記者会見をするに至った空気感をお伝えできればと思います。

東映は本件に対して対外的に声明を出す予定はないようです。このまま東映がダンマリを決め込み、問題が風化してしまうことは避けたいと思っています。

長くなりますがよろしくお願いいたします。

前回の記事→

■前回の記事を投稿した経緯

総合サポートユニオンと東映は、記事を出す前に、直接申し入れを1回、団体交渉を2回、合計3回話し合う機会がありました。

しかし、第一回目の団体交渉では、東映側の出席者4名全員が人事部だったため、現場と乖離があり、話し合いが難航しました。そこで、第二回目には私が所属していたテレビ企画制作部の部長を参加させるよう要請しました。

・第二回団体交渉の様子

第二回目団体交渉では、着席し、録音・録画の確認を取り、いよいよ話を始めるタイミングで、「テレビ企画制作部部長は冒頭の20分で退席する」ということが伝えられました。

約1ヶ月前に決まっていた団体交渉で、現場を知っている人の出席が必要不可欠であると伝えていたため、青天の霹靂でした。総合サポートユニオンは、「延長できないか」「なぜそのような対応なのか」という抗議をしました。

また、東映は「時間がもったいないからやったほうがいいんじゃないですか?」「時間については議論しても仕方ないじゃないですか?」「なんで20分でできないと決めつけるんですか?」などと反論をし、自分たちの不実を認めることはありませんでした。

この問答は20分間に渡り続きましたが、このことについて交渉から3日後、東映はFAXにて「抗議書」を送ってきました。

貴ユニオンの要求に応じXを多忙の中20分、更に要求に応じ計30分間出席したにも関わらず(念のため付言しますと、第1回の団交において、当社が一定時間を想定してXの出席について確約した事実はありません)、そのうち約20分間を無為に浪費した

この問答の後、テレビ企画制作部部長の退席を10分延長してもらえたため、現場環境についての話し合いをしました。東映に蔓延する労働状況を「個人の能力の問題」と論点をずらし、直接相談しなかったことを責めてくるような発言をしました。

テレビ企画制作部部長が30分きっかりに「お疲れ様でした」と言って退出したあと、総合サポートユニオンは「現場の責任者が退席するならもはやこれ以上話し合いをしても意味はない」と判断し、東映の不実を抗議して終了しました。 

・団体交渉を終えて

第二回団体交渉終了後、総合サポートユニオンのスタッフと話し合い「東映と総合サポートユニオンだけの閉じられた話し合いでは心が摩耗するだけ」と、noteの投稿をしました。

しかし、本記事に対して、東映は11/15に総合サポートユニオン宛に「抗議
書」「連絡書」を送ってくるのみであり、対応は変わらないままでした。

■今後について

・過重労働は個人の能力かどうか

東映では、私が所属していたテレビ企画制作部の社員の退社が多く見られます。

2019年には東映初となる「特撮専任プロデューサー」の中途採用があり、追加の人材が数名入社しました。募集資格には ※特撮番組(「仮面ライダー」「スーパー戦隊」シリーズ等)に関心のある方歓迎 という文言がついていました。今の労働環境だと、「やりがい搾取」と思われても仕方ないと思います。

個人の問題と矮小化せず、作品に関わるすべてのスタッフ・キャストが健全な環境で働けるように改善してもらいたいです。 

・東映に未払い残業代について

労働基準法37条の是正勧告が出たため、労基署は東映に対し4月中に改善の要求をしています。是正勧告が出てから数週間経ちましたが、いまだ東映からは連絡がありません。4月中に未払い賃金の精算と振り込みをするよう求めております。

・セクハラについて

セクハラについての話し合いは依然として進んでいません。東映には実態解明と、謝罪・再発防止を求めて、交渉・行動をしています。
新聞社の問い合わせに対し、

東映広報室は過重労働について「労基署の判断にもとづいて対応している」と回答。セクハラの訴えには「具体的な日時などが明確でない」とコメントした。

東映はこのように回答しています。

具体的な日時が明確でなければ対応できないということに疑問を感じます。また、とあるスタッフのからのハラスメントはラインや着信が主だったため、スクリーンショットと一緒に詳細な時間や時系列をまとめたメールを東映ホットラインに共有しておりました。 

・第三回団体交渉開催にあたって

現在、第三回団体交渉に向けて日程調整をしています。東映には、誠実に団体交渉に臨むことを求めます。 

■最後に

長文になってしまいましたが、結論としては、東映との話し合いは何も進めることができませんでした。団体交渉をしても、noteの問題提起が話題になっても、何も変わらずに撮影は続いています。

思えば、東映はこの数ヶ月間、いかにして内内で解決し、視聴者の方たちに本件を忘れさせるか(風化させるか)に東奔西走していたように思えます。訴えていたことの意図がまったく通じていないのではないかと思うことがあります。真摯に向き合い改善につなげる態度でないので、残念です。

労基署からの是正勧告に対応せざるを得ないと受け入れ、変わっていってほしいと考えます。歴史のある企業で歴史のある番組だからこそ、ずっと同じやり方を引き継いでいたことが今日の状態に繋がったという事情も推察できます。東映が未来の子供たちにもコンテンツを創り続けられることを強く望んでいます。

長くなりましたが、進捗がありましたらまたこちらにて説明させていただきます。

■相談窓口について

総合サポートユニオンは、映像制作業界・クリエイティブ業界で働く人を対象とした労働相談ホットラインを開催します。是非ご利用ください。

また、この日程で都合がつかない方でも、常設の相談窓口をご利用することが可能です。現在悩んでいる人や、労働組合に加入していないフリーランスの方など、相談してみてください。

電話番号:03-6804-7650
(平日17~21時/日祝13~17時 水曜・土曜休み)
メール:info@sougou-u.jp

また、活動に対する寄付について、この場を借りてお伝えさせていただきます。

私たち運営費の大部分は寄付で成り立っていますが、費用の不足が私たち総合サポートユニオンの課題となっています。総合サポートユニオンの活動に賛同し、寄付をいただける方は、noteのサポートや、下記の振込先をご利用ください。
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また、私たちは映像業界の労働改善の取り組みに参加したい方、協力者を常に募集しております。
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(2022年8月8日追記)
映画業界の労働問題や性差別の改善・解決に向けて精力的に活動されている Japanese Film Project の皆さんに、本件についてインタビューしていただきました。


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