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腕をだらんと下げて手首を握ると指が勝手に動く

ピクピク…

そろそろ寝ようかというところで、大胸筋が俺に語り掛けてきた。
どうやら最近苛められていないことに不満を覚えているらしい。

俺はおもむろにダンベルを持ち出し、ベッドに寝っ転がり足をおろして胸を張り、腕を真っ直ぐに伸ばす。

大胸筋を意識しつつ肘をわざとらしくゆっくりと曲げていき、大胸筋に負荷をかける。

そろそろ床と腕が接触しようかというところでキープする。焦らしのテクニックだ。

おあずけを喰らった大胸筋がピクピクと抗議するが、無視して続ける。
頃合いを悟った俺は一気に腕を真上にあげる。

それだけで大胸筋は盛大なピクピクを魅せる。

2人の夜はまだ続く…




人は皆、MPを生まれながらに所持している。
MPとは言わずもがな、マッスルポイントの事である。

このマッスルポイントを身体の筋肉に使うことで、筋肉を肥大化させることができるというのは人類普遍のシステムだが、最近の研究によると「筋トレ」という自傷を行い、十分な休養を取ることで、筋肉と大気中のマッスルが結合し、肥大するということが明らかになった。

そこで私は詳細な情報を手に入れようと研究機関に単身で乗り込んだのだが、すでに確立された「筋トレ」の理論により肥大化した筋肉を持つ研究員に追い返されてしまった。

しかし同時に研究員たちは「力」を得て「知」を失った。
このままでは筋肉学の衰退は避けられない。そう悟った私は「知」の象徴であるAIを用いて、謎に包まれし「筋トレ」の謎を解くことにした。



恐ろしい事実が!!!!!!


AIの分析によれば「筋トレ」によってもたらされる恩恵は歴史を改変しかねないものであり、必ず封印しなければならない理論のようだ。

しかし封印するためには知識が必要だ。もっと深い知識を――――


そんな馬鹿な!!!!!!!!!

こんな簡単な儀式が「筋トレ」なのか…?
これを実行するだけで私も…
あの日私の家族を殺した”ムキムキマッチョマン”に復讐できる…

いや、筋肉の暗黒面に飲まれてはいけない。
知恵を持つものとして筋肉に傾倒するわけにはいかない。
もっと深い知識を得て、筋トレを封印しなければ!!!!!!


頼んだぜ!相棒!

この出力結果を以て、筋トレを未来永劫封印する!!!!!

なん…だと…

何故「知」の象徴であるAIが!?
もう筋肉の侵略はそこまで!?
不味い!!!飲まれ――――――




ムキッ


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